ピアノの呪縛1 「ピアノをやめたい」 | フォーチュン☆ナビゲーター リブラの日記

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私が自己を見つめて

癒していかねばならないことを自覚した時、

そこに立ちはだかったのが

ピアノだった。


私の子ども時代は

ピアノに始まりピアノに終わった。

それは母娘の歴史でもあり、

私が自分を見失った原点でもあり、

避けて通れない。



ピアノ、大嫌いだった。

今は普通。

見ても聞いても嫌な感じはない、という程度。

宿命の要素から見ても

そんなにピアノが向いているとは言えません。


母が私にピアノを習わせたのは4歳のころ。

同じ団地の同級生も皆一緒に通い始めた。

練習は嫌いだった。

でも母に怒られるのがもっと嫌だったから

頑張って練習した。


そして、6歳のピアノの発表会。

私は音をはずした。

同級生はみんな綺麗に弾いた。

帰宅してから母は猛烈な勢いで怒り狂った。


「あんなに練習したのに。このバカたれ。

あんたなんか出ていけ」


たぶん私は泣きながら出て行った。

そして連れ戻されたのだろう。

寝室に行く階段をのぼりながら

6歳の心にはっきりと私は宣言した。


ピアノをやめさせてもらえるように、

笑うことをやめて

不幸にみえるようにしよう。


いわゆる、親の気を引くバージョン。


やめると言えばやめさせてもらえたのだろうか。

でも怒られるのが怖くて言えなかった。

自然にやめさせてもらえるよう、

子どもの脳みそで必死に考えたのが

「不幸に見えればピアノをやめさせてくれるだろう」


これは全くの失敗でした。

当たり前ですが。


その事件の数日後、

別の先生から母のもとに連絡があった。


「この子は見込みがあるから

私に預けて下さい」


それは母の態度を一気に豹変させた。

もう喜んで喜んで、希望に満ちあふれていた。

私はその反対に、

一気に落ち込んでいた。

なんでそんな余計なことを・・・。

憎いという感情を覚えたのは、このあたりで。


またまた一生懸命練習をする日々。

私はふてくされたまま練習した。

そして、相変わらず

不幸に見えそうな演技を続けた。

母の前ではなるべく笑わない。

楽しそうにしない。


夜の9時までは、団地中に

練習の音と母のどなり声が聞こえる。

友達に言われた。

「あなたって不幸だね」


ちっとも嬉しくなかった。

よく考えたら私は不幸になりたかったはずなのに・・・


夜の9時以降も練習ができるように、

一戸建てに引っ越しもした。

建築中の家に火をつけてやろうと

何度も思った。

不器用でマッチで火が付けられなかったので、

未遂に終わったけれど。



そのまま中学にあがり、

更に上のランクの先生を紹介された。

1回のレッスンが1万円!


後で知ったことだが、

この先生は、

私のレッスンは1回5千円で、と

母に言っていた。

先生は最初から、

自分が教えるレベルにはないことをわかっていて、

それでも快く引き受けてくれたのだ。


でも母は、他の人が1万円を払っていることを知って

自分も一万円を封筒に入れていたのだ。

(封筒は無記名で箱に入れておくから

先生はだいぶ後になるまで気付かなかったそうだ)

これを知って、

母にもピアノにも憎しみは増す一方となった。


この先生の生徒さんは、みんな芸大合格を目指す。

1日8時間は練習するという話を聞いて

私はさすがにやばいと思った。

好きでもないことをやり続ける人生なんて。


だんだん自分の将来を考えるようになった。

それは、何をやってみたい、ではなく

ピアノをやらず

母の指図も受けずに済む将来。


とはいえ、なかなか母に言えなくて

結局高校2年の冬まで頑張ってしまった。


さすがに進路相談も迫っていたので

いよいよ母に伝える日がやってきた。

「東大目指すからピアノはやめる」

東大っていえば、

何となく納得してもらえると思ったから。


決心がついた日のレッスンで、

私は初めてレッスン中に泣いた。


レッスンは厳しくて

すごくたくさん怒られる。

みんな大体泣く。

悔しくて、辛くて。

でも私は一度も泣いたことがなかった。


もう演技を超えて

「自分は不幸だ」と思っていたから。

喜怒哀楽だって、演技なんだか真実なんだか

よくわからなくなっていた。


もう決心がついたからだろう、

ようやく私は演技から解放されて泣けたのだ。


もちろん母はショックだったと思う。

母が家を飛び出したり

半狂乱になったりしたのは

おぼろげに覚えているけれど、

解放感いっぱいの私にはどうでもよかった。


もうピアノの練習をしなくていい!

一気に私の未来はバラ色になった。


続きは改めて・・・。