北欧モデルでなぜ成長できるのか 2 | 「しょう」のブログ(2)

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 「生活指導」という言葉は戦前、綴方教師の峰地光重がはじめて用いたといわれますが、「生活そのもの(それを綴り意識すること)が子どもたちを成長させる」というイメージです。当面、「生活指導」や「生活綴方」を中心に書いていきたいと思います。

Q 北欧諸国の課題や問題点は?


A1公共部門の雇用の急増。女性の社会進出が進み、そのために子どもの世話や老いた親の介護に人手が必要になった。そこで北欧諸国は、保育や介護に多額の予算を割き、施設で働く人を雇った。民間企業による競争原理の代わりに、医師や保育・介護士など本来民間に雇われるべき人々が公共部門に雇われる事態が散見されるようになった。

A2 第二の問題点は高齢化。スウェーデンでは、労働年齢人口が08年から減り始める。



Q 労働力不足に対する長期対策は?

A 移民をさらに受け入れること

すでにデンマークでは、移民が人口に占める割合が80年の3%弱から、今では6%強へと上昇している。スウェーデンでは、移民は60年の人口比4%から、今では12%へと増加している。



Q北欧と英国における従業員教育で対応違いは?

A1発想の違い…デンマークの企業は集権化が進んだ連盟に組織化されているために、雇用者としての共同の利害という感覚をもっている。そして教育とは、労働者全体に知識が行き渡ることによって究極的には自分たちにも恩恵をもたらす「公共善」だ、という捉え方をする。



A2労使関係の違い(信頼が基盤)

コペンハーゲン大学の労使関係専門家、サーレン・アンデルセン氏は強調する。「北欧諸国の労働者は企業に柔軟性を与えることに積極的だ。その見返りに保障を手にできると信頼しているからだ」。



Q 北欧におけるもう一つの重要な考え方は?

A 全国民が「みんなでこの制度を支え、同時に恩恵を受けている」という意識を高めるよう、社会給付を設計するということ。

医療や保育の無料などの恩恵は「普遍的」でなければならない。つまり「支援を受けるにふさわしい貧しい人々」だけではなく、すべての人々を給付の対象としなければならない。


英米型モデルが改革への唯一の道ではない。むろん北欧型の路線についても同じことがいえる。日本は、世界各国の最善の方法の中から最良のものを見出し、選び取る必要がある。必要なのは、日本モデルに新しい活力を吹き込むことだ。


〔引用は以上 『週刊東洋経済』(2008年/12号)より


〔コメント〕

北欧の生産様式(経済の仕組み)は疑いなく「資本制生産様式」なのですが、『スウェーデンの挑戦』(岩波新書)で著者の岡沢は次のように述べています。
 「“スウェーデンモデル”は資本主義と社会主義を統合する試みとも定義できる。市場メカニズムに規制され、世界市場を指向する生産システムの果実を享受しながら、同時に、その利益を「連帯」「公正」というスウェーデン本来の目標を基礎に分配することである、」と。
 これを読む限りでは、利益(経済成長)は目的ではなく「手段」として位置づけられており、「人間が利潤追求の手段として物あつかいされる状況」をかなりの程度克服していると考えられます。


 資本の論理に従わなければ経済成長するはずがない、といった新自由主義の経済学者が主張する「常識」を打ち破ったところに北欧社会の大きな意義があるのではないでしょうか。