特別支援教育と集団づくり | 「しょう」のブログ(2)

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 「生活指導」という言葉は戦前、綴方教師の峰地光重がはじめて用いたといわれますが、「生活そのもの(それを綴り意識すること)が子どもたちを成長させる」というイメージです。当面、「生活指導」や「生活綴方」を中心に書いていきたいと思います。

支援を必要とする子どもが通う通常学級における教育条件整備について

 特別支援教育にかかわる学習をする中で、発達障害のある子どもや不登校傾向のある子どもなど、支援を必要とする子どもが通うすべての通常学級において、行き届いた適切な教育が行われるためには、下記の諸点が大切であると考えるにいたりました。



         記

1、各校の特別支援教育担当教員が学級担任などの職員を対象に、有効なコンサルテーション(相談、協議)ができる体制づくりを目指して以下の点に取り組むこと。

①県立学校および義務教育の諸学校について、特別支援教育担当(高等学校の場合教育相談部)の部員を増員する。

特別支援教育担当者の研修体制をよりいっそう充実させる。とりわけ、一人ひとりの理解と個別支援の方法にとどまることなく、クラスづくり、集団づくりの観点を研修に盛り込む。

2、全職員が受講する特別支援教育の研修会において、上記②と同様に、クラスづくり、集団づくりの観点を内容に盛り込むこと。

〔意見の趣旨〕


1)特別支援教育において、クラスづくりなど集団づくりの観点が大切であることは、複数の専門家の指摘するところである〔下記資料〕。色々な仲間を理解し共存していく姿勢をすべての子どもたちに育てていくためにも、高機能自閉症児・不登校傾向の児童を含む「支援を要する子どもたち」の自尊心を高め、成長を促していくためにも大切な観点であろう。

2)また、論文「リーダーシップ類型に配慮したコンサルテーション」〔LD研究〕  にも明記されているように、クラスという集団に対して教職員が適切なリーダーシップを発揮することで、お互いを理解しあい支えあう関係が育っていくことが確認されている。

3)上記2)で注目すべきことは、担任を対象とするコンサルテーションによって、子どもたちが支え合う方向にクラスが成長していったことである。

 そのようなコンサルテーションは学校外の「専門家」とは別に、該当の担任を知る校内の職員(特別支援教育担当など)が行うことによる効果も大きいと期待される。したがって、その人員増・研修体制の充実など、クラスの変容につながるコンサルテーションが可能となる条件整備を進めていくことが大切である。

4)学校現場では、ともすれば、特別支援教育を「個別支援」としてのみ理解する傾向や、「特別支援教育担当」に任せる空気も生まれる危険性がある。それを克服していくためにも、担任の適切なリーダーシップの重要性や、クラスづくり・集団づくりの観点を共有できるような研修体制の充実が望まれる。


資料:『「自尊心」を大切にした高機能自閉症の理解と支援』有斐閣選書

別府 哲、小島道生 編 (引用と要約)

  

7章 学級集団での育ちと自尊心

1 個別指導と、学級集団づくりの中での指導

◆高機能自閉症児者に自尊心を育む意味

事例7-1 運動会の踊りの練習で耳を塞ぎ逃げ出す(聴覚過敏の)A君(134頁)

◆集団指導の必要性 ―自尊心と仲間関係―

 集団指導は「本来好ましくないが仕方なく」行われる「必要悪」か?

 「ここでは、高機能自閉症児の自尊心を高めるためにこそ、集団指導が必要であると考える。それは、高機能自閉症児の自尊心の低さが、仲間がいないことや仲間とうまくかかわれず孤独感を感じることと強く関連している」から。

 自閉症児の自尊心を高めるためには、自分に対するポジティブな評価を持つ仲間関係をつくりだすことが重要となるのである。(135~136頁)

◆高機能自閉症児の支援と学級集団支援の関係

 「できる自分」だけでなく「できない自分」も仲間から認められていると感じられる学級集団の形成が重要であることを述べた。それではそういった学級集団づくりにはどんなことが必要なのだろうか。

 高機能自閉症児も定型発達児もともに、自分がこの学級で大切にされている感覚を持てるクラスにすることが大切である。(141頁)

◆同化・排除の集団でなく、異質・共同の集団を(143頁)

異質を認め、異質なものをもっているもの同士が共同する集団を

A君のクラスでの集団づくりは、異質・共同の集団づくりであった。そこでは、A君が持っている高機能自閉症という障害(特徴)をなくすべきものととらえるのではなく、無視するのでもなく、障害を持っていない子も含めてみんなが持っている異質さととらえ認めるところから出発している。

 これは、異質さを認めることにとどまらず、当事者が感じていること(聴覚過敏で大きな音が恐ろしい)を自分の身に引きつけて共感的に理解することでもあった。

 ここではそれを担任教師がA君の気持ちを代弁することで行った。(事例145頁)

 加えて、横断幕の絵を描くというA君の役割をつくったことは大切な意味を持つ。それはA君の高機能自閉症児としての特徴に配慮しながら、彼が運動会の踊りを「共同」してつくりだす一員であることを実感できる取り組みだったからである。・・・

 たとえ参加できなくても一緒に踊りという活動に取り組めた感覚をA君はもちろんだが、ほかの仲間も感じることができたことが重要なのである。

 このように、高機能自閉症児が「異質」さを共感的に認められ、そのうえで「共同」できる達成感を感じられる経験は、・・・確実に・・・定型発達児の集団に入っていきたい意欲を育むことにつながると考えられる。

 「両者の関係を媒介し活動をつくりだす」

 高機能自閉症児の言動に、その子にとっては必然的な理由(意味)があることを、当事者はもちろん、周りの子にも納得できるように大人が代弁して伝えること。

 そのうえで両者がそれぞれの形で「共同」できる活動を創造することが求められる。

これは定型発達児同士においても、互いにもっている異質さを受け入れ協同する仲間関係を形成していく契機となる。(146~148頁)

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