Doolittle/Pixies | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Pixiesとの出会いは強烈だった。初めて彼らの音を聴いたのは4ADから87年にリリースされたDebut Mini-Albumの『Come On Pilgrim』ではなくて最初の公式Studio Albumとなる『Surfer Rosa』であった。ProduceはSteve Albiniで、なるほどこのアルバムはAlbiniらしいざらつき破壊的で鋭いギター怒鳴るようにShoutするVocal、何より怒りに満ちて暴力的ながらギリギリのところでメンバーがバンドのEnsembleを成り立たせているスリリングな状況が伝わってくる傑作であった。Punkを聴いて育ち、Rockに刺激的な音を求めてきた自分にとって、十分に満足のいく作品で、Kurt Cobainが、このアルバムを聴いて『In Utero』のProduceをAlbiniに頼んだのもわかるような気がする。そして4ADという英国のLabelが、およそ耽美的ではない彼らと契約したのはなぜなんだろうかという疑問はあったが、彼らのTrademarkとなるQuiet-Loud Dynamicがこの時点で炸裂し、Hüsker Düと共にこの作品がNirvanaに大きな影響を与えたことは明白である。すっかり彼らに夢中になって前作となるDebut EPCome On Pilgrim』を聴いて驚いた。そこには多様性に満ち、怒りと狂気と4AD的な英国的な翳りを持ったMelodyが共存し、Strangeな魅力を放っていた。そして、89年にいよいよ本作がリリースされる。そこには前2作の美味しいところを抽出したような世界が描かれていた。Gimmick的だった部分が消えて彼らが持つ摩訶不思議な感覚が際立っている。前作ほどの衝撃こそないが、何気ない日常が、いつの間にか歪み壊れていく世界、それは90年代前半に一世を風靡する『Twin Peaks』的な現実が奇妙に捻じ曲がっていく不条理な世界観とも共通する摩訶不思議な魅力を放っている傑作だ。Produceを担当したLiverpool生まれのGil Nortonは彼らの持つ魅力をうまく引き出す大仕事をやってのけたのだ。

 

  『Doolittle』はPixies89年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は“Debaser”。ご機嫌なイントロのギターのRiffに続いてBlack Francisが激しくShoutする。ヒリヒリするこの感覚がいい。

Tame”は淡々と始まり暴力的なまでにShoutしギターがかき鳴らされる。彼らのQuiet-Loud Dynamicが存分に発揮されたナンバー。

Wave of Mutilation”も激しくかき鳴らされるギターが激カッコイイ、そしてPopで魅力的なMelodyも最高だ。

I Bleed”はベースのKim DealがFrancisと共にVocalを担当しDuetしている。後の彼らを知ると、この時のチョッと微笑ましい感じが良い。

Here Comes Your Man”は彼らの魅力のひとつであるPopでCatchyなMelodyを持った曲。

Dead”は不協和を伴った2本のギターの絡みが最高。

Monkey Gone to Heaven”は凶暴なギターと対照的なCelloViolinが効果的なVelvet Underground的な魅力を持つ曲。

Mr. Grieves”はReggaeなギターで始まり様々な要素をぶち込んだ曲。

Crackity Jones”は疾走するリズム隊能天気なVocalが良い。

La La Love You”は最後の方にだけVocalが登場するRetroな香りを漂わせた大好きなほぼインスト曲

No. 13 Baby”も不協和音を奏でるギターがご機嫌。

There Goes My Gun”もFrancisが何やら叫んでいる奇妙なShuffle

Hey”はイントロのR&B/Soul風のギターPsycheなギターの対比が面白い。

Silver”はBlusyなSlide Guitar壊れた風なKimのVocalが面白い。

アルバム最後を飾るのはNirvanaにも影響を与えたQuiet-Loud Dynamicが発揮された“Gouge Away”。

(Hit-C Fiore)