Hermeto Pascoal e Grupo@ 渋谷 Pleasure Pleasure | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

自由奔放で、無邪気な子供の様に音と戯れるHermeto Pascoal

既成概念をぶち壊しテクニカルでありながらも、ユーモアがあり人間的な温かさを感じさせる底知れないパワーは、実に生命感に満ち溢れたものだ。

 人並み外れた想像力と、ジャンルの壁を越えた作曲・編曲能力。それを的確に表現し、時には豊かな個人のCreativityにより無限の可能性を拡げる超強力な技能集団によって、Hermeto Pascoal e Grupoの音楽は壮大な音宇宙を作り上げていく。

 同じ、超絶技巧でスケールの大きいジャンル越境型の天才音楽家Egberto Gismontiの完璧なステージに圧倒されてから一年もたたないうちに、Brasilのもう一人の天才音楽家がやってきた。しかも今回はGrupoを引き連れて。

 メンバーの居ないステージを見た瞬間に、既に高まりまくった期待感は頂点に達しそうに。しかし演奏が始まると、想像を遥かに越えた、正にMagischer Realismusのような世界が待ち受けていた。


ドラムスのMarcio Bahiaが、「ステージは全て同じセットではなく違ったものになるから、楽しんでくれ!」と言った通り。

 4回のセットは毎回、それぞれのセットでしか演奏しない曲や、その時の雰囲気やミス、Happeningさえも生かしたFlexibleなステージングであるのが、これまた天真爛漫、自由気ままなHermeto Pascoalらしい。

 いずれにせよ、御大が指揮し、バッチリ意志の疎通の取れたメンバーと観客をも巻き込み、一体感のある空間を作り出していくのが素晴らしい。HermetoとのCall and Responseによって、名曲を一緒に歌えただけでも大満足。

 アイ・コンタクトを軽く交わしただけで各メンバーが即時に対応し、流麗な個人技をかましていく身体能力の高さには驚かされた。

天才型のMusicianでありながら厳しい日々の鍛錬によって作り上げる音楽は、こういう生演奏によって、より強力なエネルギーを人々に与えてくれる。

 超テクニカルなんだけど冷たさを感じさせない、人間の温もりを感じさせる音楽。

 Live演奏っていいよね。当然のことだけど、デジタル・データ化された音楽を聴くのとは全く次元の違う、ケタ違いの感動、快感。そういう生演奏を提供できる音楽家は生き残っていくだろう。

 やっぱり音楽って、メチャクチャ楽しくて気持ち良い。そして、多くの人々と音楽を通じてCommunicationすることは最高だ。音楽の力、素晴らしさを改めて再認識した。


密林地帯を模したステージに次々に登場する猛者たち。高度に練りこまれた複雑怪奇な楽曲を、それぞれの個性を生かしたソロを散りばめながら、難なく演奏していく。御大の指揮により、その時々で変化していくアンサンブルも絶妙だ。

 Hermetoをして〝Crazy〟と言わしめた鍵盤奏者のAndre Marquesは、スリリングにアウトするフレーズのカッコよさやリズムのキレが抜群。

 マルチ管楽器奏者のVinícius Dorinは、複雑なフレーズを余裕で吹き倒し、Mysteriousに宇宙の果てまで飛翔するFluteも素晴らしい。

 Hermetoの息子のPercussion奏者Fabio Pascoalも、只者ではない。ナンなんだろうか、あのリズムを細分化して心地良いGrooveを与える、異常なまでのリズム感。

 変拍子やPolyrhythm、難易度の高いキメをCoolに叩き、リズムを生き物のように躍動させるMarcio Bahiaのドラミング。Amazonの奥地をガンガン突き進んでいくようなパワーも兼ね備えている。

 そしてこの方、尊敬しております、Grupoの屋台骨的存在でHermetoが最も信頼するであろうメンバーItibere Zwarg

変幻自在のアンサンブルを、この人のウネりまくりのベースが、司令塔Hermetoの指示に従い根底で支え、Aggressiveに変化をつけ攻撃に転じたりする。正にボランチのような存在。

いやはや何とも無敵のリズム隊ですな。

 前回、Hermetoと2人で来日した際20代だった愛妻Aline Morenaは、その麗しい容貌だけではなく、才能に溢れた御方。超絶Scatだけではなく、鍵盤やViola Caipiraも弾き、時にHermetoの通訳もする。

正にHermetoが目をかけただけある女性。

 そして御大といえば、今回はJBのようにメンバーに指示を与え、George Clintonのように余裕の俺流プレイ。

多少、音を外そうが御構いなしのVocalや、Alineと突然ダンスを踊り出したり、お茶目な立ち居振る舞いも最高。

MilesChristian VanderZappaのように超絶技能集団を意のままにコントロールしながらも、観客を思う存分楽しませ、ノリノリにさせるのはさすが。


最後に:この夢のような来日公演を実現してくれたすべてのスタッフに、感謝したい。そして、また来て大いに楽しませてくださいね、Hermeto。勿論Grupoも一緒にね。
BLACK CHERRY
(ツアーTをGETしました!ちなみにオーガニックコットン使用です)

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 (Hit-C Fiore)