ひとりのお客様 | わたら瀬店長のブログ

ひとりのお客様

つい先日ですが
ラストオーダー間際、一本の電話がありました。

「今から一人で少しだけいいですか?」

電話を取ったのは料理長。
応対の後「○○さんってご存知ですか?」
私はというと
、、、さて??この時間にお一人でいらっしゃるには検討が付かないお名前で。

それで程なくすると、初老の黒い外套を纏った紳士が格子戸を開けて御来店。
かれこれ5、6年はお見えになられている常連様でした。いつもは大体お連れ様がいらっしゃる中でしか拝見したことがなかったので、御近所にお勤めの方なのかとお見受けしておりました。
カウンターの中ほどに腰をかけられるとビールと金目鯛のお刺身をご注文。

「ちょっと宴会があってそんなに食べれないんだけど、最後に少しだけ顔を出したくてね」

と紳士。
”最後に”という言葉の裏にある物語。

聞くと、お住まいは今は東北の宮城、お仕事の会合の為に出張でいらした際に都度御来店頂いていたという事でした。
「来月で定年なんです。
宴会他のとこでやってたんだけどなんか味気なくてね、
もうここに来れるのも最後ですよ」
紳士はビールを飲み干し後に
燗を一本頼まれました。
「いい思い出になりました」
と残してお勘定を済ませ
再び格子戸を開けお店をあとにされました。

一人のお客様の、一人の人の
仕事人生の晩節に立ち会えたこと
思い出にしていただいたこと
この上なく感じ入るものがありまして、
兎に角感謝です。

明日の2月6日にて八周年を迎えます。
金曜日までの一週間
振る舞い酒をやりますので
よろしくどうぞお願いいたします(^^)

わたら瀬店長//