「男の子、流産してませんか?
生きていたら 10代の男の子」
そう尋ねると、その方は、
10数年前に流産していると言います。
どうやらその子は、
こちら側の世界では無い
あちら側の見えない世界の中で、
年が経つたびに
大きく成長していたようでした。
きっと、
お母さんやお父さんの思いが、
この子を大きくさせてくれたのかな。
「あの子が生きていれば」
お父さんと口喧嘩するたびに、
今はもう生きていない
その子のことを思って、
何度も何度も涙を流したのかもしれない。
そんな想いは、
誰も知らないと思っていたのに、
亡くなった子どもは、
静かにお母さんを
見守っていたようでした。
「泣かないで、お母さん。
僕はここにいるよ」
きっとその子は、
そんなふうに
いつも声をかけてくれていた。
それが、
時が経ってみれば、その子は
大きく成長して、
元気な10代の男の子の姿に
なっていたのです。
薄手の青いスウェーターを着て
お父さんに、お母さんに
話しかけて
暖かく見守ってくれているのです。
「一人じゃなかった。
ずっと一人だと思っていたけど、
いつも見守られていた。
この子は、いつもすぐそばにいた」
そんなふうに、
お母さんに安心してほしくて、
いつも一緒にいるということを
その子は知って欲しかったようでした。
亡くなった「いのち」は
消えて無くなってしまうわけではなくて、
こころは、想いは、
きっとすぐそばにいて、
見守ってくれていて、
困った時に、声をかけてくれるのです。
耳を澄ませて、聞いてあげると
「大丈夫だよ。安心して」
と聞こえてくる瞬間があるのです。