「さっきのあいつ、誰?」


「誰、って、、、、、、、、、、友達、だけ、ど。」


「…友達?……ホントに?なんでここに来たの?前話したばっかじゃん。ここのバーは、、、そういう系だって。アブナイって。そんな…友達と軽い気持ちで来たらダメだよ。」


もし、、、もし、来るとしたら、友達となんかじゃなくて、


「…なんで翔くんにそんなこと言われないといけないの?」


「…………は?
っ、そりゃ俺は潤のことが心配、」


「あ…、いやごめん…誤解招くような言い方した。
…さっきの人が友達ってことは間違いない。でも、バーに行こうよって誘われたから来た。まさか…ここのバーだなんて思わなかったよ。」


「…。」


「バーの名前言われても気づかなかった。…ま、そうだよね。僕、翔くんがどこのバーで働いてるか知らなかったし。」


もっと翔くんの話聞いておけば良かった、そう小さく呟く。


「……っごめん、、、俺、てっきり、!」


潤がソッチ系で、連れの人が恋人かと思った、なんて流石にさっきの智さんとのノリでは言えず、喉まで出かかったものが再び下りていく。


「ううん。ありがとう。…まさか友達と2人で出会いに来た訳じゃないよ。」


力なく笑う潤を見ると、ほんとに申し訳なくなってくる。


潤のこと好きってさっき気づいたとはいえ、早とちりし過ぎだよな。


「でも、今日は帰った方がいいよ。潤も…その友達、の人も。今日結構人いる方だし、みんな目光らせてるから。潤なんてすぐ食われる。」


「うん。でも翔くんのバイトする姿ちょっと見てみた、」


「ダメ!食われるってマジで。ホントに。潤なら秒で連れてかれるよ。お願いだから、」


「ふふ、分かった分かった…帰るよ。彼にも説明しておく。きっと出会い系だなんて知らないだろうから。」


どこで飲もっかなぁ、って呑気に呟く潤。


…とりあえず、俺がすぐに気づけて良かった。

もし気づけてなかったら、、、潤の笑顔、守れてなかったかも…しれない。



…って、俺は潤にとってのなんなんだよ。



その時俺はホッとしたけど、潤が2人で店に入って来た時、連れの男が潤の腰を抱いていたことはすっかり忘れてしまっていた。


ーーー


「…おかえり。」


なんだかとても疲れて、ため息をつきながらカウンター内に戻った。


「…ただいまです。」


「どうしたの、急に出てくからびっくりしたよ。」


「さっき話してた彼ですよ。」


「えっ、月の子?」


「そうです、月の子。」


言い方がツチノコと一緒なんだけど。


「連れに誘われて来たっぽいですけど、、、俺の働いてるバーがどこか知らなかったんで、気づかずに、、」


「えぇ、顔もっと近くで見たかったなぁ。こっからでもすっごい整った顔立ちの子ってことは分かったけど、細かなところまで見えなかった。」


「そういう問題じゃないですよ。
…もー…マジでギリギリセーフだった。」


「良かったね。間に合って。」


「言ったからもう大丈夫でしょう。」


「…なんか…、お母さんみたい。」


「へっ?」


「彼、大学生でしょ?翔くんのほうが年下なのに、めちゃくちゃ世話焼くじゃん。」


「だって、それは、、、」


「ま、さっき言ってたからだろうけど。
…翔くんはきっとお兄ちゃん気質なんだろうね。誰かを守ってあげたくなるっていうか。…いいんじゃない?金髪ピアスチャラチャラ男子高校生が大学生男性を助けるとかって、中々カッコイイことだと思うよ。BL漫画みたいで。」


なんだか、そんな風に真正面から言われると小っ恥ずかしくて、思わず目を逸らした。


「応援してあげるから。でもまずは相手の顔を知らないと。…ってことで、今度連れてきて。ここに…ここに、ね。」


「無理です。」


ここに連れてきたら…(以下略)


ーーー


「ただいまぁ、、、」


深夜1時を回った頃に帰宅。

もう色々あり過ぎてヘトヘト。


「じゅんー?帰ってるー?」


部屋は暗く、電気も付けられていないけど、、、とりあえず呼んでみる。


これでもし寝てて、起こしたらごめん。


…とか思っても、返事はなくて。


潤と喋りたかったな、なんて思ってリビングの電気をつけたら、ソファーに横たわる潤の姿が。


「うおっ、」


流石にビビった。


「………ん、、、、、あ、しょお、くん…おかえり、」


仰向けで寝ていた潤が、ゆっくりと瞼をあけた。