灼熱☆バケーション【後編】

〈第十九章〉 ワルイ夢 その3

 

 

カナは翔に、文字通り”おかしくなるまで“乱された後

彼の腕の中で眠っていた。

 

とても幸せな気持ちだった。

 

だが、真夜中にふと違和感を覚えて目覚めると

カナを抱きしめているのは、

タカヒトだった。

 

『夢?なのね。』

 

とは思うが、

ゆっくりと胸に触れられて、

さっき翔に

ようやく鎮火してもらった欲望が

疼きだすのを感じていた。

 

変な気分だった。

 

「何してるの!タカヒト。」

やっとのことで言う。

夢にしては感覚と言い、妙にリアルだった。

 

目が合うとニヤリと笑う彼は、

いつもの柔和な表情ではなく

男の顔をしていた。

 

『そんな顔で、ひろこ先輩を抱くのね。』

 

そう思ったら、

切ないような、苦しいような気持になって

カナは自分からタカヒトにキスをした。

 

“私だって。この男を

コントロールできないくらい、

想っていたことがあるんだ。

夢の中くらい好きにしてもいいじゃない。“

 

と、カナは思っていた。

 

成就せずくすぶっていた思いが

こうして現れたのなら、

取り返しのつくうちに形にして

昇華させてしまった方が、罪は少ないのではないか?

 

「ずいぶん大胆だね。翔さんに仕込まれたの?」

からかうように言われて、恥ずかしくなった。

 

彼女は「バカっ!」

と、彼を突き飛ばそうとした。

だがもちろん彼の体格では、

突き飛ばされたりはしない。

 

「翔さんが初めてだったんでしょ?」

と言われた時、

赤くなったのが自分でもわかった。

 

「どうだったの?良かった?」

しつこく聞かれる。

 

彼との行為は

『良かった』

なんて軽い簡単な言葉では

済ませられるものではない。

 

だが、彼女には表現する術が無かった。

 

だから「良かったわよ。」

そう一言だけ言った。

 

「ねえ、この夢の中だけなら何をしてもいいよね?」

と、タカヒトが言う。

 

カナは自分の心の中が読まれたと思い、

怖くなった。

 

彼に引き寄せられ、キスをされる。

翔とも誰とも違う、

荒々しいけれどセクシーなキスだった。

 

身体の内側から、燃やされているような

そんな気分だった。

 

『これ以上はダメ。』

と、逃げようとすると

耳元に息を吹きかけられる。

 

その快感に息が止まりそうになった。

 

彼の大きな掌で、

全身をくまなく触れられる。

 

カナは、自分の中の

目覚めさせてはいけない獣を

目覚めさせてしまいそうな、

そんな予感がしていた。

 

 

 

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