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エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

某週刊誌のコラムで、小林信彦が『モテキ』の感想を書いていた。


その中にこんな文章が。



【ぼくは映画は女優で観ると公言している。

仲里依紗について大根監督は『純喫茶磯辺』の彼女を高く買っていたという。
ぼくは『純喫茶磯辺』の仲里依紗のコミカルな演技とペーソスが好きで、他人にもそう言うのだが、誰も観ていない。】




たしかに……『純喫茶磯辺』を観ている人は、そんなに多くないのかも?



小林信彦は仲さんがお気に入りなのか(?)『時かけ』や『ゼブラーマン2』の時も、仲さんを絶賛するコラムを書いていました。


『FLOWERS -フラワーズ-』


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【出演】
蒼井優、鈴木京香、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子、真野響子、塩見三省、三浦貴大、大沢たかお、河本準一、長門裕之、井ノ原快彦、平田満、不破万作、蛍雪次朗、梅津栄


【監督】
小泉徳宏




“それは、一本の糸で結ばれていた”




昭和11年、春。
日本古来からの仕切りで、親同士が決めた結婚に悩み続ける凛。


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凛は未だ会ったことの無い相手への不安などを抱えたまま結婚式前日を迎えた。

式当日、結論を出せない凛は、花嫁姿のまま家を飛び出してしまう。


昭和30年代、夏。

約20年が経ち……凛は、3人の娘を授かっていた。

長女の薫は、夫を交通事故で亡くし、その事実を受け入れられず、亡き夫との思い出となった新婚旅行の場所を巡る旅に出る。


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次女の翠は、当時はまだ珍しいキャリアウーマンとして出版社で働いていた。


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そんな中、翠は恋人からプロポーズされるが、今まで男性社会の中で一生懸命働いてきた彼女の心は仕事と結婚の間で揺れ始める。


昭和50年代、秋。

凛の三女・慧は夫と娘の奏の3人で幸せな生活を送っていた。
しかし、慧が2人目の子供を妊娠したことで家族の生活に変化が見え始める。


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生まれつき体が丈夫ではない慧は、医師から「出産には耐えられない」と宣告されたのだ。


平成21年、冬。

慧の長女・奏はピアニストになる夢を叶えるため上京するも、その才能に限界を感じていた。
さらに、年下の恋人と別れた直後に妊娠していることが判明し、2つの悩みを抱え苦しむ日々を送る。


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一方、次女の佳は結婚し、男の子を産んだ。
根っから明るく振舞う佳は、母・慧の分まで前向きに生きようという強い想いが心の中にあった。


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「娘と母、父と母、夫と妻、姉と妹、母と子」をテーマに、昭和初期から現代までを4つに分け、それぞれの時代を生きた6人の女性の姿を描いた大河ドラマ。


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どのような状況にあっても前向きに、芯のある凛とした美しさを咲き誇る6輪の花たち。
日本女性であることの誇りや自身、美しさを感じさせてくれます。


昭和11年代から現在まで、三世代の日本女性の恋や美を描き、6人の女性たちが、それぞれの生きる時代の中で懸命に自分の生きる道を模索していく姿が情緒溢れる演出で綴られてゆく。


見どころは、凝った映像の数々。

昭和11年の場面では、モノクロのやわらかい映像。(小津を意識したかのようなカメラアングルの場面も)

昭和40~50年代は、当時の映画を彷彿とさせるテクニカラーの色調を見事に再現!

そして平成の現代は、ブルー調の抑えた色合いでと、それぞれの時代に合わせた映像表現がユニーク。


竹内結子と大沢たかおが新婚旅行に行くエピソードが印象的。
楽しい旅行のはずなのに、どこか妙な違和感が付き纏う。
その真実は、あまりにも切ない。


一番の儲け役は田中麗奈?(出演シーンも一番多かったような?)

気が強くて男勝りの女性を溌剌と演じていて、それが見事にハマっていた。
ただ、次長課長の河本と結婚するのは納得がいかないが(笑)。


『ガチ☆ボーイ』で仲里依紗を自転車で走らせた小泉監督。今作では6人の女優を自分の足で走らせる。

小泉作品のキーワードは、‘女性が走る’……か?



それにしても、こんなに美形揃いの家系はそうそうないだろうな……などと思いつつ、6人の豪華女優共演に酔いしれました。


『イキガミ』


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【出演】
松田翔太、塚本高史、成海璃子、山田孝之、柄本明、劇団ひとり、金井勇太、佐野和真、井川遥、笹野高史、塩見三省、風吹ジュン、りりィ、山崎裕太、徳井優、江口のりこ、角替和枝、でんでん、諏訪太朗


【監督】
瀧本智行




“人生最期の24時間。あなたは誰のために生きますか?”




「国家繁栄維持法」により、国民の‘生命の価値’を高めることが、社会の生産性を向上させると信じられている世界。

「国民に死の恐怖を植え付け生命の価値に対する国民の意識を高めることが、犯罪を抑止し社会の生産性を向上させるのです!」


その一方、この法律に少しでも疑問を抱く者は、国家によって「退廃思想者」として厳正に‘処置’される運命にあった。

小学校入学直前にすべての児童に行われる国繁予防接種。

そのアンプルには1000人に1人の確率で特殊なナノ・カプセルが仕込まれており、そのカプセルが18歳から24歳までの若者の体内で、あらかじめ設定された日時に肺動脈内で自動的に破裂し、その命を奪う!

そして、カプセルが誰の体内にあり、いつ破裂するのかは国家だけが知っている。

つまり、1000人に1人の確率で選ばれた若者の誰かは、18歳から24歳の間に確実に死ぬのだ!


厚生保健省の国家公務員・藤本賢吾の仕事は、政府より発行された死亡予告証:通称‘逝紙(イキガミ)’を国家繁栄のため栄誉ある国繁死亡者に配達すること、すなわち死亡宣告を下すことだった。


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「死亡予告書をお届けに上がりました」


藤本は‘名誉ある仕事’であるイキガミ配達業務を全うしようとしていたが……。


藤本がイキガミを渡す相手は3人。


初のテレビ出演を翌日に控えたギタリストの田辺翼。


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彼は元々は、親友の秀和とコンビを組み路上で歌っていたのだが、翼ひとりだけがスカウトされ、事務所に決められたボーカリストとデュオを組まされ、本当に歌いたい曲が歌わせてもらえず悩んでいた。

そんな時、イキガミを受け取り……翼は最初で最期のテレビ出演で、あっと驚くサプライズを敢行する。


国家繁栄維持法を支持する女性議員の滝沢和子は、イキガミが届いた息子の直樹を自らの選挙戦に利用しようとする。


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政治家である母親の過度な期待から思春期にひきこもりとなっていた直樹は、イキガミを受け取ったその夜、警官の拳銃を奪い逃走。
そして人生の残りわずかな時間で選挙演説中の母親に復讐を果たそうとするが……。


幼い頃に両親を交通事故で亡くした飯塚さくらは、その事故がもとで視力を失ってしまった。


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兄のさとしは、家計を支えるため今では法に触れる恐喝まがいの仕事に手を染めていた。

施設にいる最愛の妹と一緒に暮らすという夢がやっと叶うその直前、さとしにイキガミが届く。

残り24時間……さとしは盲目の妹のためにイキガミのことを秘密にしたまま自らの角膜を妹に移植しようとするが……それを察知し疑ったさくらは、手術を拒否。

さとしは、さくらに手術を受けさせようと、ある‘嘘’をつくことにする……美しくも哀しい嘘を……。


そして、自らが配達した3つのイキガミを通じて、それぞれの最期の24時間の生命の輝きを目の当たりにした藤本は、次第に自分の心の奥底に何か説明しがたい葛藤が渦巻いていることに気づく。

対象者への干渉を国家から厳重に禁止されているにもかかわらず、その想いは抑えがたいほどに高まっていくのだった。




イキガミを取り巻く様々な人間模様を描いた群像劇。



3人の若者がイキガミを渡され、それぞれの最後の24時間を通して生きるとはどういうことなのかを問いかけてくる。


藤本はあくまでも狂言回し的役柄で、主役は24時間以内に死ぬ運命にある3人。
この3人の物語がオムニバス形式で綴られていきます。


『シーサイドモーテル』では恋人同士を演じていた山田孝之と成海璃子は、この作品では兄妹役。

お互いを強く思いやる兄妹愛の姿は、ジーンときます。


それから笹野高史扮する厚生保健省課長の「常に全身全霊で生きていれば、人生は違ったはず」という台詞が印象的でした。


七三の髪型で全く笑顔を見せず、落ち着いた雰囲気の藤本役の松田翔太。 感情を押し殺しつつも、常に心に葛藤を抱えているという難役を見事に好演!