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mayaのブログ 新館

ブhttps://ameblo.jp/severus109/ から引き継いだ別館です。
紅茶におかきを浸して思い出せるようなことを綴れればと思います。
目指したいのはぬくい隠居部屋。ログの説明を入力します。

十一月と十二月では開演時間が一時間違う国立劇場。
なんでだろう?
十二月は一時間早く第二部は3時半始まりで6時前に終演。

演目はまず「天衣紛上野初花ー河内山ー」。
質店・上州屋の娘の浪路(莟玉)が奉公先の松江候(梅玉)の意に沿わぬとて、
このまま殺されてしまいそうだという話を店に来た河内山宗俊(白鸚)が聞きつけ、
二百両出せば御数寄屋坊主の自分が話をつけて浪路を助け出してやろうと請け合う。
上州屋の親戚・和泉屋(友右衛門)が手付の百両を出し、
それを手に河内山は河内山は如何にも策がありそうに帰っていく。

さて松江邸。
腰元たちの話によれば、殿さまは許婚のある浪路を気にいって妾にしたい。
けれども浪路はそれを拒む。
そこで癇癪をおこした殿さまは浪路を手討ちにすると言い出す始末で、
浪路を庇う数馬(高麗蔵)、家老・高木(彌十郎)、浪路と数馬が密通だと言い立て彼らを陥れようとする北村大膳(錦吾)らも入り混じって、広間は大騒ぎ。
すみっこで小さくなって「意に沿えぬので討たれても仕方がない」と諦め顔の浪路憐れ。
パワハラ・セクハラの極みのような松江候ですが、
梅玉さんが松江候なので下品でないところがタチが悪い。
本人、自分が目にかけてやるってことをなぜ有り難いと思わないのだ?とか思ってそう。
そこに如何にも高僧のような衣を纏った河内山が「上野東叡山寛永寺からのご使僧 北谷道海」と名乗る河内山がやってくる。

松江候は仮病を使って会おうとしないが、河内山は他の者には用向きは言わない。
やむなく渋々松江候が出ていくと、浪路を親元に返させてほしいと宮の門主から言いつかって来たという。
白鸚×梅玉でこの書院の場がものすごくおもしろいです。
相手の殿さまも癖が強いと違う種類の強さ激突って感じになるし、
この殿さまを河内山がねじ伏せてしまう痛快さが増すと思う。
ここで殿さまが「参った!」になるのを見届ければ大きな山場は越えたようなもの。
玄関先で北村大膳に正体を見破られても、また切り抜けちゃうだろうと安心して観ていられる。
大膳に開き直り、高木に「どうぞぞのままお帰りください」と道海のまま帰ることを認められ、
気分よく立ち去る際の「ばっかめー!!」のタイミングで玄関に現れる松江候のわなわなした姿。
河内山も御直参だから一般人とは違うけど、でも権威権力をやっつけてくれる頼もしい仲間みたいな感じに思えてしまう白鸚さんでした。
ああ、スッキリして楽しかった。
(莟玉くんが可愛いので、町娘に戻ってお暇していくところも観てみたい。
 梅玉さんがすごーく未練たらしく拗ねて。
 あるのか、そんな場面?)

明治になってから書かれた話とはいえ、「ばかめ」と言われてしまう松江候。
天保時代の松江藩をみてみると、「13人の刺客」のあの殿さまあたりなんですね。
明治の人たちは「いたよねー、困った殿さま」ってすぐ連想できたのかも。

寛永寺の門主は皇族出身で身分の高い方ですが、
その方がなんで質屋の娘の難儀に口を出してきたかというと、
和泉屋は御門主の碁のお相手をするのだとか。
そこで碁の手がいつもと違うのに気がついて御門主が「何かあったか?」と訊いてくれて、
実はかくかくしかじかで…と和泉屋が訴えたら、御門主が口利きをしてくれることになったという河内山のでっち上げ話。

「麒麟がくる」では正親町天皇が東庵先生と碁を打っています。
囲碁って身分の枠を簡単に超えさせちゃうものなんですね。
今までさらっと聞き流していた御門主と和泉屋の話が、
すっと入って情景(でっちあげだから無いんだけど)が浮かんだのでした。

30分の幕間を挟んで「上 鶴亀 下 雪の石橋」の舞踊。
「鶴亀」は松竹梅の背景に赤い檀の上に金冠を戴いた女帝(福助)と、
左右に鶴(福之助)と亀(歌之助)。
福之助・歌之助は福助には甥にあたります。
福之助が「伯父の還暦のお祝いの気持ちも込めて踊ります」とインタビューに答えています。
福助さんも還暦なのか~
新年を寿ぎ、天下泰平と五穀豊穣を祈る踊りとのことですが、
倒れられて7年、復帰されて2年、そして還暦を迎えられたことをお祝いする舞台だと思います。
お祝いするというか、感謝するというか。
あいかわらずの華やかさを見せてくれることに感謝です。

そして華やかで明るい舞台からキリリと引き締まった雪の山奥の獅子の精の世界へ。
赤頭で牡丹の花を手に踊るのは染五郎。
「連獅子」の獅子の精は観たことがあるけど、ひとりのは初めて。
顔の隈取は自分で考えてするのでしょう、すごくカッコいい。
今どきの若者らしく(まだ15歳だ!)顎が細い人なのですが、
口元の描き方がいいので大きな頭を被ってもバランスがいいです。
まず隈取に惚れ惚れする獅子の精の姿。
今まで観てきたのはお父さんやおじいさんが一緒だったのが、今回は一人なのでノビノビしてるかも?
ワイルドな妖精が雪の中で舞い踊っている。
きっと雪が好きな霊獣なんだろうな。

小さなポヨポヨした坊やだった頃から観てきた人なので、
ちょっと冷静に観られなかった。
遠い親戚のおばあちゃんみたいな気分になってしまったかもしれません。