どれがお好き?

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昔話を元にした絵本はそれを伝える人に任されている部分があるからか、見比べてみると作者や挿絵、編集者ごとに演出が違います。

どこが違うのか。

並べて比べてみるのも、違う角度の絵本の楽しみ方ではないでしょうか。

 

今日紹介するのは、図書館で見つけた三冊。

どれも、ロシアの古典民話『うさぎのいえ』です。

 

作・絵: レーベデフ  訳: うちだ りさこ  出版社: 岩波書店

 

 

作: 内田 莉莎子  絵: 丸木 俊  出版社: 福音館書店

 

 

絵: エうフゲーニー・M・ラチョフ  監訳: 牧野原 羊子  出版社: カランダーシ出版

 

 

話のあらすじは、おおむねこんな感じです。

 『一軒の家でくらすウサギの元へキツネがやってきて、あの手この手で(ウサギは渋ります)家に入れてもらう。

 だがしかし、上がり込んだとたんキツネは豹変、家を乗っとる。

  泣いているウサギを見た他の動物たちが心配して声をかけ、顛末を聞いて憤り、そんなキツネ、追い出してやる!!と意気込んだものの、キツネの極道ぶりにしっぽを巻いて退散。

  最後に現れたオンドリは勇ましく一羽で狐に挑み、見事狐を追い出すことに成功。

  そして、ウサギとおんどりはキツネが出て行った家で末永く、仲良く暮らしましたとさ』

 

 三冊とも、『キツネがウサギの家を乗っとる』と『おんどりとウサギが仲良く暮らす』点だけが同じで、その間に現れる動物や脅し文句台詞はまちまちです。

 そして、キツネの凶暴ぶりも微妙に違う。

 いや、一つ、重要なことを忘れていました。

 キツネは、多分女性。

 残りの動物たちはみな男性です。

 しかも、キツネの怒鳴り声一つで皆退散するというすさまじさ。

 そこが、なんといっても今回のツボです(笑)。

 

 さて、見比べてみることとしましょう。

 お気づきでしょうが、岩波書店版と福音館版はどちらも同じ訳者さんです。

 内田 莉莎子さん。

 ロシア系文学の訳をされた方として、児童文学でよくお見かけします。

 それでも、随分違いがあります。
 

 岩波書店版は、氷の家に住むキツネと木の家に住むウサギ。

 春になると家が溶けてしまったキツネが、ウサギに間借りを願い出ることから始まります。

 乗っ取られた後、二匹の犬とクマが挑みますが、

 『よーし、とびだすぞ、とびかかるぞ!! 

おまえなんか こまぎりにして ばらまいてやるぞ!!』(原文引用)

というキツネのセリフに怯えて、一目散に逃げだします。

 それに対し、オンドリは

『こけこっこー! 

でっかい かまを かついできたぞ。

おまえのくびをちょんぎるぞ。

さあ、きつね、でていけ!』(原文引用)

 と叫んで見事撃退に成功。

 ロシアの絵本作家、レーベデフが1924年に発表した作品で、シンプルな暖かい挿絵と言葉で作られています。

 

 次に福音館版は、丸木俊さんの絵による演出で、随分様変わりしています。

 まず、キツネは氷の家に住んでおらず、さすらいの途中。雨に濡れた身体を温めさせてくれと頼むと、優しいウサギは何の警戒もせずに家に入れてしまいます。

 乗っ取られ、追い出されておいおい泣くウサギの前に現れたのは年取った犬。

 挑んで見たら、小屋の中からこんな声が。

『うーうーうー。

まっていろ、ずたずたに くいちぎってやるからな』(原文引用)

 それを聞いた途端、犬は

『うさぎくん、あれは はいいろおおかみらしいな・・・。(以下略)』(原文引用)

 僕には歯が立たないよと、ウサギにいいわけするのです。

 その後現れるヒツジも犬に同じ。

 ウサギが泣いていると、オンドリがあとを請け負います。 

 屋根に上って一声。

『こっけこっこう おてんとうさんがのぼったぞ

さあ かりゅうどが おめざめだ (以下略)』(原文引用)

 狩人がやってくると信じたキツネが退散し、平和が戻ります。

 この作品は、どちらかというと、だまし合い(キツネ:ハイイロオオカミのふり、オンドリ:狩人来訪)と言う形をとりました。

 想像上のハイイロオオカミがのびのびと描かれており、困惑している二匹の敗者と対照的で、そこが一番のミソかな?と私は思います。

 これもまた、丸木俊さんの挿絵ならではの演出です。

 

 最後に紹介するのは、出版年が一番新しい、カランダーシ版。

 ロシアの絵本をてがけておられる会社です。

 面白いことに、氷の家、木の家という出だしは岩波書店版と同じです。

 じわりじわりとウサギににじりより、占拠する点があくどさの極み。

 登場するのは、二匹の犬、ハイイロオオカミ、クマの順番で、

『わたしが そとに とびだせば、

あっというまに おまえを ひきさくさ!

そしたら、ちいさな けの かたまりが

こみちに とぶこふになるさ!』(原文引用)

・・・という恐ろしい脅し文句に、ひとたまりもありませんでした。

 何よりも、この作品のエフゲーニーの挿絵が大変愉快で、キツネの性悪ぶりがイキイキと描かれています。

ついでに、オンドリの勇姿を紹介しましょう。

『コケコッコー!コケコッコー!コケコッコー!

 ぼくは どうどう あるくのさ。

 じまんの ブーツで あるくのさ。

 かたに かつぐは おおきな かまだ。

 ずるい きつねを きりたいぞ。

さあさあ きつね! さっさと でてこい!』(原文引用)

 これまた、じわりじわりとキツネを攻めていくオンドリ。

 繰り返される台詞がリズム感があり、秀逸です。

 

 大勢を前にした読み聞かせ会に使いやすいのは、サイズも大きく絵も大きなカランダーシ版かなと思いますが、それぞれに味があって、十分楽しめるかと。

 三冊並べて、子供たちと検証会をするのも、良いかもしれませんね。

 

 挿絵一つ、台詞一つ、変わればまた楽しさも違う、民話絵本たちです。

 


 

 

 

 

 

 

 

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