診あう二人 その二 | 信の虹 ー신의 nijiー

信の虹 ー신의 nijiー

ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^


聞けば、侍医に習って脈診を学んでいるのだという。

「だからと言って、誰かれ構わず男の手を取らないでください」

「男の人だけじゃないわ。武閣氏さんや薬員の女の子にも協力してもらってるもの」

「しかし、皆に誤解を与えます」

「どんな誤解?」

「男は突然こんな風に手を取られたら、その、あなたに、」

「私に?」

本当にわからないのか?
ヨンは苛立つ思いでウンスを見つめた。
それどころか、

「私に、何?」

幼子のように無垢な顔をしてヨンを覗き込んでくる。ウンスの瞳にヨンの姿が映る。目が、離せなくなる。

「あなたに・・・何でもありません」
つい先程こみ上げた欲情が再びヨンの身を熱くして、堪えるように下唇を噛み締めると

「いいから、二度と男どもにはしないでください。わかりましたね」
と半ば強引に釘をさした。

「まぁ、大体の人には協力してもらったからもういいけど・・・」

そう不満気にしながらも、枝から取った一枚の葉を指でくるくると楽しそうに回すウンスにヨンは問いかけた。

「しかし、どうしたんです?急に。医仙であるお方が医を習うなど」

「急にじゃないわ。けど最近特に思うの。私、医仙だなんて呼ばれてるけど、結局現代の道具が無いと何の役にも立たない。それに、いつソウルに戻れるかもわからないじゃない?だったら、」

言葉を区切ったウンスに、ヨンは問いかけるような眼差しを送った。
覗き込むような黒い瞳を受け止めて、ウンスは指でつまんだ葉を見つめると、言葉を続けた。

「だったら、ここに居るうちはできるだけの事をしようかなって。せめて帰ったあとに、居ないよりは居た方が良かったと思われるような、天界の人だからっていうんじゃなくて、医者として、人として、少しは必要とされる人になれるように頑張ってみようかなって」
帰りたいって思うばかりで見ていなかったここの景色をね、覚えておくのもいいかなって思ったのよ。と、また指を動かす。深緑の葉が、ひらりと揺れる。

ヨンはごく僅か、そんなウンスの躰の頭上からつま先までを一線で描くように、秘めた視線を滑らせた。
ほっそりとした白い手足、肌は陶器のように滑らかで。
抱き寄せて、己の欲するままに力を込めれば音を立てて壊れてしまうだろう。

だのにその足はいつの間にか大地に根付き、逞しく生きようとしている。
嫌がる花を無理に摘み取り、ろくに水も与えられずにいるというのに、枯れるどころか少しでも根を張ろうとその白い手を伸ばしてくる。

「・・・俺で良ければ」

ヨンは自身の袖口を捲り、腕の布を口に咥えるとその結び目をほどいた。
露わになった陽に焼けた手首が、ウンスの目の前に無愛想に差し出された。