男性医師が育休を取る事は、とても困難です。
私は地方国立大の附属病院の勤務医ですが、育休を5カ月取得しました。
妻が臨月の時に週一勤務にしたのと合わせると、実質半年間仕事を休みました。
入局したての医師は非常勤扱い(時給です)で、私の病院のルールでは勤続年数が1年を超えると最長で1年間(子供が1歳になる前日まで)育休を取れます。
私は入局したてでしたが、研修医も同じ病院でしていたので勤続扱いとなり、育休を取れました。
男性医師が育休を取る事が困難な理由は制度の問題だけではありません。
むしろ大きな理由が別にあります。
それは、職場の雰囲気です。
私の知っている限り、半年も育休を取った人(男性医師)は私の病院にはいません。
さすがにこのご時世に育児参加を直接批判する人はいません。
ですが、普段の勤務の時ですら、「もう帰るの?」「いつ勉強するの?」「奥さんは?家にいないの?子供の面倒見てくれないの?」などなど、こういった声掛けはほぼ毎日であり、悪意は微塵も無いと思いますが、それだけに、いかに自分のやっている事が職場の常識だったり価値観から外れているかを思い知らされます。
ちなみに、もちろん定時を過ぎ、昼飯も食うか食わずで必死に業務をこなし(朝は当然の様に始業の1時間以上前から働き)、専業主婦ですが地縁血縁のない地方で1人家事と育児をこなしてパンク寸前の妻を助けるために家に帰ろうとしている私に対して向けられている言葉です。
確かに、医師は6年間大学で勉強し、医師国家試験に合格していますが、実際の現場ではど素人からスタートして、働きながら業務を身につけていく事になります。
よって、遅くまで残って練習したり勉強したり、そもそも内科であればカンファレンスの開始時間が終業時間よりも遅かったり、外科系であれば手術が終業時間を過ぎたりなど、当たり前の世界なのです。
でもその結果、女医さんは婚期を逃し、男性医師は育児参加の時期を逸して子供から無視される…、それが標準コースとなってしまっています。
もちろん結婚や子育てが人生の全てだとは言いません。
しかし、望んでもそれが手に入らなかったり両立できない職場というのは、どんな職種であったとしても、もっと深刻に考えるべき問題だと思います。
そして、あってはならない悲劇が起きてしまうのです…