8月下旬からフランスに行き、ボルドー国立高等演劇学校で3週間授業してきました。

1週間の隔離期間を経てからの授業であったため、少し早めに日本を出発したのに

直前にて自主隔離がなくなり、はじめの一週間はなんだか緊張したりぼうっとしたり、

しかし観光行くにはなんだかコロナもあり状況がよくわからなかったので、

ほぼお出かけしない部屋時間を過ごしていました。

 

↓食べ物(朝食)が用意されていた素敵なフラットでした。

 

直前まで猛烈に公演の片づけと事務作業をこなしたため、それの反動もあったかもしれません。

時差ボケで頭が回らない状態でした。

 

そんな合間の到着二日目には学校を短時間案内してくれる担任の先生や事務のスタッフ方など

いらっしゃいまして、温かさあふれる素敵な方々に恵まれました。

また生徒については、3年に1回の試験がある当学校で、応募者730人から選ばれた14人男女7人ずつがここで学んでいます。

フランスにはこういった俳優専門の学校が13校ありまして、パリにある一番有名な学校は毎年試験があり

約1500人の応募者から30人が入学します。みんな3年間学び、卒業していきます。

俳優になるにはここを通るとより近いそうで、確かにテレビで放送されてる往年の俳優特集の名前を

ネットで検索するとこの学校たちの出身者であることがたびたびありました。

 

ということで、エリートだとはじめこちらがどきどきしていましたが、実際は想像力豊かな努力家たちで

そこは私が知っている日本人の俳優たちとほとんど変わりませんでした。

あえて違いを挙げるとすれば、テキストの発表をすると、よく「それは日本だと演出家の領域だな」って思うほど

空間の使い方や自分たちが考えた演出、方向性についてよく話し合っていたところです。

全然本編の設定と違うじゃん・・・っていうメタ演劇もかなりの頻度で出てきて、何を言えばいいのか

いい意味で困った芝居もありました。

それが面白かったです。

 

↓授業はこの小さい劇場で(と言ってもまぁまぁ大きい)

イメージですが、日本の稽古場で例えば二人掛け合いの台本を稽古発表してもらうと、

空間の真ん中でテキストに書いてあることを、忠実に上手に芝居することに集中する俳優が多いのかなと感じています。

それ以外は考える領域ではなくて、あとは演出家の人どうしたらいいですか、っていうのがわりと一般的な感覚なのかなって。

 

これって実際それも意識してねと伝えれば、すごい面白いことをやってくれる俳優もいるんだろうし、

実際すでにいらっしゃると思うのですが、

そこまでのテキストへの取り組み方とかチャレンジ精神がはじめから全員に習慣化されているのは驚きました。

 

授業はフランス語の通訳さんもついてくださったので、英語となんちゃってフランス語でも困りはしませんでした。

ただなんちゃってフランス語は授業で使うと生徒に意味が間違って伝わる可能性があるので、

チャレンジ精神はぐっとこらえて、基本的には学校以外で使いました。。

そして外ではほとんど”L'addition s'il vous plaît(お会計お願いします)”しか言っていません・・・。

直前まで勉強してったのに。。

 

↓私の発音だと、「らでぃしょん しるぶぷれ~」ですね。

 

↓通訳のマルティーヌさんと最後のお疲れ様会。

ガンダムのTシャツ着てた!食べ終わったら「らでぃしょん しるぶぷれ~」。

 

そして本当は毎日ブログを書くつもりで意気込んで行ったのですが、どうも筆不精な部分もあり

また予想以上に14時15分~19時まで週5日の授業は大変で、日によっては帰りでふらふらになってしまい、

余力は一ミリも残されていませんでした。 

途中の寿司屋「武蔵」というイカついおじさんがやっている店で巻物をテイクアウトして帰るなどして、

気力を保っていた感じです。

 

授業はこんなだったとか、色々話したいことはあるのですが、長くなってしまうのでまとめてしまうと、

自分が学生時代習ったことや山の手事情社、青年団、世田谷シルク、日本舞踊や古典について、

経験したこと、考えてきたことが、すべてここの授業のためにあったのかなっていうくらい、全部がきれいに出せました。

そして生徒ともとても良い関係が築けました。このあたりは満足です。

 

↓最後の発表会の舞台。みんな芝居を確認中。

 

一点どうしても知らせたい出来事があったので、ここに書いておきます。

3週間、とあるテキストを練習していたんですが、

成績のよい上位3人に発表会当日に幕間に30秒程度、ひとりずつ上演してもらおうと、授業最後の日、内輪の発表をしたんです。

それで採点をつけて、当日発表する上位3人の名前を読み上げました。

そしたらその瞬間彼らがざわつきだしました。

なぜかというと、”男性のみ”だったからです。

今フランスは女性と男性の平等を考える姿勢が日常化していて、

30秒であれ、たまたま成績上位者であれ、男性のみが発表するということは観客から疑問を持たれる可能性があるそうです。

そこで、「僕は女性と代わるよ」と自主的に辞退する人もいまして、

最終的には発表会2日間で上位女性3人と男性3人をミックスして3人ずつ発表することにしました。

 

↓学校の図書室

 

実際私も、日本の催し物で男性の演出家や振付家しか名前がのっていないフェスやイベントのチラシは何度も

見たことがあるし、そういう時は「男性しかいないね」と口に出すようにしています。

だからその意識は持っていたはずなのに、発表会の直前にそこに頭が回らなかったことについて反省しました。

上位者ではなくて、当日発表する男女を考慮して伝えればよかったからです。

ただ男性のみだったから、降板してまでも女性も組み入れようという考え方が正しいかどうかは、

正直いいのかは分かりません。

多分そこにいる女性陣たちも、べつに上位者に名前が上がらないなら発表したいとは思っていなかったのではないでしょうか。

これを読んでいる人の中には、そこまで男女比を気にする必要あるのかとか、

反対に実力主義になっていないと不快に感じる方もいると思います。

ですが彼らが一瞬で”男性のみだ”と気づいた視点は重要です。

またその感覚を、運営面に携わることのすくない俳優が持っていることにカルチャーショックを受けました。

その視点は本当に見習いたいですね。

 

↓蚤の市

 

今回の1か月間の滞在で、日本からの演劇紹介には女性作品がほとんどないということを、2度も言われる機会がありました。

ひとつに海外で紹介するときには、選ぶ人もK賞受賞者などでないと自信をもって勧められないのかなと思います。

そんな賞受賞者も男性が多いので結果そうなってしまうのだろうと推察していますが、

賞ってないとだめなんでしょうかね・・・。

 

賞については蛇足ですが、日本でイベントを手掛ける人たちには、男女比の均等化は意識をもってほしいものです。

長年感じていましたが、きっかけがあったので初めて文章化しました。

 

↓ボルドー駅前

 

そんなこんなで無事授業は終了。

パリと羽田空港でPCRを受けて無事陰性で帰宅しました。

コロナ禍で思っていたよりストレスも感じたし、ここに収まりきらないくらい

考えさせられること、楽しいこと、妙につらかったこと、色々ありましたが

いい経験になりました。関係者の方々、本当にありがとうございました。