我が団は上を目指すのか、さもなくば楽しくやるのか!こんな議論が始まると、何となくゼロ百みたいに捉えがちですが、実際は8対2でガチとか、3対7で緩い方寄りって具合に、ブレンドされた感じだ。いくら音程は気にしないで元気良くやろうぜ!って言っても、曲の原形をとどめないくらいハチャメチャだったら、さすがに何とかしろよって言いたくなる(笑)。

 

私がまだ20代前半の頃、近所の中学校に、指揮が御専門という方が、音楽の講師で赴任されました。ウィーンで修行したとか、なんか凄い経歴でしたが、市民文化祭でご一緒した時に初めてその先生の指揮を見て、スゲ~!と思いました。曲はヴェルディの「運命の力」。ところが一つ大きな問題は、中学生の音程が悪すぎて、本当に原形をとどめないレベル(笑)。先生はプロオケばかり振って来たせいか、各楽器の奏法までは指導してなくて、っていうか多分教えられないと思う。だから、指揮は凄くかっこいいし、生徒もよく反応していて楽しく吹いてるし、迫力溢れる演奏なんだけど、音だけがひたすら外れまくる。私は市民吹奏楽団の指揮者だったので、この先生に「市内で指揮者講習会を開いていただけませんか」とお願いしたんだけど、あっさり断られました。「ははは、それは無駄だよ。指揮というのは天性の物なので、教えてどうにかなるものじゃない」って、何じゃそりゃあぁぁっ!(泣笑)

 

中学生の音程の悪さを批判する私ですが、まさに、目クソ鼻クソを笑うってやつだ。私が所属する市民バンドにも、国際的に活躍していた指揮者がふらりと遊びに来てくださったことがあります。先程の先生とは違う方ですが、曲は偶然にも「運命の力」。この時の衝撃も忘れられん。この頃私はポップスばかり指揮していて、運力(運命の力)では奏者側にいたのですが、音楽が一瞬で変わってしまい、うちの楽団がこんな音が出せたのか~って驚いたな。運力と、あとはシベリウスのカレリア組曲のマーチを、1時間くらい診ていただいて、最後にいただいたアドバイス。「皆さんの音は合ってない。ハッキリ言いますが、恐ろしく音程が悪いです。でもお客さんを惹きつける音楽は作れます」 確かにこの日の合奏では、音程の事は一切言われなかったけど、こんなに生き生きとした音楽になったよな。ううう、何て素晴らしい指揮者なんだろう。帰り際に、一応役員の私から個人的に質問させていただきました。「今日はありがとうございました。うちのバンドをご覧いただいて、何か改善すべき点などお気づきになられたら、アドバイスいただけませんか?」

先生の答はビックリするほど簡単でした。「うん、指揮者を何とかした方がいいよ」 ううう、指揮者しだいで音楽はどうにでもなってしまう、ってことか。肝に銘じます。

 ところでこの先生は、音大にも教えに行っていて、たまたま2つ上の音大生の先輩が、この先生の指揮でオーケストラの授業を受けたのだそうです。話を聞いてビックリでした。レッスンは音程の指摘のみ。先輩曰く「赤上げて、白下げて、みたいなのが延々と続いただけで終わったわ」とのこと。そうか、上を目指す集団にはそれなりのやり方で臨むってことか。

 

現在の自分のバンドに話を戻すと、ううむ、隔週という練習ペースを考えると、余り細かいことを指摘しても定着しないよな。かと言って、先ほどから登場する「原形をとどめない演奏」は許せん(笑)。常にその辺の匙加減を考えながら合奏を進めて、臨機応変と言えば聞こえはいいけど、実際は右往左往だ(笑)。次回の合奏では、2人の国際級マエストロの下でスネアドラム叩いた思い出の曲「運命の力」を初見合奏します。この曲、木管は真っ黒で忙しいから、ラッパで乗るとするかな。来年10月6日、運力を聴きに来てください。