広島市は人口が120万人。
これは福岡より少なく、仙台より多い。
だが、福岡、仙台ほど目立ってはいない。
どうしても被爆地、平和の街というイメージが先に来てしまう。
広島市が周辺から人を集める範囲が、県内に限られるという地理的な弱点もある。
岡山県は大阪に向き、山口県は九州の福岡や北九州に向いてしまっている。
鳥取県は大阪、関西に向き、広島は中国地方の中心であるのにもかかわらず、ほぼ関係がない。
島根県は出雲地方は鳥取県と同様だが、石見地方は高速道路もある関係で広島との結びつきは深いだろう。
福岡は九州全部、仙台は東北のほぼ全部といったところを考えれば、その影響を及ぼす範囲がかなり狭い。
福岡グルメや仙台グルメは東京のテレビ局でも話題とされるが、広島物はカキ以外はそう強くはない。
従って人口の割には地味目になってしまってしまっている。
しかし広島に行き、スーパーの中を見てみるとその種類と地元物の数多さには驚く。
ここだけで完結してしまっているのではないかと思える。
広島県の地産食品の特色は瀬戸内海の海と関係が深い。
島に住んでいる人も多く、船を利用して広島市内の通勤する人などもたくさんいる。
さて広島県の郷土料理百選にはカキ鍋とアナゴ飯が選定されている。
カキ鍋の具材であるカキは、国産の60パーセントは広島県の瀬戸内産である。
次は東北三陸沿岸、北海道厚岸、三重県志摩、そして岡山県であるが、岡山県の場合は広島県の延長とみてよいだろう。
それは兵庫県まで続く。
いずれもリアス式海岸、多島海の地域である。
カキの土手鍋は主要な広島のカキ料理である。
カキは貝殻が縄文、弥生の遺跡からも出てくるので、古くから食べられていただろうが、江戸時代のカキを使った料理は聞いたことがない。
そもそも江戸にはカキがない。
京都大阪は瀬戸内にに近いのであったかもしれないが、そんなには普及していない。
カキが広く食べられるようになったのは、明治になってからか、養殖技術の進んだ戦後か、あるいは昭和後期のグルメブームか自分にはよくわからない。
しかしカキには食中毒の元になるという決定的なマイナス点があるため、そんな昔の人は恐れて食べなかっただろう。
自分が初めてカキというものを食べたのは1980年代に広島に旅行に行ったときである。
それ以前はない。
子供のころ親はカキを絶対に食べさせなかった。
その前にそんなものはない。ゲテモノに近い存在だった。
1986年にフランスのニースで名物料理である『フリュイドメール(海の幸)』を食べた時初めて生ガキを食べた。
それからカキが好きになった。
5年くらい前に宮城県松島海岸のカキハウスの食べ放題で、70個くらい食べたら腹がおかしくなり、それからは生ガキの暴食はやめているし、あまり好きではなくなった。
アナゴ飯は宮島の名物料理である。
姿は完全にうなぎ丼に似ている。
ひょっとしたらウナギの代用品か。ハモも同じようなものか。
そしてウナギ、アナゴ、ハモはどこにでもいるので、アナゴ飯も宮島だけというわけではない。
東京湾のアナゴも有名だ。
自分は宮島には行ったことがあるが、アナゴ丼は食べなかった。
多分味ではウナギに勝てない。
厳島への渡船場の周辺にはアナゴ料理を出す和食店がたくさんあった。
厳島神社観光とアナゴ飯はセットのようだ。
広島県の地産食品とグルメ料理
・カキ土手鍋 アナゴ飯(郷土料理百選) 広島焼き(各地あり)
・レモン みかん 養殖カキ ハモ
・広島菜 酒(賀茂鶴など) 合わせみそ カキ醤油 レモン果汁
保命酒の花(福山市鞆の浦) いか天(尾道) がんす(?)
・海軍カレー(呉) 尾道ラーメン 汁なしタンタンメン 呉細うどん
ワニ料理(サメ料理 北部)
・チチヤス牛乳、ヨーグルト(日本初) オタフクソース
タカキベーカリー オカノパン もみじ饅頭(宮島名物)
・備後府中焼きそば(広島焼きの一種でB1参加)
広島県には地物の醤油、味噌、酒、牛乳がそろっており、これはすべて全国のスーパーでも買うことができる。
半大手ともいえる。
米と麦の合わせみそは新庄味噌とかますや味噌がる。
なぜ広島が合わせみそかというと本州の米味噌と九州の麦みその境目がこの広島県と四国の愛媛県だからである。
ここより西に行けば醤油にしても味は甘くなる。
さて広島といえば広島焼きだが、これはカキ料理と並ぶ広島の二大料理である。
自分は過去に何回かこの広島焼きを食べたことがあるが、これがいわゆるお好み焼き(大阪風のイメージ)といわれるのにはかなりの違和感がある。
広島焼きはお好み焼きより、中の具に一人前の中華麺を置くのでむしろお好み焼きより焼きそばのバリュエーション、派生品のように思える。
小麦粉は最下層にクレープ状にちょっとしか入っていない。
それに店の人が作るので、お好みで自分が作るわけではない。
調理工程は複雑で、自分で作っても多分うまくはできない。
レモン、みかんは島、海岸線の段々畑で作られているが、いわゆる瀬戸内を象徴するのどかな風景がある。
その島々の間の海にカキの養殖棚が並んでいる。
かつて帝国海軍連合艦隊はこうした瀬戸の内海を泊まり地としていた。
呉は島々の奥のかなり深いところにある。
肉じゃがは海軍の船内食から始まったが、これは西洋の煮物料理を日本風に醤油、砂糖で味付けされて広まったといわれている。
カレーは海軍、海上自衛隊の基地にはどこにでもあり、毎年全国イベントなども行われている。
呉にしろ横須賀、舞鶴、佐世保などには名物としてカレーのレトルトが商品として売り出されているが、値段が高いので買う気はしない。
一度、江田島の旧海軍兵学校の見学で、食堂でカレーを食べたことがあったが、一度に大量に作るし、またそれなりの伝統が加わっているのでおいしかった。
(江田島の海上自衛隊幹部候補生学校食堂のカレー)
ご飯の割にはカレールーが多い。新潟バスセンターカレーもそうなので、この辺りに人気の秘密があるような気がする。
チチヤスは明治に始まり、大正時代に日本で最初のヨーグルトを発売した。
東京のスーパーにも置いてあり、自分はチチヤスクラシックという製品をよく買っている。
がんすとは魚のすり身コロッケであるが、昨年だったかケンミンSHOWでカミングアウトした。
ワニとはサメのことであり、その刺身料理だ。
島根県との県境地方で正月に食べられる料理である。
あまり一般的ではない。
このように広島県は人口も多いせいもありいろいろなものがたくさんある。



