合格体験記2026・その3(多摩美術大学統合デザイン学科推薦入試)
K.K 受験科 夜間部 現役生
東京 広尾学園小石川高等学校
多摩美術大学 統合デザイン学科 推薦入試合格
美大への進学を目指し、渋美に入学したのは高校2年生の9月頃のこと。
それまで予備校に通っていなかった私は自分が遅れをとっているという事実に、
ただ焦燥感と不安ばかりを覚えていた。
渋美に来る前に行ってみた予備校の短期講習では、
時間内に描きあげるためのあたりの付け方や色ののせ方、
鉛筆の動かし方のコツ、構図の切り取り方など、技術面の指導が中心だった。
しかし渋美ではそうしたテクニックそのものを重点的に教わることはほとんどない。
代わりに、色ラボやハイコン、ワークショップなどユニークな課題に多く触れる。
当初はこの風変わりな方針に戸惑いを覚えたが、
学院にいる全員が個性を大切にしながら異なるスタイルを磨いていくためには、
これらのカリキュラムは必要不可欠なのだと、今ならわかる。
展示にも足を運んだ。
「アウトプットするには、まずインプットするしかない。
いい作品を100見ても、そこから自分の表現として生み出せるものは1にも満たない。
もしかすると0かもしれないね」
──そんなことを、いつか山本先生がおっしゃっていた。
仮に山本先生の名言を集めた本が出版されれば、私は生涯愛読するだろう。
ブログでのつぶやきやレクチャー、講評の中の山本先生の言葉選びには毎回痺れた。
講評という場でも個人的な会話の中でも、
山本先生は一貫して、いいデザインとは何か、美とは何かを、
私たちに問いを提示することで考え続けさせてくれていた。
基礎科が終わって3年生になり、時は流れ夏期講習会になった。
制作時間もさることながら、講習会の講評は三時間にも及び、疲れが出てくることもあった。
しかし、先生の言葉の随所にちりばめられた大切なヒントを聞き逃すまいと、常に耳を澄ませていた。
山本先生から繰り返し言われていた「楽しんで」という言葉の真意を自分なりに探し続けた時間でもあり、
その過程で大きく成長できた期間だったと思っている。
実は私が統合デザイン学科を本格的に目指し始めたのは、夏期講習後半からのことだ。
私は渋美に入塾した当初、
「今は何がやりたいか決まっていない。でもとにかくデザインが学びたいんだ」
という漠然としたイメージしか思い描けていなかった。
統合にもなんとなく惹かれてはいたが、これという決定打はなかなかなかった。
意思が固まったのは、上野毛キャンパスの夏祭りでのこと。
詳細は割愛するが、訳あって教授の話を聞ける機会を得た。
そこで教授は、入試では、自分がどんなことを不思議に思えて、
今まで多くの人が感じていたけど拾い上げられなかったものにいかに目を向けられるかを見る。
そして、これからの時代デザイナーに必要なのは、
前提としてただ人の役に立ちたいとか、優しく美しくありたいという気持ちで十分なのではないか。
と話してくれた。
この言葉になぜ感動したのかは今でもうまく言葉にできないが、
絶対にこの環境で、統合デザイン学科で学びたいという思いが芽生えた。
一般受験以外にもチャンスがあるのなら、挑戦してみたいと思った。
夏休み明けは毎日のようにやるべきことに追われる怒涛の日々だった。
志望理由書を何度も推敲して山本先生に添削してもらって、、の繰り返しだった。
ポートフォリオの制作でも、先生とメールのやりとりを何度も繰り返した。
しかし私がイメージするアイデアを先生に話すと、頭が固いね〜笑 と言われてしまう始末。。。
ほとんど毎回、山本先生の指摘や言葉の意図が理解できずに悩み、
その度に学院の他の先生方に真意はこういうことなんじゃない?などと相談に乗っていただいた。
今思えば、こんな風にひとつのことを突き詰めて考える時間は、
それまでの私に圧倒的に足りない部分だったのだと思う。
イメージする完成図と私の作品にはあまりに大きな乖離があり、
提出までの日数を逆算しては、このままでは間に合わないと本気で思った。
しかし、とにかく手を動かしてつくり続けてという山本先生の言葉と、
同じく推薦で受験する友達との励まし合いが糧になった。
統合推薦組のみんなには、本当に感謝している。
間違いなく私はみんなに支えられていた。
提出日当日。
ポートフォリオ提出を見届けるために駆けつけて、
ぎりぎりまで一緒に悩んでくれた某統合の先生兼先輩には感謝してもし切れない。
そして提出締切の30分前。
山本先生、本当に色々ご迷惑おかけしました。
___ポートフォリオの提出が完了した。
ポートフォリオの作成で自分の力不足を身にしみて感じた私は、
面接に向けてとことんまで自分の言葉を練り上げる必要があると思った。
企画構想と面接で頼れるのは自分だけだった。
過去の推薦の資料を読み漁り、先生たちにも本当にたくさん相談にのっていただいた。
統合デザインで具体的に何を学びたいのか、
どういうことを今まで大切にして制作してきたのか、
何度も自分に問いかけ、私なりの言葉を探していった。
大変だったが、実を言うとこの作業は少し楽しかった。
そして企画構想の日。
ポートフォリオ提出が終わってからの期間は毎日過去問にトライしたが、
残念ながら予想していたような問題は出なかった。
しかし、前日にやったテーマの中で考えた案を1つ、
お題に沿うように変えて使えたので結果オーライだった。
企画構想が終わるとみんなですぐ渋美に集まり作戦会議。
その日のうちに先生たちと面接とプレゼンに向けて話し合った。
もっといい案があっただろとツッコミたくなる自分の企画構想の提案にも、
面接で挽回できると言ってくれた先生たちの言葉にとても救われた。
この日渋美から出る時、明日面接行ってきます!楽しみます!!と
私たちが言ったあとの山本先生の頼もしい顔を、私は忘れられない。
面接では、自分が想定していた質問が全く聞かれなかったというハプニングもあった。
でも、ここまできたのだから切り替えて次に行くしかない!という心意気で挑んだ。
しどろもどろになりながらも、頭の中は割と落ち着いて、
教授に統合デザイン学科への愛を伝えることができたと思う。
最近行った展示や感動したデザイナーの作品など、
受験と並行して色々な話の引き出しを作っていたことが功を奏した。
合格発表当日。
合格という文字を見た瞬間、私は動揺した。
喜びと驚きの感情がぐるぐる交錯して、収拾がつかなかった。
山本先生とお世話になった先生方に報告しながらやっと現実味を帯びてきて、
これからもっと頑張らなければ、
いや、楽しまなければいけないという気持ちが込み上げた。
本当に嬉しかった。
渋谷美術学院に出会ったことで、私は確実に打たれ強くなった。
逃げ出さず必死になるということを覚えた。
知らない世界に入っていくこと。
自分に足りないものがまだまだたくさんあることを目の当たりにするのは、怖い。
私が最初に渋美に足を踏み入れた時もそうだったし、これからも怖いことばかりかもしれない。
しかし、渋美に通った期間に幾度なく感じた強い憧れや悔しいという気持ちは、
これからも私の原動力になっていくと思う。
そんな風に思えたことが、私にとって一番の成長だ。
渋美に来なかったら出会えなかった友達や先生方、そして山本先生。
大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
〆