みなさん、こんにちは。管理者のもうです
前回は高齢者施設(デイサービス)の看護についていてお話したので、
補足として今回は
お泊りデイについてお話したいと思います。
■お泊りデイが始まった背景
・現在、特養の現在の入所者は約50万人いるのに対し、入所待ち待機者は、52万人いるといわれています。
以前「特養の看護の役割」でも書きましたが、現在「特養の老健化」という、特養に入れなかった利用者さんが、続々と老健に流れて行っている現象がおこっています。
さらに特養に通常併設されている「ショートステイ」も数が足りておらず、利用者待ち状態です。
このような背景から、本来日中に通って介護サービスを受ける通所介護施設「デイサービスセンター」に、家族介護のレスパイト的な役割として、お泊りできる機能を持たせよう!ということで、2012年ごろから「お泊りデイ」が始まりました。
現在日本全国のデイサービスセンターの数は、約4万3千施設あるといわれ、そのうち約1割がこの「お泊りデイサービス」と行っているといわれています。
ただ日中のデイサービスとは違って、夜間の「お泊りデイ」は介護保険外サービスになります。
■お泊りデイ
・お泊りデイとは、読んで字の通りデイサービスセンターの機能を持った
「宿泊施設」です。
・1泊1000円位から~6000円程度(施設によって値段はまちまち)で宿泊でき、利用者さんは日中デイを利用される方達の中から1~10名程度で、施設によって大きく異なります。
・介護保険適用外ということは、当然看護師の配置基準や、その他運営、設備基準など国統一のものはありません。一部の自治体が「お泊りデイサービス」の運営上の基準を設けているようですが、認可制ではなく届け出制なので基本ゆるいです。
・お泊りデイサービスの夜勤の配置体制は基本介護職員でまわしていることが多いようです。
・配置基準もないので、デイ側はなるべく固定費コストを抑えてサービスを提供しようとします。医師はもちろん、看護師さん、PT、OT、STさんなどもいらっしゃらないケースがほとんどです。
・でもお泊りデイの利用者さんで一部医療行為が必要な方がいる場合は、デイに登録されている看護師さん、もしくは訪問看護師さんや非常勤の看護師さん等が交代で夜勤として対応にあたるケースもあるようです。
・お泊りデイの夜の仕事内容は、主に利用者さんの見守りで、夜の食事(食事中に誤嚥した時は吸引まども行う)、排せつ、着替え、体位姿勢交換、等々で、レクリエーションやリハビリなどは、夜は行いません。たまに利用者さん同士で盛り上がっちゃったら、夜でもトランプなんかをやったりするようです。
・また数は少ないですが、日中のデイに同じく、利用者さんが急変した場合はその対応があります。だいたいかかりつけ医のいらっしゃる利用者さんなら、かかりつけ医にデイに来てもらうか、いらっしゃらない場合は近くの病院へ搬送するという対応となります。これも介護職員が対応するケースが多いようです。
・また病院と違い、申し送りなどもしていないケースが多いです。
・お泊りデイの宿泊設備に関しては、きちんと宿泊者分のベッドが人数分設置されているところもあれば、折り畳み式で日中の利用者が帰った後、ベッドを出すような簡易型のものしかおいていないところ、また布団を1枚敷いて、雑魚寝のような形を取っているところ、男女同室等も少なくないようです。
・「お泊りデイ」は、本来は家族介護のレスパイト的な位置づけとして始まったので、基本日中デイを利用する自立度の比較的高い利用者さんが、1日だけ同じデイに宿泊するというケースが多いです。
でも中には「特養やショートステイの代わり」として、
長期的宿泊が常態化したケースも少なくないようです。
・「お泊りデイ」はそもそも介護保険外サービスで、利用者さん家族の持ち出しになるので、
ケアマネさんも利用者さんを本当は特養に入れたかったけど入れられなかった、
じゃあショートステイを使ってもらおうと思ったけど使わせてもらえなかった。
そして最後に選ぶ先としての「お泊りデイ」
というパターンです。
・また介護保険適用外であるお泊りデイでは、施設設備の安全基準上問題のある施設も少なくないようです。例えば宿泊施設にすると、消防法上、必ず自動火災警報器やスプリンクラーを設置しなさいという義務がありますが、きちんと国から認可を受けていない等。
でも施設側からしたら、「お泊りを受け入れないと、他のデイに利用者さんを取られてしまうから!」という理由で「泊り」を強引に受け入れてたりします。
またサービスの質に関しても、デイの中に例えば透析がある利用者さんがいらっしゃっても
「透析の方でも水分や食事制限など全くないから普通に食事あげていいから」
「そんなことで利用者の家族や相談員にいちいち確認しようとしないで!」
という対応等、病院では考えられないようなサービスをしているところもあるようです。
ここらへんが、医療職の看護師としてまともに働きたいという思いと、
「施設は施設のやり方があるんだ!」
「利用者を確保するのが優先だ!」
と言い切る管理者との間での対立がありそうです。
・お泊りデイは確かに社会的ニーズは高いですが、民間の事業所が
「24時間365日見守ります」という宣伝文句の元、
利用者を囲い込むための営業的要素も大きいようです。
特に最近、民間のデイサービスで、管理者が元不動産業界や飲食業界の方々で、あまり介護現場に詳しくない方が経営されていたりするので、利益優先で介護や一部医療行為のサービスの有り方において問題がある施設が存在します。
・やはり「お泊りデイ」は日中のデイサービスと違い介護保険外サービスということで、
職員の配置基準や、その他運営、設備における基準などがないことや、
都道府県の認可や届け出の義務もなく、自治体からの指導、監督の目も行き届いていないため、
施設によってはやりたい放題なところもあり、サービス体制や質に大きな差がある
ようです。
・特にお泊りデイにも看護師を必要としている施設は、
実際に夜発生する利用者さんの医療行為がどんなものかや、施設の宿泊環境や安全管理体制ついて、必ず確認する必要があるでしょう。
施設の経営を守るためではなく、
看護師さん本人を守るため、
利用者さんの命を守るため
です。
■面接や見学の際に確認すべき点としては
・お泊りデイを実施しているか?やっている場合、何名の利用者さんがお泊りデイを利用されているか。その利用者さんの介護度と必要な医療行為は?お泊り時の夜勤体制(介護職員の数は?看護師も入ることがあるのか?)夜間時に起きた緊急時の対応体制、他機関との連携体制は?さらに、お泊りデイの宿泊環境や安全管理面等です。
お泊りデイは国としての制度が追い付いていない分、問題も少なくなく、さらに固定費を抑える目的で、基本介護職員が夜の勤務にあたることから、看護師としてお泊りデイで働ける先は決して多くはないかもしれませんが、
それでもご興味がある方は是非、一度見学に訪れ、現場の話をよく聞いてください!
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