「ご、ごめんな、さい、、」
咄嗟に潤の口から出た謝罪の言葉は、小さくて微かに震えていた。
そんなに強く言い過ぎたつもりはないが、逆に潤がここまで繊細なんだと分かって少し反省する。
まぁでも…M気質があるから、ちょっと盛ってるかも知れないけど。
…さて、目の前でビクビク怯えてる可愛い男をどうしようか。
フェ ラもしたし、前 戯はバッチリ。
でも、さっきも言った通り、初日から早速本番までぶっ放そうとは思ってない。
自分のやり方、スタイルとか色々考えておかないとな。
とりあえずキスでもしておくかと、顔を傾けて唇を近づけたところで、電子音が部屋に鳴り響いた。
「、、、」
まさかもう時間かと思ってサイドテーブルのタイマーを確認するも、まだ40分は残っていて、未だ数字が小さくなっていくまま。
じゃあなんだと思ったところで、「ぼくの、スマホです、、」と、小さな呟きが耳に入った。
「いいよ、出なよ。」
乗り上げていた潤の上から体を退かし、潤がベッドからよろよろと起き上がってカバンを漁ってスマホを取り出した。
「…もしもし。
、、、、、はい、はい、、いや、えっと、、ちょっと出かけていて、、、はい。え、、、」
ベッドの上からぼんやりと裸の後ろ姿を見つめていた。
ホント、綺麗な身体だなと思う。
うなじから足首まで、完璧じゃないところがないぐらいに。
肩幅は広いけど腰は綺麗にくびれていて、臀もキュッと引き締まっている。
肌質はふにふにと柔らかそうなのが見て取れて、、、
少し長めな首から肩にかけての緩やかなシルエット、くっきりとした肩甲骨、どちらかといえば下半身の方がボリューミーなその身体は、全体合わせて見た感じ骨格ウェーブかな。
ほら、最近流行りのさ。
そうそう、骨格ウェーブの人ってウエストのくびれも目立ちやすいらしいよ。
…とにかく、、、女性にばかり当てはまってしまうような言葉がスラスラと頭の中で思い浮かぶのも、彼が美しいことを表しているんだと思う。
女性にはこれ、男性にはこれ、みたいになんでも固定概念のまま押し付ける時代ではないけどね。
「………、はい、はい、分かりました。。。ちょっと待ってください、はい。すみません。
では…。」
耳元からスマホを離した潤。
はぁ、とひとつため息をついた。
「…ごめんなさい、翔さん。マネージャーから今直接会って話したいことがあるって。
もう、帰らないといけなくなっちゃったんだけど。。。」
振り返ってこちらを見た潤が、悲しそうに、申し訳無さそうに言った。
「あぁ。そういうことなら全然構わないよ。仕方のないことだし。」
「…もう、なんでこんな夜遅い時に、、、
ここに通ってることはもちろん伝えていないから、早く帰らないと…。ホント、ごめんなさい。」
潤が悪い訳でもないのに再び謝罪の言葉を口にすると、その辺に落ちていた服を集めて大急ぎで着始めた。
そんな様子を横目に俺はこっそり動いたままだったタイマーを止める。
「あ、、、お金…。
はい、これ1時間分の5万円です。」
「え、1時間もしてないのに?」
「いいんです。」
万札を5枚押し付けられ、後でフロントの方に渡しておいてください、と付け加えた。
「じゃ、、、」
「あ、送るよ。」
ニノに言われた。
見送りしろって。
部屋を出て、真っ直ぐ歩いた突き当たりに外へ出る裏口がある。
それがまぁ、VIP用の出入り口、って感じ?
ドアを開け、スタスタと歩いていく潤の背中をじっと見つめていた。
正直講評聞きたかったけど、急用なら仕方ないよな。