遥(こんな事を言ったら、君は【嘘だ】って笑うかもしれないけど。
僕はね、君の事が大好きで――憧れていたんだ。
いつだって君は僕自身を見ていてくれたから。
だから、僕はもう君を独りにしたくない。
なのにどうして――どうして現実はいつも、
僕たちの思い通りになってくれないんだろう)
貴音/遥「please your response」
(場所 貴音と遥の教室
2人は机に座っている)
貴音「はー!やっと午前の授業全部終わったよー!」
遥「お疲れ様、貴音」
貴音「なんか・・・今になって先生のありがたみを感じたわ・・・」
遥「え?」
貴音「楯山先生ってさ。授業の合間に五分くらい自分語りして授業を中断させることあったでしょ?」
遥「あ・・・うん」
貴音「それって私達に、なんていうの?息抜きさせてくれてたんだなぁ~ってなんか思った」
遥「!・・・そう、だね」
遥(世界は今日も廻っている。
先生がいなくても・・・いやきっと、先生じゃなくて僕がいなくなっても・・・
廻っていくんだろう。
その現実の残酷さと重みを、僕は誰より知っていたから・・・。
貴音の言葉に笑って返すことは、やっぱりまだ出来なかった。)
遥「・・・ご飯食べない?貴音」
貴音「そうだね~。あ、私今日お弁当じゃないから一緒に購買行く~」
遥「了解。あ、でも二人ともいなくなったら、シンタロー君達が来たとき
ビックリするんじゃ・・・」
貴音「あ。じゃあ、メモ残しとこ。
メモ帳どこやったっけ・・・あ、このノートに書いて広げて置いとけばいっか。
えーっと「購買に、行ってくるね。先に・・・食べてて」っと。
よし、じゃあ行こっか」
遥「うん」
(二人が教室から出る)
(場所 廊下)
貴音「購買久しぶりだー。なーに食べよっかな~」
遥「いつもはお弁当だもんね。そういえば今日はなんでお弁当じゃないの?」
貴音「あー・・・お婆ちゃんが昨日ぎっくり腰になっちゃってさ。
お婆ちゃんも今までピンピンしてたけど、もう年だしね~」
遥「・・・」
女子生徒A「ねえ、今の遥君じゃない?」
女子生徒B「見つかったって話本当だったんだ~、てっきり性格の悪い誰かが流した
噂だと思ってた。」
女子生徒A「え?なにそれ?」
女子生徒B「知らないの!?遥君この一年行方不明だったじゃん!」
遥(あ、確かあの子・・・文化祭の時に出店の残り物くれた子・・・。
そっか。もう、先輩になっちゃったんだなあ・・・。
人と話しているとき、ニュースを見ているとき、
街を歩いているとき、
・・・誰かの話し声が聞こえてしまった時、
否が応にも感じてしまう、彼らと自分との空白の時間。
その空白はいつも僕をそこに置いていく。
みんなはどう思ってるんだろう。
でもそれを聞いてしまうのは、ひどい事のような気がして・・・
僕はやっぱり聞けないままでいる。)
貴音「・・・遥?どうしたの?
あー・・・」
女子生徒A「やば、見られた!」
女子生徒B「いこいこ!」
貴音「あんなの遥が気にすることないよ」
遥「うん・・・」
貴音「早くいこ、パン売り切れちゃう」
遥(でも彼女たちの言ってることは紛れもない現実だ、
と言おうとした口を僕は無理矢理閉じた)
(場面転換
遥と貴音が教室に戻ってきた)
貴音「ただいまー!・・・あれ?」
遥「二人とも・・・いないね?」
貴音「何かあったのかな・・・」
遥(その時、自分の心臓が嫌に跳ねたのを感じた。)
遥「教室に、行ってみない?」
貴音「え?うん・・・」
(アヤノ達の教室まで移動した)
貴音「遥、二人いる?」
遥「うーん・・・多分いないと思う・・・」
貴音「二人ともお休み?それとも・・・もしかして行き違いになっちゃったとか?」
遥「・・・ねぇ、君達。ちょっといいかな?」
男子生徒A「はい?」
男子生徒B「え?」
遥「如月さんと楯山さんって今日休み?」
貴音「ちょっ、遥・・・!!」
男子生徒A「あー・・・」
男子生徒B「如月なら今日は休みっすよ。なんか体調不良らしくて。
楯山は・・・お前知ってる?」
(SE 心臓の音)
男子生徒A「知らないけど・・・でも、四時間目いたよな?」
男子生徒B「あー・・・確かに。
すんません、楯山はちょっと分からないです。」
遥「あ、いや・・・ありがとう。」
女子生徒C「楯山さんならさっき帰りましたよ?」
貴音「え、」
遥「早退?」
女子生徒C「いや具合悪そうには見えなかったから・・・多分無断だと思います。
四時間目終わった瞬間鞄持って急いで出ていきましたよ?」
貴音「アヤノちゃんが・・・?」
遥「・・・・」
遥(なんだか、嫌な予感がする)
女子生徒C「まあ私達が知らないだけで、家の用事とかかもしれないですけど・・・」
遥(それは・・・多分ない。
アヤノちゃんにとっての家族はもう・・・幸助君達しかいない。
お婆さんとはもう決着が着いたって言ってたし。)
遥「・・・ありがとう、助かったよ」
女子生徒C「いえ~」
(貴音達が教室を出る)
男子生徒A「なあ、今のって・・・」
男子生徒B「噂の・・・楯山達と一緒で・・・」
(貴音が二人の方を振り返って睨みつける)
貴音「何?」
男子生徒A/男子生徒B「い、いえっ!なにも!」
遥「貴音。いいよ。
気にすることないってさっき言ってくれたのは貴音でしょ?」
貴音「そうだけど・・・」
遥「行こう」
貴音「遥・・・?」
(場面転換 廊下)
貴音「アヤノちゃんどうしたんだろうね・・・授業サボる子じゃないのに」
遥「・・・アヤノちゃんも色々あるんだよ」
貴音「い、色々って?」
遥「・・・ッ、
帰ってきてからお婆さんとも色々あったみたいだしさ」
(ここの遥は察せない貴音に苛立ちを覚えています)
貴音「でも昨日はそんな風には見えなかったけど・・・」
遥「それは・・・みんなの前では取り繕ってたんでしょ」
貴音「私達の前で取り繕う必要なんてないのに・・・」
遥「アヤノちゃんは・・・抱え込んじゃう子だから・・・ね。」
貴音「でも・・・っ、私達メカクシ団の同じ仲間でしょ!?
助け合うのが普通なんじゃ・・・今までだってみんなで力合わせてさ・・・」
遥「・・・ッ、
人には相手を思うからこそ、言いたくても言えない事もあるんだよ!」
貴音「!
は、遥・・・お、怒ってるの・・・?」
遥「あ・・・」
貴音「ご、ごめん・・・そうだよね。
言えないこともあるよね・・・私も実際伸太郎に自分がエネだってこと隠してたし・・・」
遥「・・・!」
遥(そうだ・・・貴音は抱え込むその辛さを誰よりも知ってる・・・
なのに僕は・・・自分の事しか、考えてなかった)
遥「最低だ・・・」
(遥が顔を手で覆って、その場に座り込む)
貴音「は、遥!?ちょっと・・・大丈夫?
ご、ごめん、私のせいだよね・・・」
遥「ううん・・・違う。今のは僕が悪い・・・ごめんね、貴音」
貴音「!・・・いいよ、別に。
こんな状況だもん、誰でもストレス溜まるって。
私も最近ああいうコソコソしてるやつらにイラつきたくないけど、
イラついちゃってさ~」
遥「・・・貴音は、優しいね」
貴音「へ?」
(遥が立ち上がる)
遥「すっごく優しいよ。」
遥(そうやって、僕の気持ちを汲んでくれるところがさ)
遥「あ・・・」
シンタロー【行かないっす。編入生ってだけで注目されてんのに、
このまま保健室に行ったらもっと注目されちまう。
そういうの面倒くさいんで】
遥「・・・そっか、貴音たちは似てるんだ」
貴音「は?え、誰と私が?」
遥「シンタロー君と、貴音がね」
貴音「は―――!?
いや今までの話の流れでなんでそうなるのか全然理解できないんだけど!」
遥「ほら、指摘するとそうやって否定するところとか」
貴音「いや否定するよ!どう見ても全然似てないでしょあいつと私!
遥絶対おかしいって!」
遥「えー?
そうかな?アヤノちゃんも前【二人は似てますよね】って言ってたよ?」
貴音「うそ!?」
遥「本当」
貴音「いーや!二人がおかしいだけ!
絶対似てない!」
遥「じゃあ今度つぼみちゃん達に聞いてみなよ」
貴音「そうする・・・。
はあ・・・似てないって・・・絶対2人が間違えてるって・・・」
遥「ねぇ、遥」
貴音「ん?」
遥「教室に戻ったら話したいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
貴音「・・・いいよ」
遥(そう、僕たちはもう独りじゃないんだ。
もう・・・あの夏はない。
だから・・・お互いに傷つけあうことも・・・
独りで抱え込む必要もない。
みんなを頼って、話して・・・それで自分はこれからどうするか、どうしたいか見つければいい。
相手を思って言わないのは・・・心配してくれる人に一番失礼なことだ。
だから・・・アヤノちゃん)
アヤノ【あれから考えたんですけど、
私、
シンタローに・・・嫌われてるんじゃないのかな・・・って
やっぱり思ってしまって・・・
それと・・・シンタローどこかおかしいです、あれからずっと。】
遥(シンタロー君。)
シンタロー【そ、そんなことあるわけねーだろ!
お前はオレの、大事な・・・友達だしな!】
君たちが何を思って、僕たちに何も言わないのかは分からないけど、
でももうこれ以上自分を隠さないで、独りで抱え込まないで。
君たちを思う人はここにいるよ)
遥「それとさ、今日帰りシンタロー君の家にお見舞いに行かない?」
貴音「い、いいけど・・・」
遥「僕の予想だけど・・・多分アヤノちゃんはシンタロー君の家に行ったんだと思うよ」
貴音「え!?そりゃあ、最近あいつ体調悪そうだったし私も心配だけど・・・でも、
授業抜け出してまで・・・」
遥「・・・僕たちの知らない何かが二人にはあったのかもね」
遥(勿論アヤノちゃんも心配だけど・・・
深刻さでいったらシンタロー君の方がまずいかもしれない。
アヤノちゃんの行動とさっき思い出した彼の言葉で確信した。
シンタロー君は何か大きいものを抱え込んでいる。
シンタロー君とアヤノちゃんの間にこれ以上何も起きないといいんだけど・・・いや、多分それは無理だろうな。
それと、あの二人も気になる)
遥「・・・」
貴音「遥?何かって?」
遥「なんでもないよ。僕の勘違いかもしれないし。
購買に急ごう」
貴音「うん・・・」
遥(彼らをちゃんと叱れるように・・・僕も貴音を頼らないと)
遥【だけど、
現実は僕たちが思うより残酷で、どうしようもないものだった。
僕たちは何も分かっていなかった。
彼の絶望も、その罪の重さも
それに僕たちが気付くのは――もう少し後の話】
遥「2.5話 Even if you want to become alone」