他人の手が入ったモーツァルトの「レクイエム」。聴いても書いてもちょっとだけ欲求不満になります。

 

そこで今回はその口直しという意味で、素敵な演奏を聴いてみたいと思います。

 

 

トン・コープマンがアムステルダム・バロック・オーケストラを指揮して、モーツァルトの「交響曲第29番」「第33番」「第25番」を入れたもの。

 

これも若い頃の輸入盤漁りで手に入れたもので、こういう拾い物があるので当時は輸入盤漁りがやめられなかった。

 

基本的に古楽器演奏には馴染めない部分があるのですが、これは古楽器の気になる部分が少なく、良い部分が多い演奏です。

 

🔶モーツァルト「交響曲第29番」

 

冒頭から古楽器特有の弦楽器のノンビブラート満載ですが、それがちっとも嫌な感じを与えず、そこから生まれる透明感の方に注意が向いてしまいます。

 

優しい音楽の優しい演奏。

 

この曲はモーツァルト10代の作品ですが”第40番や第41番なんかよりいいじゃないか”と思えてきたりします。

 

第3楽章メヌエットの一枚ベールを通したような、神経に触る音は絶対に出させないとコープマンが目を光らせいます。

 

第4楽章アレグロもずっとその調子で、現代のフルオーケストラの演奏に馴染んだ方には物足りなさを感じさせそうですが、この徹底的な優しさは癒しです。

 

 

🔶モーツァルト「交響曲第33番」

 

このCDに収められた「第29番」「第25番」はモーツァルトの若い頃の交響曲の中では飛び抜けて人気がありますが、「第33番」は忘れられたような存在です。

 

私のこのCDで初めて聴きました。

 

確かにモーツァルトの交響曲の中で必聴な曲とも思えませんが、ちょっと大人になったモーツァルトの落ち着きのようなものを感じさせます。

 

 

🔶モーツァルト「交響曲第25番」

 

好きな人は昔から好きなのでしょうが、この曲に広く注目が集まるようになったのは映画「アマデウス」のおかげでしょう。

 

元々舞台で演じられたものを映画化したもので、”モーツァルトはサリエリに殺されたというのは真実だろうか?”ということを観ている人に投げかけるような内容で、真の主人公はサリエリです。

 

私も公開を待って映画館で観ています。

 

冒頭に第一楽章のあの激しい出だしが流れますが、コープマンで聴くとそこまでの衝撃度はありません。ここでも優しい演奏を貫いているようです。

 

ちょっと物足りないと思う部分もありますが、じっと耳を傾けて頂きたいです。衝撃度を抑えたことで音楽がよく分かります。

 

しかし同じ古楽器演奏と言ってもコープマンはアーノンクールなんかと全く違った狙いを持った人のようですね。

 

それでは、コープマン指揮の「交響曲第25番」です。