弟である「希望」が失踪し、ゆるく探す兄「誠実」と、弟と接した人々の話。希望との思い出によって、あるいは、一緒に過ごすことで、自分が本当にやりたかったことを知り、行動を起こす一連の流れが描かれていました。

 

 希望の知人から聞く「弟がどんな人間だったのか」の返事を総合して、誠実は、弟が良い人か悪い人なのかわからない、と感じたけど、希望と一緒に失踪した女性「くみ子」は、きっちりと分ける必要はあるのか、と問うように言いました。小説のどこかの場面で、人間は、「見たいものしか見ない」と書いてありました。良い人か悪い人かを判断する必要はないし、なんなら、信じたい方を信じればいいのだと私は思います。他人軸で生きてきた兄は、きっと、自分が弟をどう思うか、という気持ちに自信が持てなかったから、他人の意見を聞き、統一感のない返事たちに戸惑ったのかもしれません。

 

 言いたいことが言えずにうじうじしてる人、毒親たち、他人を見下す人、他人のせいにしてばかりいる人、実際に近くにいればあまり関わりたくないと思える人が多く登場します。自分の中にある嫌な部分と合致する人たちが出てくるので、ドロドロした文体だったら、途中で挫折するくかもしれないけど、とてもさらっとした雰囲気の文なので、チクチクとした痛みを感じながらも、最後まで読むことができました。