自己紹介

渋谷教育学園浦安幼稚園 顧問 青木久子。

国家公務員、公私立幼稚園の教諭から東京都教育庁指導部指導主事、都立教育研究所統括指導主事、昭和女子大学、国立音楽大学教授・同附属幼稚園長兼務後、幾つかの大学院、学部の客員教授を経て現在研究所を主宰。子育ての失敗談は佃煮にして瓶詰めにするほど豊富。

<教育学専攻、発達臨床心理士>

 

 

 

 

あけましておめでとうございます

 

 

 

 子どもは親の背を見て育つと言われます。親が一生懸命やっている姿が子どもに刺激を与え、その汗を伴った言葉が心に染みこんでいくのでしょう。老人になると幼児期の躾、言葉、運動の好み、考え方に戻っていくようになります。記憶の崩壊は記憶の獲得過程の逆をいくので短期記憶は失われるのですが、幼少期の経験は確実に身体に残っているからです。子育ては老人育てと同じと思うこの頃ですが、違うのは子育てには果てしない未来の時間があり老人育てには未来の時間が限られているというところです。

 

 水泳は最も安全な生涯スポーツの一つとして、今やプールは乳幼児、障害児や老人・家族の健康づくりの場になっています。生涯にわたって水泳を楽しみ、健康寿命を維持する老人は、幼少期に水泳の楽しさを経験しているに違いありません。

 

 

幼少期にある様々な活動の臨界期

 「臨界期」という言葉があります。「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」「言葉の臨界期」「運動の臨界期」など、動物種のそれぞれの機能には、ある刺激(経験)が与えられたとき最も敏感で効果が上がる最適期があり、これを臨界期といいます。聴覚の臨界期は胎児期に始まり、絶対音感は3~5歳から9歳頃まで、言葉は6ヶ月位から神経回路の組変えが始まり12歳前後で終わると言われます。何故、臨界期が始まるのか様々な研究(A theory of the transition to critical period plasticity参照)がありますが、一生に一度しかないその大切な臨界期(感受性期)を過ぎると、脳は神経回路の組変えを行わない、つまり使われない脳細胞は退化していくのです。  

 

 神経細胞の活動が脳の神経回路を組変え(ニューロン活動)学習を蓄積していくためには、発達に応じた外部からの感覚刺激(経験)が提供されることが必要です。運動の臨界期が、神経系、リンパ系の発達が著しい乳児期から幼少期にあるのも、脳細胞の組変えの面白さを知った自我が外界の刺激・情報を取り入れようという欲求が強くなるからです。貪欲に自転車や竹馬に乗る、鉄棒の逆上がりをする、スキップする、独楽を回す、縄で綾飛びや二重跳びをするといった子どもの遊ぶ姿は、臨界期の表れといえましょう。

 

 

水泳の臨界期

 さて水泳に戻りますが、水泳にも臨界期があります。水泳の臨界期はおむつの外れた2、3歳ころから小学3年生頃までと言われます。といっても1歳頃から入浴や行水、シャワーなどで水に親しみ、毎日手水で顔を洗い、汚れた手足も自分で洗う生活経験や、水鉄砲や水車などで水遊びの楽しさを経験している子どもたちにとっての話です。日常に<水と自分の生活>に対する刺激(経験)がない子どもたちは、プール水に向き合う怖さから始まりますので、その前の発達課題をクリアしておくことが必要になります。

 

 浦安幼稚園・こども園の子どもたちは、年間を通してプールで遊べますので、人生において泳ぐ面白さは獲得していくことでしょう。遊びながら水の特性や自分の体との関係を感得すると、3歳も5歳も関係なく潜ったり浮いたり泳いだりして臨界期を乗り越えていきます。やがて老人になったとき、「生涯スポーツとしての水泳の楽しさは幼児期に始まった」と健康な心身で以て語ってくれることを期待して、初泳ぎとしたいところです。

 

 

 

【年少:夏は園庭でプール♪遊びながら水に親しんでいきます】

 

【年中:こども園のプールで大きなビート板を経験しました!】

 

【年長:ビート板を使っての飛び込みができるように♪】

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自己紹介

渋谷教育学園浦安幼稚園 顧問 青木久子。

国家公務員、公私立幼稚園の教諭から東京都教育庁指導部指導主事、都立教育研究所統括指導主事、昭和女子大学、国立音楽大学教授・同附属幼稚園長兼務後、幾つかの大学院、学部の客員教授を経て現在研究所を主宰。子育ての失敗談は佃煮にして瓶詰めにするほど豊富。

<教育学専攻、発達臨床心理士>

 

 

 

 就学前教育は生活を基盤として、生きるための様々な知恵を体験と結びつけながら子どもたちの経験を豊かに織りなしていくところに特徴があります。言葉は生活体験に裏付けられてこそ意味をもつもので、おむつも外れない、食べさせてもらっている1,2歳の子どもに知的早期教育を施しても発達の道筋に歪を抱えて苦労するケースを目にすることが多くあります。養育者との愛着形成が不安定な子どもも、生活の基盤が弱いために感情の表し方や言葉の獲得に困難を抱えているケースもあります。子どもたちの経験を耕す生活による教育を考えましょう。

 

 

 

生活基盤型の就学前教育

 

 幼稚園、保育所の2区分が、認定こども園制度が始まって3区分になり、認定こども園はさらに幼稚園型、幼保連携型、保育所型、地方裁量型と特色を異にしています。全ての子どもに就学前教育を保障する無償化への道もまもなく開かれるでしょう。しかし、どんなにその制度的形態が多様化しても、生活を基盤とする教育内容、教育方法が変わるわけではありません。

 

 私たちの生活は、一つに労働し衣食住の欲求を満たす活動が組み込まれています。二つは季節の変化に合わせた生活様式や行事等で構成されています。餅つきをしたり大掃除をしたりして正月を迎えるのも、新年を寿ぎ平和を祈念して心新たにするためであり、家族が一同に会して絆を確認する機会です。昔から人々が生み出してきたこうした「生きる知恵」が生活の中に埋め込まれているので、教育施設ではそれを顕在化して教育カリキュラムを編成します。

 

 教育は、子どもの発達にとってよりよい環境・場所を創ることを、最も心する対象であって、子どもを支配することではありません。

 

 また天地を真の保育室とし仲間と遊び学ぶことが教育の方法であって、教師が鞭を振るわけではありません。子どもが自発的に環境にかかわり、生活経験を陶冶する中に教育内容が生まれます。それだけに、自発的にかかわれる環境や、自発的に生活する豊かさが求められているのです。

 

 

 

 

 

 

体験に裏付けられる知識・知恵

 

 今年は田んぼに苗を作付けし収穫しました。代掻きでぬるぬるどろどろを経験し、植えた小さな一株苗が分岐して稲の穂を出したものを刈り取り、子どもはその実りの穂を牛乳パックの中に入れて扱き脱穀しました。そしてすり鉢に籾を入れボールで籾殻を取ると吹いて玄米と仕分けしました。

 

 春から秋の生活風景ですが、ここに日本の歴史や文化があり、生産と消費、仲間と協同する学びの場があります。汗した米を炊いて食べる時、一粒がどれほど貴重なものかを話題にしながら味わうことでしょう。体験に裏付けられる知識・知恵を耕しながら学びの内容を創り出すのは苦労ですが、子どもの目の輝きが学びの質を物語ってくれ、労が報われます。

 

 

 

『年長でお米を育てました☆』

【5月 代掻き作り】

 

【6月 田植え】

 

【6月 田植え】

 

【6月 田植え カモがいました♪】

 

【10月 稲刈り】

 

【11月 脱穀】

 

【11月 脱穀】

 

 

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渋谷教育学園浦安幼稚園 顧問 青木久子。

国家公務員、公私立幼稚園の教諭から東京都教育庁指導部指導主事、都立教育研究所統括指導主事、昭和女子大学、国立音楽大学教授・同附属幼稚園長兼務後、幾つかの大学院、学部の客員教授を経て現在研究所を主宰。子育ての失敗談は佃煮にして瓶詰めにするほど豊富。

<教育学専攻、発達臨床心理士>

 
 

生きるために必要なことは、食べる話だけではありません。昼行性の動物である人間は、昼間活動して夜寝るという生活リズムによって、外界の環境に合わせて体内環境を一定に保とうとするホメオスタシス(恒常性)を維持しています。暑い時は汗をかき、寒い時は毛穴を閉じて体温を維持し、血圧や体液を安定した状態にし、発熱や発疹などにより病原性微生物を排除したり傷の修復などをしたりして自律神経を調整していく生得的な能力をもっているのです。

 

第3号では、『食育』の次は『睡眠教育』といわれる睡眠の話から進めていきましょう。

 

 

大人の生活態度・睡眠時間
 

昔からことわざに『寝る子は育つ』『よく食べ、よく遊び、よく寝る』という言葉があります。食べること、活動すること、寝ることのバランスが健康な心身維持の基本です。世界に比して日本人の睡眠時間減少に伴う様々な弊害を避けるために、厚労省が2014年『健康づくりのための睡眠指針』を出しています。睡眠は大人の生活態度が乳幼児に影響する問題だけに、国を挙げて提唱された12箇条を、まずは大人が心していくことでしょう。親が健康な状態にあることが、子どもを安心させていきますので、早寝早起きのリズムをつくり深い睡眠時間を十分にとることです。

 
 
成長ホルモンの働き

 

乳幼児の睡眠時間は、一般的に次のように言われています。

 

 睡眠中に成長ホルモンが分泌されますので、特に基本的な睡眠時間を保障してやりたいものです。子どもが布団に入ってすぐ寝るコツは昼間、太陽の光を浴び、風を受け、体を十分動かして遊ぶことです。数分で寝付くと親も楽で、夜なべ仕事も進みます。

 

テレビを見ていて就寝時間が遅かったり、22時から2時が一番大切といわれる成長ホルモンが分泌される真夜中に起きてしまったりして慢性的に睡眠不足の子どもは、体調を崩すことが多く、成長ホルモンの分泌も停滞気味になります。身長の伸びが悪い、風邪をひきやすい、あくびが多い、集中力がない、やる気がないなどの場合は睡眠不足も考えられますので、幼児期には遅くも夜78時には寝て朝7時には自然覚醒するような快調な生活リズムを整えます。親も十分な睡眠をとるとイライラが減ります。近年、睡眠の研究が進んでいますので、そうした情報も参考にしながら、家族の生活リズムを管理していくことでしょう。

 
 
 
 
 
【浦安市環境アドバイザーの方々と共に、6月に田植えをした田んぼで稲刈りをしました!
労作も良い運動です。(年長組)】
 
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渋谷教育学園浦安幼稚園 顧問 青木久子。

国家公務員、公私立幼稚園の教諭から東京都教育庁指導部指導主事、都立教育研究所統括指導主事、昭和女子大学、国立音楽大学教授・同附属幼稚園長兼務後、幾つかの大学院、学部の客員教授を経て現在研究所を主宰。子育ての失敗談は佃煮にして瓶詰めにするほど豊富。

<教育学専攻、発達臨床心理士>

 

 

 

 生きることは、食べて消化吸収し、運動して熱量や筋肉を作りだし、排泄して新陳代謝を図る快循環の中で精神的な高まりに至る喜びにあります。ところが近年食の楽しみが弱い、つまり噛めない、噛まない、偏食が多いといった活力のない子どもたちが見られます。離乳から個食に移行し食物摂取が完了する幼児期に、本能としてもつ生きる力に注目しそびれたのかもしれません。

 
   

 

 

 

自分で食べる喜びを

 

 離乳期からいろいろな味覚が発達しますので、栄養バランスを考えながら子どもの月齢と咀嚼状況に合わせて素材の品数を増やしていきます。一般的には10ヶ月過ぎるとスティック状に煮た人参などは手づかみで食べたがり、スプーンなどの道具も使いたがります。できるだけ素材を生かして薄味にし、自分で食べる喜びを経験させていくと極端な偏食や咀嚼せず飲み込むような食べ方はしないはずです。

 

 かみ切れない肉や魚の骨には注意を払わなければいけませんが、2歳過ぎても親が口に食物を運んでいると、拒否したりはき出したりして我が儘も発生します。結果、好きな物だけを食べさせるので偏食も強くなります。野菜を全く食べないため便通が週に1.2回で固い、耐性がない、給食が嫌で登園拒否といった、別の問題も発生しますので、何でもおいしく食べられるという自信を培ってやりたいものです。

 

 

 1歳過ぎて自分で食べるようになると、最初はこぼす量も多く、机の下に鶏を飼いたいくらいですが、ご飯は団子状のおにぎりに、おかずは手づかみで、汁は取って付カップでと工夫すると数ヶ月で上手になっていきます。自分で食べるのか、親に食べさせてもらうのか、そこが自我の発達と深く関係するポイントです。

 

 

 

医食同源-子どもの食とフードシステム

 

 食はまた医療の源、「医食同源」です。薬のない時代、あるいは薬をめったに飲まない人々・時代は、自然界にある食べ物で調整して病気を治してきました。今、フードシステムが大きく変わって徹底した『食行動の代行』が盛んです。採餌、調理、摂取、消化排泄という体内過程を一個体・一家庭が行うことはめったに見られません。

 

 笑えない話ですが、最近は摂取も代行されているといわれます。嚥下・咀嚼を代行するやらわかい食品や、種々の機能性物質を含んだ飲料・食物(体内で処理されるべき過程を代行する「健康食品」)が数多く販売されているのです。さらに排出まで代行。まさかと驚きますが、排出を容易にする食品・薬品群が与えられているというのです。幼児期の食は楽しみを作り出す源、健康の源ですので、食を媒介にして親子の自立した関係を築いていきたいものです。

 

 

今田純雄(『子どもと食』東大出版会2013)
 

 

【年少で育てた“ミニにんじん”、みそ汁にして食べました♪】

 

 

【年少で育てた“かぶ”、みそ汁や塩揉みをして食べました♪】

 

 

 

【年中で育てた”さつまいも”と”里芋”、収穫の日が待ち遠しいです♪】

 

 

【年長で育てた“ささげ”、もちつきの日にお赤飯にして食べます☆】

 

 

【幼稚園の園庭で採れた“やまもも”、みんなでジャム作りをして食べました☆】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自己紹介

渋谷教育学園浦安幼稚園 顧問 青木久子。

国家公務員、公私立幼稚園の教諭から東京都教育庁指導部指導主事、都立教育研究所統括指導主事、昭和女子大学、国立音楽大学教授・同附属幼稚園長兼務後、幾つかの大学院、学部の客員教授を経て現在研究所を主宰。子育ての失敗談は佃煮にして瓶詰めにするほど豊富。

<教育学専攻、発達臨床心理士>

 

 

子育てがたいへん! 

 

毎日が必死だった時期が懐かしくなるのも、年を重ねたからでしょう。子育て真っ最中の方々のために、共に考え、悩み、ほっとする情報が提供できれば幸いです。

 

1号は、教育の基本について取り上げました。

 

 

親の教育権・子育ての喜びの尊重

 

子どもを育てるのは、何千年、何万年と続く生物の営みで、何も人間だけが特別というわけではありません。人間が特別だとすれば、親の教育権・第一義的責任が憲法、民法、教育基本法などの法律に社会契約として位置づけられているところでしょうか。

 

それは人の本能としてある子育てを法律で保障するもので、生活を共にしながら互いの成長の喜びを分かち合う関係が社会の基盤であることを意味します。浦安幼稚園は、親の教育権を尊重しながら、家庭だけでは経験できない<自覚・自省・自衛・互助・互楽>の子どもの世界を提供しています。みなさまも乳幼児期にしか味わえない子育ての大変さと、大変だからこそ得られる親子の絆、感動の物語をたくさん作ってほしいと願っています。

 

親も子どもも教職員も健康が第一です。無理をせず、自然体で、家族とは、子育てとは、人間らしい生活とは何かを問いながら、共に育つ学びの場を共有したいものです。

 

 

自調自考の教育理念

 

教育は生誕とともに始まるという考えが、生涯学習社会の根底にあります。家庭であるいは保育施設で、養育者との愛着形成を図り、生命性(もって生まれた生きる力)を高めるために規則正しい生活(十分な睡眠、質のよい食事、自発的な運動)を実践してきたことと思います。

 

親を手こずらせる探索期(好奇心旺盛な1.2歳ころの探索行動)には、寝ている時がほっとする時間というほどに、目が離せない日々だったことでしょう。「三つ児の魂百まで」と言われる心身の発達は、見えないけれど生涯にわたる人格の基礎となり、本園の教育理念「自調自考」の土台ともなるものです。

 

3歳以上を教育の対象としてpre-school(就学前教育)とするのも世界共通の概念で、子ども自身が“自分はかくありたい”という意志と自覚をもって自分を形成していく教育の始まりです。子どものもつ向上したい欲求と、それを支える教職員や仲間の教育的作用が集団の場において、自己主張、対立、協調・協同する経験や、予想、予測、自己選択・自己決定、課題達成の喜びといった経験をもたらします。また、感じたままに自分を表現することで他者との違い、自分の良さ、さらに研鑽したい目的を見いだしていくのです。

 

 

経験だけが自分は自分であることを定義します。親でも代わることの出来ない経験がその子らしさの源流です。次回から乳幼児期ならではの、多様な経験について考えましょう。

 
【園庭のキウイの木、今年もたくさんの実をつけています!】