S side



雑誌の撮影を終えて、楽屋で帰り支度をしていると、マネージャーから潤が熱を出して倒れたという話を聞いた。


俺と潤が付き合ってるっていうことは、メンバーしか知らないから…何となく聞き流したけど。



マネージャーには自分のマンションまで送り届けてもらってから、すぐに支度をして車で潤のマンションへ向かった。



インターホンを押さずに合鍵で部屋に入る。



S「…潤?大丈夫か?」



声を掛けるも返事はない。


リビングを見渡してもその姿はないから、寝室の扉を開いた。



するとベッドで荒い息をして眠る潤の姿があった。



S「おい、潤。大丈夫か?」



M「…ん…。しょおくん…?」



頬を上気させ、とろんとした瞳でこちらを見つめてくる。



S「おい、大丈夫か?熱は?見舞いに来たけど?薬は飲んだ?あ、飯は?食欲はあるのか?」



M「…そんなに質問して…こないでよ…。」



S「あ、ごめん。」



M「熱は…測ってない…フラフラで、すぐベッドに、飛び込んで…。」



S「そうか、じゃあ測れ。ちょっと待ってて。今持ってくるから。」



そのまま寝室から出る。



…だめだ。やばい。



恋人が熱を出して苦しんでいるというのに…。



何だあれ…めっちゃエ ロくね。


舌っ足らずでいつもより可愛さが激増してるんだが…。



襲いたいという気持ちを必死に抑えて、リビングの引き出しから体温計を取り出し、寝室に戻る。



S「ほら、熱測って。」



M「ありがと…。しょおくんはもう帰っていいよ。」



S「は?何言ってんの。」



M「だって…うつしちゃう…。」



S「ばーか。こんな状態のお前ほっといて帰れるかよ。」



M「…けど…。」



S「じゃあうつせよ。そしたら楽になるだろ?」



M「それはだめだよ。」



S「いいから。ちゃんと看病してやるからよ。」



M「…。」



S「で、食欲は?おかゆでも作るか?」



M「おかゆ…しょおくん作れるの…?」



S「……なんとかなるだろ。」



M「…じゃあ、お願いしようかな。」



S「よし、まかせろ。」



そう言って寝室を後にした。



ーーー



まかせろとは言ったものの…



S「おかゆってどうやって作るんだ?」



とりあえずクッ〇パッド検索してみる。



ふむふむ、必要なのは米、生姜…生姜?

生姜なんて、あんのか?



冷蔵庫を開けてみるも、生姜は流石にない。


あ、チューブならあるけど。…チューブじゃダメだよな。



買ってくるか…。



支度を整えて、寝室を覗く。



S「潤?買い出し行ってくるからちょっと待ってて。」



M「う、ん。気をつけてね…。」



ニコリと微笑んだ潤はまるで天使の様だった。



…あっぶねー。


心臓止まるところだった…。



S「お、おう。」



急いで車へ向かった。


このままだったらホントに心臓止まる。



ーーー



スーパーでは生姜の他にも、ゼリー飲料や冷えピタを買った。


少しでも早く帰ろうと常識の範囲内で車をとばしたから、30分でマンションに着くことが出来た。



S「潤、ただいま!今作るからな。あ、冷えピタ買ってきたから貼ってやるよ。ちょっと待って。」



ベッドの横でカバンを漁り、取り出した冷えピタをおでこに貼り付ける。



S「どう?少しは楽?」



M「うん、冷たい…。」



S「よし、良かった。じゃ、おかゆ作るからな。」



そのままキッチンへ向かった。



S「よし、やるか!」



気合いを入れてクッ〇パッドを見る。



S「生姜…生姜…。どうやって切るんだ?」



S「…米、米はこんぐらい?」



S「水は?どんぐらいだ…?」



S「えっと…何火?」



格闘すること30分…。



S「できた…。」



決してキレイとは言えないが、おかゆの様なものは出来た。


早速トレーに乗せて潤の元へ。



S「潤!おかゆできたぞ!」



M「あ、しょおくん…。結構遅かったね…。」



くっ…言い返せない…。



S「…まぁ、食べて食べて。」



潤が恐る恐る口へ運ぶ。



S「…どう?美味しい?」



M「おいし、い?」



S「え?」



何で最後が疑問詞なんだ?



M「んー…。世間一般からしてみると…美味しくはない、と思う。けど…食べれなくはないよ。」



S「何だよ…それ…。」



熱を出していようが、潤のポテンシャルは変わらないようだ。



M「…生姜は皮付きで入れたの…?それから、米と水の分量合ってる?かなりベチョベチョだけど…?」



S「だ、だって。そんな…。」



M「けど、嫌いじゃないよ。しょおくんの愛情が感じられるからね。」



そう言って潤はおかゆをさらに口へ運ぶ。


なんか…とりあえずは食べれるらしい。



M「ごちそうさま。」



潤の手元の皿には、おかゆは残ってなかった。



S「よかった…。とりあえずは薬飲めるな。ちょっと待ってて。水もってくる。」



M「うん。」



コップに水を注いで、解熱剤を持って寝室へ戻る。



S「はい。薬と水。これ飲んだら少しは良くなるだろ。」



M「…。」



薬とコップを渡すも、手に持ったまま一向に飲もうとしない。



S「どした?」



M「しょおくん、飲ませて?」



S「はっ?」



M「…おねがい?」



うっ…そんな上目遣いでお願いされたら…。



S「…断れる訳ねーじゃん…。」



強引に潤の手から薬とコップを奪う。


薬を口に放り込んでから、潤の唇に俺のを重ねた。