私はウクライナでの戦況を毎日Youtubeの戦況実況チャンネルでチェックしているのですが、8/6に突然入ってきたニュースで驚いたのが「ウクライナ軍がロシア領と隣接するスーミ州からロシアのクルスク州へと侵攻した というニュースです。

 

過去には ロシアのベルゴロド州へと何回もウクライナ軍やその仲間の「ロシア義勇軍」を名乗る部隊が ロシア領内のベルゴロド州に入っては民間人を攻撃して死傷させて、「いくつかの村を占領した」と言って写真撮影をした後に逃げ出す、メディア向け宣伝の為の侵攻が何度となく行われていましたので、今回のクルスク州への攻撃も そのようなものかと思っていたのですが、どうも戦況を見てみれば、単にメディア向け宣伝目的だけではなく、用意周到に計画され、ジョージア(グルジア)人、フランス人、米国・英国人、ポーランド人等の外国人傭兵も参加して大規模に人員も装備も集めての侵攻だったようですので、今回ご紹介したいと思います。

 

(上の写真:ジョージア人の傭兵がクルスクで戦っていることを報じた記事と、写真はクルスクへの軍事侵攻に参加したジョージア人。胸にジョージアの国旗が縫い付けられている)

 

 

ウクライナ応援の日本のメディアも早速このウクライナ軍のロシア内侵攻のニュースに飛びついて、ウクライナ軍にとって「反撃開始」だと狂喜乱舞していますが、まずおかしいのは ロシア軍がウクライナ領内で戦うのは「軍事侵攻」「侵略」と報じながら、ウクライナ軍がロシア領内で戦うのは「越境攻撃」だと言っているところです。(「侵略」や「テロ攻撃」という言葉を使っていない。)

 

しかし、このロシア領クルスク州へのを侵攻を「越境攻撃」とか「反撃」という言葉で表現してよいものでしょうか?甚だ疑問です。なぜならば、ウクライナ軍は軍事侵攻の際に、民間人を攻撃し、少なくとも12名の住民が攻撃されて死亡し、子供を含めて数百名が怪我をしています。

 

そして、この軍事侵攻の最中に捕らえられたウクライナ軍の捕虜は「民間人を撃ってよい」と司令官から言われていた と証言しています。↓

 

  

ウクライナ軍はクルスク攻撃中に民間人を射殺するよう命令されたと兵士が語る

男性は足を撃たれ武器を所持したものはその場で射殺するという指示だったと捉えられた捕虜は語った

 

ウクライナ軍司令官がロシアのクルスク地方での作戦中に、部下に武装した民間人を殺害し、非武装の男性を負傷させるよう命令したと、捕虜となった兵士がインタビューで主張した。 
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さらに、ウクライナ軍はクルスクで化学兵器まで使用しています。↓

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

ちなみに、ウクライナ軍が化学兵器を使用したのはこれが初めてではなく、ドンバスやヘルソン地域で何度も使用が確認されています。(多くはドローンに化学兵器が入った小型容器を取り付けてそれをロシア軍兵士の上に落とす というやり方で、化学兵器によるロシア軍兵士の死者も出ています。)

 

意図的に民間人を射殺し、化学兵器まで使用する・・・このようなやり方が「テロ攻撃」と言わずして何と言うでしょう?

大手メディアの使う、ロシアへの「越境攻撃」という言葉は ウクライナは悪くない というふうに、完全に私たちを洗脳しようとする意図があります。

 

 

また、「侵攻を阻止できなかったプーチンへの不満がロシア内で高まっている」とか「ウクライナがロシア領の一部を確保すれば、停戦交渉、和平交渉を有利に進めることができる」等と言って歓喜の報道をしていますが、私に言わせれば、本当に日本のメディアは レベルが低すぎて、愚かだなぁと思います。

 

まず、現在この記事の下書きを書いている8/14時点のクルスク州の戦況マップです。下の地図は親ウクライナでも親ロシアでもない中立のSuriyaku map さんからのものです。

 

 

 

 

上の地図の青く塗られた部分と青い点の部分がウクライナ軍がいるエリアで、その周りの赤いエリアがロシア軍が支配下に置いているエリアです。

 

ウクライナ軍は6/6に精鋭といわれているいくつかの旅団からかき集めた6,000人の兵士(外国人含む)と多数の装甲車、戦車、大砲、ドローン、電子戦用の装置、防空システムをロシア領内に侵入させ奇襲攻撃をしかけました。

 

ロシア軍がなぜ簡単にこのエリアから宇軍の侵入を許してしまったかと言うと、事前にこのエリアはロシア軍によって「近い将来の攻撃」の準備の為、地雷が除去されていたからです。

 

そして、ロシア軍のもう1つの大きなミスは 近くに重武装した部隊がいなかったことです。もちろん、国境警備隊と少数の徴兵された若い兵士はいたのですが、彼らは軽武装しかしていませんでした。

 

ウクライナ軍は ロシア側の国境警備隊員等がいた建物に、まず集中的にドローン攻撃をして建物から出られなくし、建物を包囲してそこにいた十数名のロシア側国境警備隊員等を人質に取りました。

なぜ近くに軽武装の兵士や国境警備隊しかいなかったのかと言うと、HIMARSやATACMS等の長距離兵器で攻撃される可能性を考慮して重武装したロシア軍はこのエリアからはかなり離れた位置にしかいませんでした。

 

そして、ウクライナ軍侵攻の一報を聞きつけて 当然ロシア軍は 戦車や装甲車、大砲を送り込もうとするわけですが、この時に この地域へとつながる1本しかない高速道路を ロシア軍の長い隊列が移動するという、今のドローンや長距離の大砲が頻繁に使用される戦争では絶対にやってはいけないことをやってしまい、このロシア軍の長い隊列が射程70~80キロのHIMARS4発に狙われ、合計でおそらく10台ほどの装甲車や戦車、おそらく100名前後のロシア軍兵士を失ったと思われます。この兵士移送のやり方はロシア軍のミスだと思います。

 

この当初の攻撃で勢いづいたウクライナ軍はさらにロシア軍兵士が周囲にあまりいないことをいいことに、ほとんど戦闘もすることなく奥深くまで侵入し、最大で国境から30キロの深さまで侵入したようです。(その後少し押し戻される)

 

ウクライナ軍の狙いは おそらくクルスク州にある原子力発電所を攻撃して、可能ならば占領して放射能漏れの危険でパニックを起こさせる、あるいは 交渉の際の「取引材料」にする ということだと見られています。

 

ロシア軍がウクライナのザポリージャ州にあったザポリージャ原発を2022年の特別軍事作戦開始から早い時期に抑えていて、それを取り返そうと何度も宇軍が試みたものの、全て失敗に終わっているので、ザポリージャ原発を取り戻すことを念頭に置いたロシアの原発への侵攻を狙った可能性が高いです。

 

しかし、ウクライナ軍が ほとんどロシア側からの抵抗もなく侵攻できたのは国境から最大で25~30キロ地点までで、目指す原発は国境から60キロ地点にあります。そして、ロシア軍の援軍はすでに到着してウクライナ軍を空からと陸から攻撃していますので、航空優勢、航空支援を持っていないウクライナ軍が 今後目標とする原発にまでたどり着けて占領する可能性はかなり低いかと思います。(もちろんドローンで攻撃する可能性ならまだあると思います。)

 

そして、ウクライナ軍のこの作戦は おそらく数か月かけて準備され、MI6、CIA等の外国諜報機関の支援があったと思われますが、この作戦が実に愚かだと私が思うのは 彼らは精鋭部隊から人員を多数引き抜いてこの攻撃に参加させていることです。

しかも、ドンバス地域の等の他の戦線から引き抜かれた兵士達でした。

 

下は ドンバス地域から兵士が移送された と伝えているファイナンシャル・タイムズの記事です。

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

つまり、ただでさえ劣勢を強いられてロシア軍に押し込まれているドンバス地域等からウクライナ軍は精鋭と言われる兵士を多数引き抜いて、このロシア領クルスクへの侵攻へと振り向けたのです。

 

当然、そうなれば他の地域でのウクライナ軍は 兵士が不足して ますます撤退を強いられることになります。

ちなみに、ロシア軍のほうは 人員は足りているので、このクルスクへの増援のために他の戦闘地域から兵士を移動させたりはしていません。

 

ですから、このようにロシア領への奇襲攻撃の為に当初6,000人、その後も20,000人もの兵士をこのクルスク侵攻に無駄に消費しているというのは ウクライナ軍にとっては 「崩壊が早まる危険性が高まった」 ということです。

 

ドイツの新聞、シュピーゲルは非常に批判的にこのウクライナ軍の戦略を報道しています。↓

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

 

 

今のウクライナでの戦争は 基本的に「陣地の取り合い」ですから、 ただ単に

「数十名が30キロ先までたどり着きました」 というだけではほとんど価値がありません。

航空優勢すらないウクライナ軍が その戦闘地域の先端にいる宇軍兵士にどうやって数か月にわたって弾薬を補給するのか、後方のウクライナ・スーミ州にはロシア空軍が頻繁に滑空爆弾を落としています。食糧や水についてはクルスク州にあるスーパーマーケットから全部を略奪しているようですが、兵站のことをウクライナ軍は全く考えていないようです。

 

兵站が望めない状態でごく一部の兵士が最大30キロを突破した と言っても それは自殺行為にしかならないわけで、その意味では 今回のウクライナ軍のロシア領クルスクへの侵攻は 「自殺行為的な奇襲作戦」だと言ってよいでしょう。

 

そして、キエフ政権はロシアのクルスク州の一部を占領した ということを大々的にメディア宣伝して、ロシア軍に奪われた東部4州+ザポリージャ原発を 交換という形で交渉材料にしたいのでしょうが、その見込みも甘すぎます。

 

すでにプーチン大統領は下のようにアナウンスしています。

 

 

 ↓(日本語に変換したもの)

 

キエフ政権側としては この今占領しているクルスク地域をできるだけ今年の年末まで維持し、あわよくば支配エリアを拡大し、それを交渉材料としてロシアが現在占領したり併合したりしている地域と交換という形で返還させる ということを考えているのだと思います。

 

ですが、はっきり言えることは これで彼らはかえって「墓穴を掘った」ということです。停戦交渉や和平交渉への道は 逆に遠のきました。

そうなると、どちらか一方が倒れるまでの徹底的な殴り合いになります。

 

ロシア側としては ウクライナ軍が壊滅状態になるまで、このような意図して民間人を攻撃するような「テロ国家」とは交渉はしない ということになりましたし、そうなると、ただでさえ、兵士が足りなくなってきているウクライナ軍はどうするのでしょう?

 

ますます女性の動員を増やすか、徴兵年齢をどんどん下げていって「18歳」にまで下げますか?

昨年秋頃から ウクライナには「50万人」の動員が必要 と言い続けていて、実際に集められたのは「20万人」だけでした。

 

徴兵年齢を下げて学生まで動員するようになれば、ますます 危険を冒してでも国外脱出するウクライナ人が増えるだけでしょう。

 

停戦交渉ができずに、「消耗戦」へと追い込まれれば、有利になるのは 兵士が足りなくなってきているウクライナではありません。人口が4倍以上いて軍産複合体の生産している兵器の数もNATOより多いロシアのほうです。

 

このようなことを考えれば、今回のロシアへの軍事侵攻、テロ攻撃がいかに愚かなものであるかが分かると思います。

 

最後に記事をご紹介します。西側メディアのプロパガンダ記事ではなく、軍事的な観点から見て、ウクライナ軍の今回の作戦が 実に「自殺行為」であるかを書いている記事です。

 

Kiev Regime Hs A Suicidal Goal In Kursk

 

(和訳開始)

 

キエフ政権はクルスクで自殺をはかろうとしている

 

著者: ルーカス・レイロス、 BRICSジャーナリスト協会会員、地政学研究センター研究員、軍事専門家

クルスクでは戦闘が続いている。キエフ政権軍はロシア軍の強い圧力にもかかわらず地上で進撃しようとしている。戦場にはロシア国防軍のさまざまな部門の部隊が展開しており、その中には民間軍事会社ワグナー・グループの部隊も含まれている。クルスクの防衛とウクライナ軍の進撃阻止はモスクワにとって最優先事項となっており、同州の完全な領土支配を取り戻すためのさまざまな取り組みが行われている。

ウクライナ軍は、多くの損失を被ったにもかかわらず、クルスクでいくらかの前進を遂げた。その理由は単純だ。ウクライナ軍は、通過する領土の支配に関心がないのだ。彼らの戦術は、どんな犠牲を払ってでも前進すること、地上を前進して「ロシア領土を奪取する」ふりをすることだけだ。この意味で、激しい砲火にさらされ、損失を被っても、ネオナチ軍は前進を続けている。

ウラジーミル・ゼレンスキー大統領補佐官のミハイル・ポドリャク氏は、クルスクにおけるウクライナの目的は、戦争をロシア領土の奥深くに押し込むことだけだと述べた。彼は、ロシアは「恐怖」を示し、この作戦に適切に対応できないと根拠なく主張している。彼によると、クルスクの件は、西側諸国がモスクワに対してより大胆な作戦をする必要があることを理解するのに重要である。言い換えれば、この作戦は、平和はロシアに対する武力行使のエスカレーションを通じて達成されるべきだというウクライナの見解を西側諸国に「証明」しているのだと彼は言う。

「今日、ロシア連邦内部に深く拡大している戦争がある。彼らはそれを恐れるだろうか? 恐れるだろう。(中略)彼らは恐怖以外の何かに反応するだろうか? いや、そして誰もがついに気づくべきだ。(中略)ロシアに圧力をかければかけるほど、平和は近づく。正義の力による正義の平和だ」と 彼(宇大統領補佐官ポドリャク氏)は語った。

ウクライナ当局がこのような話を広めたのは今回が初めてではない。以前、同じ話がベルゴロドとブリャンスクへのテロリストの侵攻を正当化するために使われた。キエフは、戦争をロシアの奥深くまで広げる「必要性」を常に重要な政治宣伝手段として利用し、主に勝利の誤った期待に基づいて政権への軍事援助を増やすことに焦点を当ててきた。これは、米国がウクライナ軍に国境を越えた攻撃を行うことを正式に許可したため、最近さらに悪化している。実際には、NATOは現在、領有権を主張していない地域でさえウクライナが軍事演習を行うことを公然と支援している。

しかし、この作戦にはもっと大胆な目的がある可能性もある。一部の 内部関係者は 、この作戦におけるウクライナの目的の一つは、プロパガンダに加え、クルスク原子力発電所(KNPP)に到達することだと考えている。そうすれば、ウクライナ軍はロシアの非常に重要な施設を掌握し、モスクワと「交渉」するための交渉力を獲得できるとされている。

馬鹿げているように思えるかもしれないが、この可能性は、ウクライナ軍がクルスクで使用している戦術と一致している。部隊は領土の征服や支配には関心がなく、まるでどこかに到着することを期待しているかのように、単に「前進」しているだけである。そして、どこへ行っても、ウクライナ軍は見つけたものすべてを破壊し、 民間人を殺害する。


ネオナチ軍がKNPP(クルスク原子力発電所)に到達すれば、多くの問題が発生するだろう。まず、キエフが戦略的に重要な施設を占領したと主張し、大規模なPR、プロパガンダキャンペーンが行われるだろう。同様に、核による脅迫も行われるだろう。キエフは、KNPPからの軍の撤退は、ZNPPのウクライナへの「返還」が条件だと主張するだろう。そして、最悪のシナリオでは、ウクライナ人が、事故や漏洩を引き起こすために、偽旗作戦でロシアを非難して、内部からプラントを破壊しようとする可能性もある。なぜなら、モスクワ軍は明らかに、そこから敵を追い出すために武力を使用するだろうからだ。

この策略は非合理的で自殺行為だ。たとえウクライナがKNPPに到達したとしても、ロシア軍の包囲から逃れることはできない。モスクワはZNPPの引き渡し交渉に応じるつもりはないため、同発電所を占拠しても交渉力は生まれない。ザポリージャとすべての新地域はすでに憲法上ロシア連邦に再統合されており、領土交渉の可能性はない。したがって、キエフがKNPPを占拠した場合、ロシアは交渉することなく、必要な軍事的および諜報手段を使って施設の支配権を取り戻すだけだ。そしてもちろん、ロシアには原子力事故を防止したり、漏洩が発生した場合に迅速に対応したりするために必要な人員と特殊装備がある。

キエフは必死さを見せている。このような自殺行為を実行するのは、まったくもって非合理的だ。敵軍はすでにロシア軍に包囲されているため、ウクライナ軍がKNPPに到達する可能性は低い。しかし、たとえそれが実現したとしても、ネオナチにとっては、死ぬか降伏する以外にこの作戦から逃れる道はなく、決して引き返せない旅となるだろう。

 

(和訳終了)