The Private Tapes/Manuel Gottsching Ash Ra | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 心地良いって事を常に最優先してしまう性分である。先日、ふとした事から十代の頃に多重録音したテープが出てきた。何気なく聴き始めたら止まらなくなってしまった。何しろ多重録音は小学生のときから始めて大量の音源を残しているのだが、今頃になってなぜか行方不明になっていたものが出てきたのだ。稚拙なアレンジ、演奏、もう今となってはどうしようにも手がつけられないシロモノなのだが、なぜか聴いていて気持ち良い。目の前に仕事の締め切りが迫ってきているにもかかわらず暫く、その音源を聴き続けて無駄な時間を過ごしてしまった。音楽理論もわからず、ヘタクソな演奏技術で、只ひたすら心地良い事だけを追い求めていたのであろう時代の音源。何も知らないという事は最強なんだと思った。
 さて尊敬するManuel Gottsching先生の音盤のご紹介である。何よりも「このレコードは心地良く聴くべきなのだ」という師のお言葉は自分にとって非常に重みのあるものとなり、日々作品を仕上げた後にこの言葉をかみ締めている。Manuel Gottschingといえば『E2-E4』でしょ、或いは『New Age of Earth』ですがなという短絡的なものではなく、本日はあえてManuel Gottschingの歩みを再確認することができる未発表音源集をご紹介したい。

 『The Private Tapes』はManuel Gottsching73年Asra Tempel時代からソロ活動開始後の79年までのVol.1~6まである秘蔵蔵出し音源集。本日はそのBest盤『The Best of The Private Tapes』からご紹介。
Stringsをバックに孤高の世界を描き出す“Bois De Soleil”。
Halensee”もまた幽玄な世界ですな。ギターが完全にGottschingの身体の一部となって、そこに描き出される精神世界に目がくらみそう。
Percussion入りのSantanaさん顔負けの弾きまくりチューン“Ain't No Time For Tears”は79年Liveから。
Funkyなカッティングから始まる“Der Lauf Der Giraffen”。Bluesコードものなんだけど、微妙にコード進行がThe Beatlesっぽいナンバー。大好きだなあ、こういうの。
奇跡の来日公演でも演奏してくれた“Niemand Lacht Ruckwarts”。
Wall of Sound”はシンプルなエレピのRiffHypnoticなギターの多重録音。
なんちゃってアジアン・テイスト無国籍感が面白い“Ultramarine”。
初期の音源Whoopee”のような何の変哲もないロックギターも興味深い。
3拍子Spacyな展開が素晴らしい“Hausaufgabe”。
79年Live音源は『Correlations』に収録されていた“Ice Train”と“Phantasus”、“Club Cannibal”。
本Best盤にのみ収録の“Gedanken”はベースのHartmut Enkeに鍵盤Steve Schroeder、ドラムスのDietmar Burmeisterが参加した72年のナンバー。『Kosimische Musik』と題されたOhrレーベルのサンプラー・アルバムに収録されていた曲。めくるめく音の迷宮に圧倒される。
(Hit-C Fiore)