さまよえる地球

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『さまよえる地球』 劉慈欣

『流浪地球』 刘兹欣 (短編集『乡村教师』『流浪地球』 に収録, 初出は <科幻世界> 2000年第12期号)

 

 

同じ短編が複数の短編集に載っていることがある.『流浪地球』 は上に書いたように(少なくても)2つの本に載っている.前に紹介した『鏡子』に到っては3つの短編集『乡村教师』『流浪地球』 时间移民 に載っている.なるべく重複がないようにうまく買い物をしたいところだが,どの本に何が載っているのか調べるのには大変手間がかかりそうだ.

 

今回紹介する劉慈欣『さまよえる地球』は〈SFマガジン〉20089月号に日本語訳が載っている.上に書いた初出に関する情報はそこで得た.この号は中国SF特集で,他には韓松『水棲人』, 江波『シヴァの舞』が載っている.また, 〈科幻世界〉副編集長の姚海軍による『中国SF界の現状』という記事がある.その時点では『三体』『三体Ⅱ: 黒暗森林』よりも銭莉芳『天意』の方が売れていたようだ.

 

さて,『流浪地球』 のあらすじを説明しよう.太陽が数百年以内にヘリウム・フラッシュ(大爆発)を起こして赤色巨星化することが判明したので,地球ごとプロキシマ・ケンタウリまで逃げようという話である.映画『妖星ゴラス』に出てきたような巨大エンジンを作って逃げるのだ.木星でフライバイするときには空が木星に覆いつくされる.このイメージが素晴らしい.途中で寒さが問題になるから地下都市を作って暮らすことになる.ところが,加速したときに地球にゆがみが生じて地下都市に大きな被害が出る.小惑星にぶつかりそうになったら反物質爆弾で破壊するが,それでも破片が地球に落ちてくる.社会を統制するために政府は強力な権力を持っていて,厳しい産児制限が敷かれている.政府の方針に疑問を持つ人もいて,地球丸ごとでなくて宇宙船を作って逃げればいいという意見は根強く残っている.また,今すぐにもヘリウム・フラッシュが起きるから逃げきれないというデマがときどき流れる.それとは逆に,ヘリウム・フラッシュなど起きそうにないという噂が広まり始めて...

 

中国のSFの邦訳が出る見込みはほとんどないと思うので,いつもはネタバレを気にせずに書いているが,今回はあまり詳しくあらすじを書かないようにしよう.巨大エンジン,凍った海,空を覆いつくす木星など視覚的イメージを掻き立てられる.つぎつぎに問題が生じてハラハラさせられる.数10ページしかないが,長編に出来るだけの材料がぎっしり詰まっていると思う.<SFマガジン>で林久之氏は「短篇の場合は時に詰め込みすぎになるきらいもあるようだ」と書いている.『流浪地球』にせよ『時間移民』にせよ,小説というよりは小説の要約を読んでいるような感じがする.アイデアの使い方がぜいたくだ.いくらでもアイデアが沸いてくるからこういうことが出来るのだろう.

 

 

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