Nervos de Aco/Paulinho da Viola | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

$BLACK CHERRY
 Gilberto GilCaetano VelosoMilton Nascimentoも、なんと今年70歳になる。Jorge Ben Jorも確かそうだ。つまり1942年生まれには、独創性に富んだ優れた才能が数多く集まっているBrazil音楽界の中でも人並みはずれた、時代を牽引してきた最重要人物が集中している。そして、ChoroSambaを融合して、人々の心に安らぎを与える歌声で魅了し、作曲家としても優れた、この人も絶対に忘れちゃならない存在だ。Rio de Janeiro生まれのSambistaPaulinho da Viola。ChoroとEscola de SambaがPaulinhoの音楽的なルーツである。Choroの伝統を守り、さらなる音楽的な発展を目指したJacob do Bandolimが結成した名門Choro ConjuntoEpoca de Ouro。そのギタリストCesar Fariaを父に持ち、自らも巧みにCavaquinhoを演奏するPaulinho。また、10代の時にEscola de Sambaに入って自作の曲を作るようになったPaulinhoはCratola夫妻の経営するRioの店での演奏を始め、勤めていた銀行を辞めて音楽の道に進む事を決心する。65年Ze KetiらとConjunto A Voz Do Morroを結成したPaulinhoは後にソロとしての活動も開始する。名門Escola de SambaのPortelaに出入りしていた頃から、その楽曲が注目を集めていたPaulinhoだが、66年にPortelaが優勝した時のSamba Enredo“Memorias de Um Sargento de Milicias”などで新世代のSambistaとして誰もが認める存在となっていく。Paulinhoの作品と、その歌声から感じ取ることができる知性と優雅さは、幼い頃からChoroに接してきたことが大きいだろう。また、どんな時でも人々の心を穏やかにして、時にはたまらなく切なくさせ、そして前を向かせてくれる歌声からは、SambistaとしてのPaulinhoの才能を感じる。本盤は、そのインパクトの強いジャケットが印象的だが、Caetano Velosoが『Tropicalia 2』の“Desde que o Samba e SambaSambaがSambaであった時から)”でGilberto Gilと歌っていたことを思い浮かべる。
「黒い肌に流れる涙。雨が降っても、孤独でも、すべてがダメでも、悲しみが消えていくように歌い、Sambaは喜びに変える、痛みから生まれた偉大な力(かなりの大約、意訳です、ご勘弁を)」。
恩師Cartolaの志を継ぎPaulinhoはまだまだ頑張ってもらいたい。

Nervos de Aço』はPaulinho da ViolaがOdeonから73年にリリースしたアルバム。70年の名作『Foi Um Rio Que Passou em Minha Vida』でも素晴らしいArrangementsを披露したMaestro Gayaとのコンビは、本盤でも健在。アルバム・タイトルはSamba-Cançãoの作曲家Lupicinio Rodriguesの曲名から。
アルバムの1曲目はPaulinhoがGentleなVocalで男女混声Chorusと歌い上げる“Sentimentos”。Clarinetが印象的。
Paulinho作の“Comprimento”は、彼らしい繊細な感覚が感じられる。素朴に歌うPaulinhoだからこそ、そのセンスが引き立つ。
続く“Nao Leve A Mal”もViola作のSamba。悲しみを吹き飛ばすようなPaulinho陽性のパワーが良い。
アルバム・タイトルナンバー“Nervos de Aço”。Samba-Cançãoを表情豊かに歌うPaulinhoのVocalが沁みますな。
Paulinho作の“Roendo As Unhas”は淡々とした曲だが、時々妙に聴きたくなるナンバー。弾きまくるピアノとMinimalなギターの絡みもお見事。
恩師Cartolaの“Nao Quero Mais Amar A Ninguem”。Stringsも優雅に奏でられ、Paulinhoの伸びのある歌声が素晴らしく映える。
軽快なピアノの調べと共にPaulinhoが躍動する“Nega Luiza”。
Cidade Submersa”ではPaulinhoの包容力のあるVocalが美しいメロディを歌い上げるナンバー。いかにも彼らしい知性を感じさせる作品。
Chico Buarqueの名曲“Sonho De Um Carnaval”も思わず聞き惚れてしまう。
最後を飾るのはChoroの名作となった“Choro Negro”。
Roendo As Unhas/Paulinho da Viola

(Hit-C Fiore)