Jards MacaléというRio de Janeiro生まれの不思議な魅力を持った孤高のSinger-Songwriter。Jardsを追いかけるようになって、作品ごとに全く異なる色合いとある種共通したStrangeな味わいを感じさせる、その多面的で謎めいた魅力を持った作風の虜となってしまった。Caetano VelosoやGal Costa、 Gilberto Gil、Torquato Neto、Os Mutantes、Tom ZéらのTropicáliaと深い関りを持った武骨でありながら、Romanticで官能的な一面も持ち合わせたJards Macaléは、独特の低音のVocalとギターでの弾き語りが実に素晴らしい。幼少時から音楽に囲まれた環境で育ってきたというMacalé、両親がピアノやAccordionで奏でるFoxtroteやValsa、Modinhaが常に身の回りにあったという。そしてIpanemaの近くに引っ越すとDois no BalançoというDuoを結成した後、JazzやSeresta、Samba-Cançãoを演奏するGroupに参加している。César Guerra-PeixeにピアノとOrchestrationを学び、CelloをPeter Dauelsbergに、ViolãoをTuríbio SantosとJodacil Damascenoに学んでいるMacaléは、さらに作曲家のEsther Scliarにも学んでいるのだから只者ではない。65年にGrupo Opiniãoのギタリストとしてプロのキャリアをスタートさせると、Maria BethâniaやCaetano Veloso、Gal Costaらと出会い、Macaléはその独特のSongwritingによって彼らとの関わりの中でも一際異彩を放っていく。70年代初頭にはLondonに滞在しGalやMariaらと録音を残し、同じくLondon亡命中のCaetanoが72年にリリースする『Transa』の制作に関わった。MacaléはギターやMusic Directorを担っていた。帰国後72年に1stアルバムをリリース、本作は74年にリリースされた2ndアルバムとなる。鍵盤のWagner Tiso、ベースのLuiz Alves、ドラムスのRobertinho SilvaといったSom Imaginarioの面々とドラムスにTutty Moreno、CavaquinhoにCanhoto、Classical GuitarのMeira、7-String Guitarの名手Dino、ベースのRubão Sabinoといった豪華なメンツにOrchestrationはTisoとPerinho Albuquerqueが担当し実験性とMacaléらしいRomanticで官能的なMelodyが同居した奇妙な味わいの作品となった。規格外のSongwriterの魅力がそこには宿っている。
『Aprender A Nadar』はJards Macaléが74年にリリースしたアルバム。
アルバムは2分足らずの“Jards Anet Da Vida / Dois Corações / No Meio Do Mato / O Faquir Da Dor”で始まる。小説家で女優のAna Mirandaの官能的な語り口と寂しげに口ずさむ歌にJardsが絡む。まるで映画のワンシーンのようだ。
弾き語りで情熱的に歌い上げる“Rua Real Grandeza”。哀感漂う旋律をSimpleに聴かせているのが良い。
Rio de Janeiro生まれのSambista Paulo da Portelaの“Pam Pam Pam”も小芝居仕立てで始まって、すぐに終わってしまうStrangeな仕上がり。
ValzinhoとOrestes Barbosa作の“Imagens”は一転してRomanticに歌い上げていく。雰囲気タップリのVocalに加えて独特のギター・プレイもまた魅力的だ。寄り添うStringsもイイ感じ。
軽快で洒脱な魅力に満ちたSamba“Anjo Exterminado”。思わず腰が動き出す。
“Dona De Castelo”は哀感満ち溢れるStringsとピアノと共にJards Macalé節ともいうべき美しく切なく官能的なMelodyが思い入れたっぷりに歌い上げられていく。
Billy Blancoの“Estatutos Da Gafieira”は2分足らずだが摩訶不思議な音響でJards Macalé弾き語りの魅力が伝わってくる。
“Mambo Da Cantareira”は陽気なLatinノリで実に楽しそう。
作曲家Miguel Gustavo作の“E Daí?”はOrchestrationがPsychedelicな香りも漂うわせた謎めいた仕上がり。
GordurinhaとNascimento Gomes作の“Orora Analfabeta”は軽快なSamba。
“Senhor Dos Sábados”はStringsを従えMellowなJards Macalé節が炸裂。
“Boneca Semiótica”も優美なStringsとピアノやTromboneをバックにRomanticに歌い上げる。
最後を飾るのはアルバム冒頭の“Dois Corações”のMelodyが歌われたかと思えば、笑い声と共に突如終わってしまう。
(Hit-C Fiore)