ベートーベン作曲 交響曲第9番「合唱付き」は、クラシックの交響曲という範囲に絞っても、星の数ほどあるうちのone of themに過ぎないはずなんだけど、明らかに特別な曲です。その「特別扱い」されてきた歴史については、こちらの本に詳しく書かれているので、是非お読みください。クラシック音楽に興味がない人でも、歴史書として楽しめます。↓

 
私が高校生の時は、クラシックにはまるで興味が無くて、中でもベートーベンは音楽の授業で無理やり聴かされて、忍耐力養成みたいなイメージが抜けなくて、自ら聴くなんてあり得ない世界だったはずなんだけど、人間の好みって年齢と共に変わるんだな~(笑)。
大学生になって、たまたま劇のエキストラでオケのティンパニ奏者の役をやった時に、ほとんどエンドレス状態で聴かされ続けた6番「田園」が好きになりました。続いて7番、5番(運命)の順に「ベートーベンなかなかいいじゃん」と思ったな。初めて第九を聴きに行ったのは社会人1年目の24歳のときです。学校では吹奏楽部顧問になり、自分で稼いだお金で第九のチケット買って聴きに行くって、音楽愛好家の端くれとして当然の行動だ!みたいに思ったのだ。CDでもろくに聴いたことがなかった第九を、いきなりNHNホールでN響生演奏で味わった感想は…。ぶっちゃけ大満足で気に入ったんだけど、なんというか不思議な曲でした。特に4楽章。明らかにクライマックスに向かいながら、突然肩すかしを喰らい、そこから再び何かが始まったと思ったら、今度は別世界に連れて行かれて、無重力空間に放り投げられて、最後は光速で駆け抜ける、みたいな(笑)。
当時、モーツアルトの40番と41番も聴きまくってたんだけど、ああいう整然とした音楽と比べたら、第九は明らかにぶっ飛んでますが、それが病みつきになった要因の一つではある。あとは、何と言っても合唱団、ソリスト、オケが全力で高らかに歌い上げるあの雰囲気は、やっぱり特別で、ドハマリする人続出なの解る。麻薬みたいなもんだ(笑)。
 
以来、プロアマ合わせて何十回かは第九を聴きに行きましたが、自分が演奏者側にいたことはないんだよな。それが今回、ひょんなことから実現しました。↓
 
ひょんなことから、が最近増えて(笑)、多くは自分の好奇心が原動力になるんだけど、今回はいつものK田マエストロに誘われたからです。「川の無い場所に洪水を起こす」と言われるK田氏の誘いに乗り続けたら、普通は身体がもたないはずなんだけど、それに乗り続けた勇者たちだけが、新たな世界の扉を開き、夢を現実にできるのだ(笑)。
 
記念すべき初第九のパートは打楽器でした。私にとって打楽器は本籍地みたいなもので、気持ち的にも大歓迎でしたが、やはり初めてだと難しいもんだな。
 
第九に限らず、 オケの打楽器や金管て休みが多いのだ。吹奏楽の譜面だと休みといっても8小節とか16小節程度だけど、オケでは一桁違う。いやそれどころか、楽章まるまる休みなんてのもザラです。こうなると数えるのは不可能っていうより意味が無く、曲をちゃんと知っておいて、現在位置を把握しなくちゃいかん。で、数少ない出番は、ほぼ外すことが許されないような音ばっかりだ。昔の大作曲家たちが、いかに緻密な仕事をしてたかが伝わってきます。
 
ところで、私が「第九に出る」って言ったら、知人の多くは合唱団員として乗ると思ったようです。第九を歌う市民の会とか、あちこちにあるし、第九のステージに乗るというのは、合唱付きではない他の交響曲と比べて、圧倒的に参加の門戸が開かれてるよな。これも第九が特別な1曲である理由だ。
 
↑リハーサル風景。矢印が私
 
会場は三鷹の明星(みょうじょう)学園小中の体育館。オケ60人とソリスト4人、合唱団員100人。客席は満席。第九のクライマックスでは、自分もアドレナリン出まくるの解りました。うむ、これはやっぱり凄い曲だよな。こういう感覚は味わったことない。麻薬だ(笑)。
 
打ち上げの席では、このイベントの仕掛け人たちとお話できました。K田マエストロはもちろんですが、明星学園関係者の方々も、一様にエネルギッシュでした。非常に個性的な校風も関係してるかも。実際、面白い卒業生をたくさん輩出してるし、何をかくそうこの私もそんな校風に惹かれて、中3の時は自分で決めて明星学園を受験したもんな。経済的な理由で都立に行くことになったけど、もし明星学園に進学してたら、私はその後どんな大物になってただろうと思うと、ちょっともったいない(笑)。
 
最後に・・・。人はエネルギーのある所に集まり、人を集めるにはエネルギーが必要です。エネルギーは通常の量では足りず、現状打破できる量が無いとダメだ。安全運転でありきたりのイベントを目指しても人は魅力を感じてくれません。突拍子もないプランをぶち上げることで、刺激を求めたり夢を追いたい人が集まってくるんだよな。今回集まったムジカプロムナードというオーケストラと、明星学園の人々を見て、そんなことを思いました。