摂津 南山 安岡寺般若院 | ゆめの跡に

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On the ruins of dreams

①本堂②青梅観音堂・鐘楼③叶観音堂④開山堂⑤山門⑥眺望

 

訪問日:2023年5月

 

所在地:大阪府高槻市

 

 桓武天皇の異母兄である開成皇子が自ら観音像を彫り堂宇を建て、宝亀6年(775)に創建したと伝わる。同じく開成が開基と伝わる根本山神峯山寺、北山本山寺とともに北摂三山寺と呼ばれる。

 

 開成の弟子である開智が一字一石の大般若経600巻を書写して背後の岡に安置したことから安岡寺般若院と称される。般若塚には今も五輪塔が建つが、残念ながら見逃した。

 

 一字一石経とは経典を小石に1字ずつ書写したもので、大般若経は全16部600巻に及び、その文字数は漢字で4,820,693字といわれ、休まず10秒/文字書写しても1年半かかる計算だ。

 

 般若経は般若波羅蜜を説く大乗仏教仏典群の総称で、紀元前後に成立した『八千頌般若経』が最も古く基本的なものとされ、その後様々な般若経が編纂された。

 

 通称・大般若経『大般若波羅蜜多経』は、これら長短様々な般若経を集大成したもので、唐代の貞観19年(645)帰国した玄奘三蔵(602-664)が皇帝・大宗の勅命により翻訳事業を開始した。

 

 玄奘は持ち帰った膨大な経典の翻訳に余生の全てを捧げたが、それでも経典全体の約3分の1までしか進めることができなかった。その量は76部1347巻、漢字で全1100万字に及んだ。

 

 『般若心経』(270字余)や『金剛般若経』そして最も重要とされる漢字480万字の大般若経の翻訳を完成させた100日後の麟徳元年(664)玄奘は寂している。

 

 

以下、現地案内板より

 

安岡寺(浦堂本町)

 

 安岡寺は、南山と号する天台宗系の単立寺院で、如意輪観音を本尊とする。宝亀6年(775)に光仁天皇の子、開成皇子が創建したと伝えられ、本堂の背後の岡に、大般若経600巻を一石に一字書写して安置したことから、安岡寺般若院と称するようになったという。

 戦国時代には、三好氏や高山氏の兵火にあい荒廃したが、江戸時代の寛文年間(17世紀後半)に良盛が再建、大日坊など4塔頭をかぞえ、大いに栄えた。しかし明治時代の廃仏毀釈により、現在は、本堂や鐘楼堂、院号の由来となった般若塚、青梅観音堂などとなっている。

 本堂には、本尊のほか愛染明王坐像、不動明王像、地蔵菩薩像などが安置され、青梅観音堂には千手観音坐像が祀られている。この観音坐像は、青梅観音ともいわれ、真上にあった安正寺の本尊であったが、廃寺に伴って当寺に移された。檜の一木造りで漆箔がほどこされ、像高137cm、平安時代初期の作とみられ、昭和49年6月に国の重要文化財に指定されている。

 当寺で毎年2月1日に行われる大護摩供では、大峰山の行者や訪れた人々らが焼けた丸太の上を素足で歩き、無病息災や交通安全などを願う。

 

平成20年3月 高槻市教育委員会