関節リウマチとは(その5) 私はリウマチでしょうか? | いわき市整形外科「志賀リウマチ整形外科クリニック」のブログ

いわき市整形外科「志賀リウマチ整形外科クリニック」のブログ

いわき市整形外科「志賀リウマチ整形外科クリニック」の最新情報、膝の痛み、腰痛、五十肩、足手のしびれなどの原因や治療、その他日々の雑感などを綴ってみたいと思います。

「私はリウマチでしょうか?」

(リウマチ講義1回目から見る→クリック)


さあ、リウマチの勉強会も3回目です。

前回までに、リウマチってどんな病気?っていうお話と、ちょっと難しい免疫の勉強をしました。

今回は、「あなたはリウマチです!」という診断が、どのように行われているか、一緒に勉強していきましょう。

「リウマチが心配です」来院なさる患者様は、あちこちの関節、特に手首や指の関節が腫れて痛むので検査してほしいという方が多いです。

朝起きる時に関節がこわばって動かしにくい、全身のだるさや熱っぽさ、食欲不振や体重減少などの症状を訴える方もいらっしゃいます。

関節リウマチで腫れや疼痛がおこりやすい関節は、

頸椎、
肩、
肘、
手、
指(第二関節;PIP近位指節間関節と指のつけねの関節;MCP中手指節間関節)、股、
膝、
足、
足の趾です。

左右対称に生じるのも特徴です。

関節リウマチと診断するには、「診断基準」というのがあって、これにあてはまっているかどうかというのが、診断の最初の段階になります。

よく知られているのは、1987年にアメリカリウマチ学会の診断基準で、7つのチェック項目のうち、4つに当てはまると関節リウマチと診断されます。

1 朝のこわばりが1時間以上(6週間以上)

2 3つ以上の関節腫脹が(6週間以上)

3 手関節、MCP(中手指節間)関節、 PIP(近位指節間)関節の腫脹(6週間以上) 

4 対称性の関節腫脹(6週間以上)

5 手におけるX線変化

6 皮下結節(リウマチ結節)

7 リウマチ因子

みなさん、この診断基準を見て、お気づきのことはありますか?

そうです。この基準にはスピード感がありませんよね。

6ヶ月待ってなくてはいけない項目が4個もあるし、レントゲンで骨の変化が出て来るまでには時間がかかりすぎています。

リウマチ結節は、関節の近くや伸展筋の表面にできる皮下結節ですが、早期のリウマチに生じにくい症状です。

そこで日本リウマチ学会は1994年に早期診断基準を提唱しています。

1 3つ以上の関節で、圧痛または他動運動痛

2 2つ以上の関節の腫脹

3 朝のこわばりがみられる

4 皮下結節(リウマチ結節)

5 赤沈値高値またはCRP陽性

6 リウマチ因子陽性

この6項目のうち3項目を満たせば早期関節リウマチと診断して治療を開始しましょうというものです。

また厚生省(現厚労省)も早期関節リウマチ診断基準を定めています。

1 朝のこわばりが15分以上あり、その状態が一週間以上続いている

2 3つ以上の関節腫脹が一週間以上続いている

3 手や手指(PIP,MCP)、足や足趾(MTP)関節の腫 脹が一週間以上続いている

4 左右対称性関節腫脹が一週間以上続いている

5 リウマチ因子が陽性

6 X線検査で、手または足の関節に変化がみられる


この6項目のうち4項目以上で早期関節リウマチと診断して良いというものです。

 この早期リウマチの診断基準はよくできていて、98%の診断が可能と言われていました。

その後、抗CCP (環状シトルリン化ペプチドcyclic citrullinated peputide)抗体という、関節リウマチに特異性の高いマーカーが見つかったことで、MRI画像診断と組み合わせて、2005年厚労省研究班は新しい診断基準を示しています。

1 抗CCP抗体またはリウマチ因子が見られる 2点

2 対称性の手・指の滑膜炎をMRIで確認できる  1点

3 骨びらんをMRIで確認できる         2点

この3項目で3点以上が早期リウマチと診断できるというものです。


 新しいリウマチの診断基準に関しては、世界的にも研究が進んでいます。

最新のものは2010年のアメリカ&ヨーロッパリウマチ学会の診断基準です。

これによると、検査を受けるに当たっては、

1) 少なくとも1カ所の関節に腫脹が認められる

2) 他の疾患による要因では説明できない

という条件を満たした時に、以下の4項目に対してスコアをつけ、6点以上で関節リウマチと確定しましょうというものです。

【関節病変】

1.大関節に1つ以上腫脹や疼痛関節がある:0

2.大関節に2~10個の腫脹か疼痛関節がある:1

3.小関節に1~3個の腫脹か疼痛関節がある:2

4.小関節に4~10個の腫脹か疼痛関節がある:3

5. 10個を越える腫脹または疼痛関節がある(少なくても小関節1個):5

【血清学的因子】

1.リウマチ因子、抗CCP抗体ともに陰性:0

2.リウマチ因子、抗CCP抗体の1つが弱陽性:2

3.リウマチ因子、抗CCP抗体の1つが強陽性:3

【滑膜炎持続期間】

6週間未満:0

6週間以上:1

【炎症マーカー】

1.CRPと赤沈が両方とも正常:0

2.CRPと赤沈のどちらかが異常:1

 大関節とは肩、肘、股、膝、足で、小関節は手、手指(MCP,PIP)、足趾(IP第1趾節関節, (2-5)MTP第2-5中足趾節関節)で、弱陽性は正常値の3倍未満、強陽性は3倍以上としています。

 リウマチの診断は、なかなか難しいですね!



関節リウマチとは(その6)につづく


志賀リウマチ整形クリニックHPへ