NHKの「100de名著」、9月は『ウェイリー版・源氏物語』でした。

ご覧になった方はいらっしゃいますか?

4回、各25分の放送で計100分。

色々な作者、時代の「名著」をその筋の専門家がわかりやすく解説してくださる番組です。

 

9月は、ご存知、紫式部の名著『源氏物語』を、イギリス人のアーサー・ウェイリーさんが、なんと100年前に英訳された『The Tale of Genji』。

それを、今度は日本人の姉妹である翻訳者チームが、英語版を元に和訳しなおすという、画期的試みによって生まれた『ウェイリー版・源氏物語』。

いったん英訳されたことで、原作を読んだだけでは気づきにくかった魅力や視点が

浮き彫りになるという、なんとも仕合わせる取り組み。

この取り組みを支えているのは、アーサー・ウェイリーさんの驚くべき日本語力と

日本文化の理解力、そしてお2人の翻訳者の英語圏文化への洞察力です。

 

高校生の頃、初めて源氏物語を読んだ時は、正直なところ、

“なんだ、こりゃ”でした。

“光源氏って、この時代だからこそかもしれないけれど、ただのプレイボーイじゃん。かなり倫理問題あるし”でした。

でも、今回この番組を見て、視点が変わりました。

『ウェイリー版・源氏物語』ムック版から少し引用しますと、

… … … … … 

P85

『源氏物語』は、その不義悪行に焦点を当てずに、そこにあらわれる

「もののあはれ」の深さにスポットを当てている。

すると、光源氏はよき人もよき人、これほどよき人はいないよき人の手本であり、

そんな観点で、その「よきことの限り」を集めたのがこの『源氏物語』であって、

その善悪は儒教や仏教の善悪とは違う。

もし、倫理を云々したければ、その手の本を読めばいいではないか。

(本居宣長による『源氏物語 玉の小櫛』の安田登さんによる現代語訳より)

… … … … … 

びっくり仰天でした。

 

『ウェイリー版・源氏物語』ムック版では、「もののあはれ」や「をかし」についても、ウェイリーさんの訳によってはじめて立ち上がってくる意味合いなどについても解説されています。

千年前に書かれた源氏物語が、実はとてつもなく画期的な作品であったことをより深く理解できました。

 

シリーズ4回目の放送は、今日(9/302249分までNHK+でご覧になれます。

もちろんオンデマンド視聴は全回見ることができますし、ムック版を読むだけでも仕合わせる新たな発見があるのではないでしょうか。

 

ま、だからといって私にはまだ、“光源氏、ただのプレイボーイじゃん”的感想は残っていますけれど💦

文学って、それらを超越しているのだなぁと、思った次第です。

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今週はまだ気温30度越えの日もあるようです。どうぞご自愛くださいね。

 

〈ライター:斉藤知江子