登山好きの人に向かって、「あなたはなぜ山に登るのか?」と尋ねたところ、多くの登山家は「そこに山があるからだ」と答えるそうです。「そこにワラビが生えているからだ」って答えた人もいたようだが、これは少数派だ。だって、エベレストを始めとする世界の難関に挑む人々の目的が、ワラビ採りとは到底思えん。

 

 ただ、「そこに山があるから」は、いささかかっこつけ過ぎだし、そもそも答えになってない。だって、私も含め世の大半の人々は、そこに山があったって登らないもん(笑)。だからこそ、登山の魅力は何なんですか?っていうつもりで訊いてるのに、「山があるから」は無いよな。まあ百歩譲って、「山に関するすべてが、登山の魅力だ」っていう気持ちをこめた言葉なんだろうけど、だったらかっこつけずに、そう言えばいいじゃん。少なくとも私は、「なぜ楽器を練習するのか?」って訊かれて、「そこに楽器があるからだ」とは答えません。じゃあ何なのよってところを、本日はお伝えしよう。

 

 なぜ楽器を練習するのか・・・。料理を例にとると、誰かが作ってくれたものを美味しくいただくことだけが好きな人と、自分でも作るのが好き、という人がいます。音楽もまったく同じで、聴くだけで十分満足な人と、自分でも演奏したい人がいるわけだ。私の場合は完全に後者だということです。

 では、なぜ自分で作りたいのか、というところまで掘り下げると、私は完全に自分好みの味にカスタマイズしたいからなのだ。料理が趣味という人も、自分の一番好きな味にするために、わざわざオリジナル料理を作るのだと思います。

 最近はYouTubeという新兵器のおかげで、一つの曲の何十通りもの演奏を瞬時に比較出来たりするけど、そういう演奏比較はLPレコード時代からやっていました。100%気に入った演奏ばかりに巡り合えるなら、たぶん自分で演奏しようという動機は減衰しますが、前半部分はポリーニ推しだが、後半部分はアルゲリッチが好みだ、なんてことが殆どでしょう。こういう場合に、自分で弾けるようにして、完全に自分好みの1曲に作り上げちゃえばいいわけだ。もちろん、そんな世界のトッププレイヤーみたいには弾けないけど、プロの演奏で「ここちょっと自分の解釈と違う」って思いながら聴くよりも、下手だけど「自分ならこう弾きたい」っていう形を実現できることが楽しいです。

 

 まあ、そういった「曲の解釈」みたいなのを抜きにしても、自分で演奏する快感はあります。自分でも聴き惚れちゃうような音楽が、自分の手で発せられるのは、何とも言えない快感だ。聴き惚れちゃうような音を出すのは難しいですが、実は意外と簡単な場合もあるのだ。私の「演奏快感BEST3」を発表しよう(笑)。

 

★第3位・・・吹奏楽の指揮

 基本的に音程七色、出だしは時間差攻撃で、合ってないないないない、のないないづくしなんだけど(笑)、時たまめちゃくちゃ良い響きが出る瞬間も訪れるんだよな。曲全体じゃなくて、ほんの瞬間(笑)。それでも、「うぉ~、今の響きはオレ様の指揮棒の合図によって発せられたんだよな」って思うと嬉しくなります。いや~、自分は音を出さないくせに、自分が作った響きだって思えるって、超お得な立場だな。やっぱり指揮者はずるいです(笑)。

 

★第2位・・・グランドピアノを両手でズコーん!

 ピアノって、殺人事件まで起きるくらいの、けっこうな大音量が出ます。グランドピアノの低音域をガーンて鳴らした時の快感はクセになるな。アップライトピアノの音は全然好きになれない。音が飛ぶ方向のせいなのか、アップライトの音は、突き刺すような感じで心地よくないんだよな。グランドピアノのぐわわわ~んって拡がる感じの方がいいです。

 ベートーベンの悲愴ソナタは、まだ全曲通しで弾けてないけど、1楽章の最初の1音だけならプロ級の演奏ができます(笑)。ここ快感なんだよな~。あと、展覧会の絵の一番最後の方の、両手の全部の指が参加して弾く和音がたまらん。これだけで、日頃のストレスがすっ飛んで行くようです。

 

★第1位・・・パイプオルガン

 結婚式場のチャペルで一度だけ、実物を弾かせてもらう経験をさせてもらいましたが、これ以上の快感は無いであろう。建物全体が鳴ってるんだけど、音色は楽器の音そのもので、弾き手による個人差は無いに等しいから、私が鍵盤を押すたびに、プロ奏者と同じ音色音量が聴衆に降り注ぎます。弾きながら「ううう、いい曲~、いい音~、これ、この僕が出してるんだよね、そうだよね、そうなんだよね」って、ず~っと思ってました(笑)。

 披露宴での演奏はしょうっちゅうで、今後もあるだろうけど、チャペルの式でオルガンは二度と無いだろうな(泣)。でもあれは絶対もう一度経験したいので、サンサーンスの交響曲3番でオルガン担当することを、究極の目標に設定します(笑)。

 

 まあ、登山も楽器も、結局は自己満足だよな。「人に勇気と元気を与える」って、結果そうなればめでたしだけど、まずは自分が感動するために努力すればいいと思います。

 

 あ、バイオリンがBEST3に入ってないから、補足しておこう。バイオリンは、まだまだ自分好みの音色が出せていないけど、理想のイメージはあります。大学生の時に「セロ弾きのゴーシュ」(演劇)に楽団員役でエキストラ出演したのですが、その時のバイオリン奏者の音を間近で聴いたのが一発目の衝撃。次は通りかかった立川駅の南口で聴いた路上ライブ。録音のピアノ伴奏に合わせてクラシック曲ばかり弾く人だったけど、立ち止まって最後まで聞いちゃった・・・これが二発目。、で7年前のクリスマスコンサートで至近距離で聴いた、まなみさんのチャルダッシュが三発目。

 自分でもあんな音を出せるようになりたいな~と思って、バイオリン練習がんばってます。おかげさまで、最近はレッスンで毎週のように先生が「そぉ~です!」を叫んでくれるようになりました。

 

 そこに楽器があるから、ではありません(笑)。自分を感動させる音楽を、自分で作りたいから練習しています。明日は久しぶりにジャズのビッグバンドでピアノを拝命したので、頭の中を切り替えて頑張ってきます。

 

【本日の手口】 日本駐車場開発 ナンピン買い注文5000株141円で出すも約定せず。ううう、週明けもっと下がれ~と呪いの念力を送ろう(笑)。