30年くらい前に60歳を迎えた先生方は、基本的に完全リタイアしていました。毎日おうちでゴロゴロするか、趣味に没頭するかは人それぞれ。退職した直後からちゃんと年金がもらえて、退職金も今の私たちより遥かに多くもらってたから、そんなバラ色生活が可能だったわけだ。我々の世代の殆どが再任用で働かざるをえないのは、年金支給開始が65歳だからで、働くことが特別好きだからではないです(笑)。たま~に完全リタイアする人もいるけど、よくよく聞いてみると、全く別の職業に移る・・・例えばお店を開くんだとか、或いは収益不動産を複数保有するとか、教員の再任用じゃない収入源を確保しているケースだ。そうじゃなかったら、退職金と貯金を食い潰しながら5年を生き延びるのは難しいと思います。

 

そんな可哀想な私たち(笑)ですが、東京都にひれ伏して「お願いです!働かせてください!」って感じかというと、実は逆なんだよな。東京都的には、僕らが一斉に「せーのっ!ハイ!リタイア!」ってやったら、学校は回らないのだ。僕らは低倍率の大量採用世代だから、みんなで辞めたら、そのぶん大量の新卒を採用しなくちゃならなくて、たぶん1校に5~6人、いやもっとかな、新人だらけになるのだ。だから、事あるごとに「再任用で働きましょう!」みたいなパンフレットが配られて、管理職による面接の時にも「直井さん、再任用、もちろんやりますよね!ねっ、ねっ」とか言われたんだけど、それにしちゃ不思議なことも・・・。

 再任用の申込書は、願書みたいになっていて、「お願いです、働かせてください」なんだよな。何なのこれ?だって、「再任用を希望する理由を書け」とかいう欄があるんだよな。これ「年金出なくて生きて行けないから」 または「上司から泣いて頼まれたから」って書けばいいの?(笑)。本当にそう書いてやろうかと思ったけど、一緒に定年を迎える同僚の先生から止められたので、思いとどまりました(笑)。ちなみにその先生は、「自分の経験を若手に伝えたい、とか書けばいいんじゃないの?」っておっしゃるから、「はい、それいただき~」 私もそう書きました(笑)。

 

 ここまで読まれた方は、私が「できることなら働きたくない」って考えてるように思われたかもしれません。でも実は逆で、再任用で仕事させてもらえることに感謝しています。

 その理由として、まずは我が家のメンバーの反響 → 私が定年後も普通に仕事を続けられることになったと発表したとき、家族は大喜び。息子には日頃から「お父さんは定年退職後は無収入になるので、君に養ってもらう。あと家のローンも引き継いでね」と言い聞かせてきて、どうやら真に受けてたフシがあるので、喜んだというよりホッとしてたな(笑)。

かみさんは純粋に喜んだろうな(笑)。私が完全オフの休日は、かみさんが操縦する掃除機から逃げ惑う状況があり、昼間の時間帯からピアノの取り合いになってたからな。仕事を続けることが、円満家庭の維持には不可欠だ(笑)。

 次は極めて真面目な話。60歳で完全リタイアした先生方の中で、心身の健康を維持できなくなる人を、少なからず見てきました。教員は激務だけど、やりがいに溢れる仕事なんだろうな。←まるで他人事(笑)。それが、ある日を境にサンデー毎日の生活が始まるとどうなるか・・・。定年退職から数か月後に会った何人かの先輩は、明らかに寂しそうで元気がありませんでした。気持ちの落ち込みは即、身体にも影響してきます。60代前半、特に61歳とか62歳で亡くなった先生が、私が凄くお世話になった先輩の中だけで

4人いらっしゃいます。今思えば、あの先輩方も再任用で働いていたら、ずっと元気でいられたような気がしてなりません。

 

 というわけで、今まで通りの仕事ができることに感謝してますが、15日にいただく給与明細は怖いな。噂によれば、退職前に比べて6割くらいに減って、なおかつ、住民税は前年までの「高給取り時代」の収入で課税されるから、ビックリするくらいの減額になるらしい(泣)。先輩方のお話を聞くと、その明細を貰った瞬間に、モチベーション激下がるんだって(泣)。ううう、見たくない・・・。こりゃあ、今まで以上にギャンブルを頑張る必要があるな(笑)。

 

 最後に、これを読んだ若手の皆さん!あなた方は何も心配することはありませんよ。定年の年齢が段階的に繰り下げられるんだから、今30代の皆さんは、たぶん90歳定年だよな。再任用なんて言葉は死語になるだろうな。健康のためだ、頑張ろう!なんか無責任発言っぽいけど、そんなことはない。私ももし元気だったら、90歳まで非常勤講師とかやりますよ。