『バーバー吉野』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『バーバー吉野』


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【出演】
もたいまさこ、米田良、大川翔太、村松諒、宮尾真之介、石田法嗣、岡本奈月、桜井センリ、浅野和之、森下能幸、三浦誠己


【監督・脚本】
荻上直子




“あの春の数日間、僕たちは少しだけ大人になった”




山間の小さな田舎町。


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小学生の男の子たちの髪型は、町に一軒しかない床屋‘バーバー吉野’のおばちゃんが切る‘吉野ガリ’に統一するのが、その町の慣わし、伝統だ。


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前髪を一直線に切りそろえた妙ちくりんな超ダサい髪型。


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しかし、それを疑問に思う者は誰一人いなかった。


子供たちは、‘バーバー吉野’の前を通る時、店の前を掃除するおばちゃんに必ず挨拶をする。


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おばちゃんは、口うるさいが仕事は丁寧で、町の人からの信頼も厚く、学校帰りの子供たちにおやつをくれたりする……とてもいい人。


誰もが顔見知りで、夕方にはおばちゃんの町内放送が響き渡る。


そんなある日、東京からオシャレな茶髪の転校生・坂上クンがやって来た。

それを見た吉野慶太(おばちゃんの息子)、ヤジ、カワチン、グッチの心は騒ぐ。

「何だよ、あいつ。カッコつけやがって!」
「でもカッコイイなぁ」
「‘吉野ガリ’やめたら、俺もカッコよくなるかな?」


やがて何かが変わっていき……町全体を揺るがす問題へと発展してしまう。


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町中の少年が同じ髪形をしている田舎町で起きる騒動と、少年たちのささやかな成長をユーモラスに綴る青春ストーリー。


初恋や性の目覚め、大人への反抗心など思春期を迎える少年たちの心情を面白おかしくも繊細に、ほのぼのと描いていきます。


皆、同じおかっぱ頭にするのを全く疑問に思わなかった子供たちが、東京から来た転校生の今風の髪型を見たことから、自分たちも本当はこの髪型が大嫌いだったことに気付く。

「髪型は表現の自由だ!」

小さな町の純朴な少年たちが、様々な経験を通して成長していく過程を温かい視点から綴られている。


和製『スタンド・バイ・ミー』的雰囲気もあるこの作品。
突拍子もない発想ながら、小学生時代の甘酸っぱい気持ちも追体験させてくれて、笑わせながらも、伝統と個性、コミュニティの意味について考えさせもする内容となっています。



‘秘密基地’にエロ本を持ち込んで、「うわ~~スゲー!」と、みんなで回し見するするシーンが可笑しい。

ひとりの少年がポツリと言うこの台詞には大爆笑!

「うわ~オシッコ漏らしてる。赤ちゃんみたい」

一体、どんな写真だったんだ!?(笑)。



厳格すぎるくらい厳格な性格の吉野のおばちゃんは、町の伝統を守ること(つまり‘吉野ガリ’のこと)に異常な執念を燃やしている。

ハサミを片手に校門前で生徒の前髪の長さをモノサシで計り、2センチ以上あるとその場でジョキッ!


そんなおばちゃんやそれを奨励する大人たちに反旗を翻した慶太ら5人は……ド派手に髪の毛を染め、オシャレにセットしたヘアースタイルで祭りの夜に姿を現す!

しかし内心では……。



子供たちの微妙な心理描写の表現が抜群で、爽やかなラストはとても清々しい!



マッタリと楽しむには最適の映画でした。