それはあまりにも突然のことだった。








ーーー


高校からの帰り道を歩いていたら、正面から目深に帽子を被り、うっすらと色の入ったメガネをかけ、黒い布製のマスクをした男性が、とある男の人と一緒に歩いてきた。


周りから随分浮いてて逆に目立ってる…何をそんなにバレたくないのか。

有名人が変装でもしているのか。


でも、俺には一瞬で分かった。

潤だ。


こんなところで何して、、、


そう聞こうと、通り過ぎていく潤を追いかけるも、連れのある男の人と一緒にいるし、、、なかなか話しかけにくい。

その連れの人はこの前のバー事件(勝手に名付けた)で一緒にいた人かと思ったけど、そうでもないっぽい。


この前の連れの人は潤よりも背が高かったけど、今一緒にいる人は潤よりも背が低い。


なんで…、顔がバレないようになんかしてるんだろう。


…もしかして、俺が帰りこの道を通ると分かっているから、俺にバレないように?


……なんで?

何をバレないようにしたかったの?


疑問がどんどんと渦を巻いて増えていくけれど、一向に潤には話しかけられない。

ストーカーのように、潤ともう1人から一定の距離を置き、バレないようについて行った。


やがて大通りから逸れ、小さな入り組んだ道へと入っていく2人。


どこに行くんだろう、と、疑問?好奇心?には抗えなかった。





…やめときゃよかった、こんなことを知ってしまうなら。





やがて2人はとある建物へと入っていった。

2人が建物へ入って行ったあと、正面からその建物を見る。


…………ここ、、、確実にラブホだ、、、、、


思わずその場に立ち尽くす。

外見は地味だけど、看板とかよく見たら、、、うん。


なんで、ラブホなんか、、、

しかもこの時間って、いつも俺にバイトって言ってるよね?


いや、、、ダメだ。


早とちりはやめよう。

この前バーでやっちゃったじゃん。


…もしかしたら、もしかしたら、えーっと、、、


…頭が混乱していて、自分を納得させようとする考えが思い浮かばない。

だって普通のホテルならまだしも、ラブホなら、やることは1つしかないだろ。


潤が、…あの男と、、、?


いやいや…。

邪念を振り払うようにして何度も首を横に振り、その場から駆け出した。


ーーー


猛ダッシュで家に帰って、身を投げるようにしてベッドに寝転がり、布団を頭から被る。


多分…休憩しに入ったんだろう。

…なんか、その、、いっぱい歩き回って疲れたけど、休むとこがなくて仕方なく、、、みたいな。


「…んな訳ないだろ、、、」


小さな呟きが零れる。

そしたら、潤はなんであんなに顔を隠していたのかってことになるよな。


…こうして今俺が悩みに悩んでる間に、後ろ姿しか見えなかったあの連れの男に抱 かれてる、もしくはあの男を抱 いているのかと思うと、酷く………チッ、くっそ…、


なにしてんだよ、潤。


ーーー


「…ただいまぁ。」


本屋のバイトは体調が悪いから休むと言い張って、ベッドの上で布団を被っていたら、いつしかすっかり夜になったのだろう。

玄関のドアがガチャリと開いて、潤ののんびりとした声が聞こえた。


もう、、、そんな時間?


「真っ暗、、、しょおくん流石に寝てるよね。」


独り言が多いうえにでかいのは潤あるあるだ。


「俺も風呂入ってさっさと寝よ。もう疲れた、、、」


疲れたのはバイトじゃなくて、男に抱 かれてたから?

それとも男を抱 いていたから?


とりあえず今日分かったのは、潤は俺に隠し事をしているかもしれないという事実だ。


あくまで…"かも"である。


まだ確かでは無い、けど。



でも、、、もう、、、、、