「春はあけぼの」と始まる「枕草子」について、私は“清少納言が書き連ねた雅な王朝物語”という印象を持っていました。
清少納言は、中宮定子(ちゅうぐうていし)に仕えた女房です。
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実は『枕草子』は、個性的にして悲劇の人であった定子に清少納言が捧げた作品で、
定子の生前は定子の心を慰めるために、定子の死後はその鎮魂の思いをこめて書かれました。
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この本を読むと、まず中宮定子の波乱の人生に驚きます。
枕草子の印象が強くて、定子もほのぼのと幸せに生きた人だったかのように思い込んでいましたが、
実は波乱の人生を生きて、24歳という若さで一条天皇の初めての皇子を産んだのちに亡くなられています。
 
清少納言は、定子がどんな境遇にある時も、悲惨さを微塵も感じさせないようなタッチで、感動や喜びなどを綴っていきます。
読んだ人はきっと、定子はとてもしあわせに、理想的な生活を送ったのだと感じるでしょう。
悲惨な境遇のただなかにある定子に、定子が読んだらきっと喜ぶであろうことのみに焦点を当てて、書いていくのです。
 
これは、すさまじいほどの“仕合わせる力”ではないでしょうか。
切り取り方によって見える世界はこうも変わるのかと、
それも千年以上も前に生きた女性が成し遂げているのかと思うと、
何ともいえない想いが湧いてきました。
 
余談ですが、この本の面白さは、定子と清少納言を取り巻く人間関係も含めて、
まるで同じ時代を生きているかのような錯覚に陥るほど、リアルに描かれているところです。
目に浮かぶようでした。
 
もしよかったら、清少納言の仕合わせっぷりも含めて、
日本の昔の様子を味わいがてら、この本をご覧になってみてください。
 
梅雨の寒さと日照時間の短さで、体調を崩されている方も多いようですが、
今日も一日どうぞお元気でお過ごしください。
 
〈ライター:斉藤知江子