The "Living Room" Concert/Anthony Phillips | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Anthony Phillipsというと、どうしてもLive Concertとは無縁のStudioでコツコツと自作曲を録音して発表する孤高のArtisanといったイメージがある。それくらい、Anthony PhillipsのStudio Albumの完成度の高さは(時には気ままに録音した作品もあるけれど)特筆すべきで、Antらしい美意識のもとに独自の世界を形成しているといってもいいだろう。そんな、完璧なRecording Artist Anthony Phillipsという先入観を持っていた自分からすれば、この作品がリリースされた時の驚きといったらなかった。93年の3月21日北米のRadio局の『Echoes』というContemporary Instrumental Music/New Age系の音楽番組の名物となっているLiving Room Concert Seriesの放送用に録音されたという、このLive Session、予想を超えた素晴らしい作品であった。まるで目の前にいるようにAntがファンに語りかけながら、珠玉の名曲の数々ギターとピアノで見事な演奏を聴かせてくれる。勿論、Studio作品のように綿密に構築されたさまざまな楽器のEnsembleを聴くことは出来ないけれど、本来の楽曲が持っっている優美で牧歌的な魅力あふれる旋律が、あえてSimpleに演奏することによって、より生々しく浮かび上がり、伝わってくるのが素晴らしい。Genesis時代にLive活動が苦手であったというAntであるが、それが嘘であるかのように、ここでは端正で破綻のない、それでいて人間的な温かみすら感じさせるような演奏を聴かせてくれる。おまけにStudio盤ではPhilil Collinsが歌っていたl曲ではAnt自身がVocalを聴かせてくれる。これが実に素朴で味わい深いVocalで曲の雰囲気をうまく表現しているのが個人的には気に入った。おそらく、この日のために綿密な準備をして臨んだであろうし、立ち上がりこそ若干の固さが感じられなくもないが、徐々にRelaxした空間を作り出しているのも中々楽しめる。

 

 『The "Living Room" Concert』はAnthony PhillipsがリリースしたLive Album

アルバム1曲目は"Reaper"。78年にリリースされた名作Private Parts And Pieces』のB面1曲目を飾る典雅で生命感に満ちた名曲である。力強くかき鳴らされるAcoustic Guitarの響きLyricalなArpeggioContrastが素晴らしい。

1st Solo Album『The Geese & The Ghost』収録でPhil CollinsがVocalを担当した"Which Way The Wind Blows"。いやあ、御見それしました。作者のAnthony Phillipsご自身が歌う素朴なVocalが素晴らしい。楽曲自体も最高だけど、これには心を奪われてしまった。

続いてお同アルバムからMike Rutherfordとの共作"Henry: Portrait Of Tudor Times"。力強いAcoustic GuitarのカッティングによるRiffから入り抒情的なArpeggioをまじえながら、これまた緩急自在11分越えの大曲をAcoustic Guitar1本で最後まで退屈させることなく弾ききっているのは見事としかいいようがない。

"Conversation Piece"は未発表曲で、もうイントロのAcoustic Guitarの爪弾きから心を奪われてしまう優美で切ない旋律がたまらない。

Private Parts And Pieces』からこれまた名曲"Flamingo"。これまた力強いAcoustic GuitarのカッティングLyricalなArpeggioや哀感漂う旋律のContrastが見事。

続いても同アルバムから"Field Of Eternity"。Classicalな奏法が心地良い

Private Parts And Pieces IV: A Catch At The Tables』から名曲中の名曲"Sistine"。Hramonics奏法で始まりAntのGentleなVocalも最高

"Lights On The Hill"も同アルバムから。流れるようなArpeggioが良い。

ピアノの演奏で『Private Parts & Pieces VIII: New England』から"Last Goodbyes"。これは沁みますな。

最後はピアノ弾き語りで『The Geese & The Ghost』から"Collections"。最高。

(Hit-C Fiore)