今日も授業で使った題材を紹介する内容です。高校生物を学んだり教えたりする必要性に直面していない人は、読む価値ナシ(笑)。

 1974年に日野六小を卒業して、日野四中に進んだ人々は、あるパーフェクトヒューマンを覚えておられるに違いない。勉強がトップなだけでなく、野球部の主砲で、ピアノも弾けちゃう、それで性格優しくてかっこいい。彼の名はT也くん。同世代の僕らは、親から日常的に「T也くんの爪の垢を煎じて飲め!」と言われながら育ったので、それでこの言い回しを覚えたのです(笑)。生徒にこの話をすると、大きな共感を得られます。人々の多くは、小中学校時代にパーフェクトヒューマンの前にひれ伏した経験を持ってるものなんだよな。

 本題にまいりましょう。爪の垢を煎じて飲むという行為は、生物学的にはどうなんだろう?そこで問題です。「藤井四段の爪の垢を煎じて飲んだら、少しは将棋が強くなりますか?」 若干意見が分かれるものの、多くの生徒はNoを選びます。「爪の垢でその人っぽくなれるんなら、アイドルの垢が高値で売られるんじゃね?」なんていう鋭い意見も(笑)。もちろん正解はNo!T也くんの爪の垢を・・・っていうのは、彼の努力や生活態度を見習えっていう比喩であって、本当に飲んだらお腹こわすだけです。な~んだ、つまんね~の。

 いや、ところが、微生物の世界となると話は全く別で、爪の垢で本当に強くなる連中がいるんですよ。肺炎双球菌には、強いS型と弱いR型がいるのですが、弱いR型に強いS型の絞り汁っていうか煮汁を与えると、R型がS型に変身するんですよ。S型はもちろん煮られちゃったから生きてるわけありません。まさに、強いS型菌を煎じて飲んだら、本当に強くなれちゃったんですね。この「形質転換」という現象を初めて見つけたのは、グリフィスという科学者です。S型汁の中に、強いS型の身体を作るための設計図が入っていた、と考えられますが、設計図の正体が何なのかは謎でした。

 アベリー(エイブリーって書いてある本も多い)は、設計図つまり遺伝子の正体を突き止めようとしました。S型汁に含まれているであろう、タンパク質とDNAのどっちかが、設計図として機能しているはずです。いつものように擬人化すると、事件現場近くに丹伯くんとディ奈ちゃんがいて、どっちが犯人か突き止めようってことね。毎日教室の黒板が落書きされてて、教室の前にはいつもこの二人がいる。どっちが犯人なのって聞いても、お互いに相手を指さすだけ。さぁ、どうする、探偵アベリー。(続く・・・笑)