災害とその後の先読み心理学 | 言葉としぐさ、気持ちと表情、人を愛する喜びや悲しみ

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いにしえのしきたりや慣習、水や人との関係を通して、今の私たちが忘れている大切なこころについて感じ、人を思いやる心を持つために、相手の気持ちを理解する方法について心理学とも結びつけて考えてみたいと思います。

 

「災害とその後の先読み心理学」

 

 災害は私たちの生活に突如として訪れ、その影響は物理的な破壊だけでなく、心の中にも深い爪痕を残します。そして、災害後の復興や再生の過程において、人々の心理には特有の「先読み」が働きます。これを「先読み心理学」として捉え、災害がもたらす心理的な変化と、その後の行動予測について探ってみましょう。

 

 先読みには過去に積み重ねた経験を今に反映させることが最も大切なプロセスです。以前ある総理大臣が復興には「自助、共助、公助」が大事だといいましたが、順番が違います。公助があって共助が働き、自助はある程度災害が落ち着いて心に余裕が出来とき初めて働くものです。

 

 過去の様々な災害と復興の経験を国が活かすことができていない現状を、災害大国に生活する私たちにとって大きな問題として受け止める必要があるのです。              

 

災害直後の心理と先読み

 

 災害が発生すると、人々はまずショックや恐怖、不安に苛まれます。これは自然な反応であり、自己防衛本能が働いている証拠です。しかし、次第に人々は「次に何が起きるのか」「どう対応すればよいのか」という先読みを始めます。災害直後の心理的な先読みは、主に以下の要素に基づきます。

  • 安全確保のための行動: 災害直後、人々は自分や家族、愛する人々の安全を確保するために、迅速な判断を求められます。このとき、過去の経験や得た知識、また周囲の状況をもとにして「最悪の事態を避けるためには何をすべきか」という予測を立てます。この先読みは、避難や支援の選択に直接影響を与えます。

  • 情報収集と信頼の判断: 災害時には、正確な情報が極めて重要です。しかし、デマや誤報が流れることもあり、その中で「どの情報を信じるか」という心理的な先読みが求められます。特に混乱時には、信頼できるリーダーやメディアの情報に頼る傾向が強まりますが、この判断には過去の信頼関係や経験が大きく影響します。

災害後の復興期における先読み

 災害が過ぎ去り、復興が始まると、人々は新たな未来に向けた先読みを行います。この段階では、心理的な変化とともに、コミュニティや経済、個人のライフスタイルにも影響を及ぼす「先読み」が特徴的です。

  • 将来のリスク回避と備え: 一度災害を経験した人々は、次に備えるための行動をとることが一般的です。たとえば、防災グッズの準備や家の耐震化、避難経路の確認など、「次に来るかもしれない災害」に対して先読みをして行動します。この行動は、過去の恐怖体験に基づくものであり、心理的な不安感を和らげる効果もあります。

  • 再建と成長の可能性を見据えた行動: 復興の過程では、「この地域は将来どうなるのか」という長期的なビジョンが重要です。一部の人々は、災害による損失を乗り越えて新しいビジネスや生活スタイルを模索し、成長を見据えた行動を取ることがあります。逆に、過去の災害経験からくる先読みによって、他の場所へ移住したり、事業を縮小したりする決断を下す場合もあります。この選択は、未来に対する不安と希望のバランスが反映されています。

コミュニティの先読みと連帯感

 災害後のコミュニティには、共通の目標や課題に向けた連帯感が生まれることが多くあります。この連帯感は、「共に生き残った」という心理的な繋がりに基づき、未来への先読みを共有することで強化されます。

  • コミュニティの再構築: 災害後、人々は共同で復興を目指す過程で新たな関係性を築きます。ここでの先読みは、「どのように協力すればより早く、より良い結果が得られるか」というものです。リーダーシップや協力体制が重要視され、心理的には「私たちの未来をどう描くか」がコミュニティ全体で共有されます。

  • 脆弱性と支援の予測: 一方で、災害後のコミュニティはしばしば脆弱性を抱えており、「どこに支援が必要か」「どこが弱点か」という先読みも求められます。特に、災害に対するトラウマを抱える人々や高齢者、子どもなど、支援が必要な層に対する配慮が必要です。この先読みができるかどうかが、コミュニティ全体の回復力に大きな影響を与えます。

災害後の心理的成長と先読み

 災害を経験することで、人々は心理的に成長することがあります。この成長は、未来に対するよりポジティブな先読みを促進します。特に、過去の困難を乗り越えた経験は、次なる困難に対しても前向きに立ち向かう力を与えます。

  • レジリエンスの向上: 災害後に心理的なレジリエンス(回復力)が向上することがあります。これは、過去の経験に基づいて「困難を乗り越えられる」という自己効力感が高まるためです。こうした心理的な成長は、次に起こりうる災害や困難に対する先読みをより前向きに行うことに繋がります。

  • 意味の再構築: 災害後、多くの人が人生の意味や価値観を再構築する過程を経験します。このプロセスの中で、未来に向けた新しい目標やビジョンを先読みし、それに基づいた行動を取ることが増えます。これは、災害をきっかけにした心理的な「再生」と言えるでしょう。

結論

「災害とその後の先読み心理学」は、人間が困難な状況に直面した際にどのように未来を予測し、それに基づいて行動するかという側面を深く掘り下げるものです。災害後、人々は安全を確保するための短期的な先読みから、長期的な成長やコミュニティの再生を見据えた先読みまで、様々な心理的なプロセスを経て未来に立ち向かいます。これらの先読みは、過去の経験や周囲の環境、個々の心理的な強さに依存するため、個人や社会の回復に大きな影響を与えるのです。

 災害がもたらす挑戦の中で、未来をどう先読みし、行動していくかが、その後の人生やコミュニティの行方を左右する鍵となるのです。