板橋の起業講座で、「コミュニティ・ビジネス」について、ミニ講演をさせていただいた。
コミュニティ・ビジネスという言葉は、ここ数年登場して、NPOとか、社会起業家などと並び、地域を元気にする仕組みのひとつである。
今回は、板橋で実際に起業した人が4人、体験談を発表した。
投資をベースに、健康食品、中国茶などの販売をしている人。
営業代行をしている人。
ペットの葬儀産業を立ち上げた人。
24時間営業の美容院を企画中の大学生、の4人。
このなかで、ペットの葬儀産業をしている人は、
前職は旅行代理店勤務で、海外在住経験もあるうえに、
ビジネスを興す前に「人間の葬儀屋さんに体験入社」したり、
同業他社に飛び込み取材をしたり、
手堅い起業で、聞いていても気持ちがいいのである。
対象的であったのは、24時間営業の美容院を企画している女子大生で、
「自分が夜中に髪を切りたくなる」という動機からの「企画」
細かいことは書かないけれど、リサーチ不足だし、
そもそも美容院での仕事をまったく理解していないということが
プレゼンテーションでもうかがえるのである。
しかし、その企画は、アントレプレナーのコンテストかなにかで受賞したという。
保険代理店と保険ジャーナリストをやっている女性社長仲間と
2次会となった。
彼女は、2人の年頃の娘を育てながら、自宅でビジネスをはじめ、
いまではオフィスも構えているが、立派な(?)シングルマザーである。
「私は、いまでこそ、座っていたら仕事が来るようになったけれど、
仕事を始めたことは、それこそ何度も泣いたものよ」
毎日、毎日、100軒くらい、保険の売り込みに歩いたという。
もちろん、玄関先に突然現れた女性に、保険申し込みをする人などいない。
「でもね、そのつらい経験があるから、いまがあるんだよね」
私たちは
「いまの若者は優遇されすぎているのではないか」という話をした。
「若いころは、やる気があって、能力もあるのに、まわりが認めてくれなかったり、 『どうして思うようにならないの』ということの連続だった。でも、だから力がついたことが多いな」
「いまは、大学生のうちから、中途半端なスタート切れちゃうけど、そういうのを応援する大人も無責任だよね」
「だいたい、20代で『起業家支援』なんていうビジネス立ち上げている人も多いけど、ロクな社会経験してないのに、人の面倒見る前に、自分でもっと修行しろよって思うよ」
とまあ、なんだかお局様談義のようになってしまったのだけれど、
やはり踏まれた麦は強く育つ。
踏まれているときはちっとも嬉しくないけれど。
いまは、楽をして、「やりたいことをやる」とか「楽しいことを仕事にする」とか、
そういう風潮だけれど、
骨太な人生と、軽佻浮薄とは相容れないものがある。
芥川龍之介の「大導寺信輔の半生」という小説のなかで、じきょうじゅつ自彊術の道具に、「予の蒙れる悪名は多けれども、分つて三と為すことを得べし」と書いている。
「その一は文弱也。文弱とは肉体の力よりも精神の力を重んずるを言ふ。
「その二は軽佻浮薄也。軽佻浮薄とは功利の外に美なるものを愛するを言ふ。
「その三は傲慢也。傲慢とはみだり妄に他の前に自己の所信を屈せざるを言ふ。
若いからできること、若いから思いつくこともあり、
それをどんどんやっていくことも、
もちろん、それはそれでよいことだし、
若い人の芽を摘んではいけない。
でも、芽が出ているからといって、
珍重したり、大事にしすぎるのも、ほどほどがよいのではないか。
子供を叱れなくなっている親が増えているというけれど、
年長者がもっとしっかりしなくてどうする、とも思う。