今回の話はクニマスです

本当に大好きな話で、

4月の最後を飾る題材として、

とっておきの、クニマスです

 

私の最初に学生として属した大学には、

後に別の場所に展示含みで移管されましたが、

研究室の隣に、

入室するとホルマリン(毒物ホルムアルデヒド)の刺激臭で、

目まで痛くなるほどだった、

標本保管室がありました

 

研究室でも先代教授には、

薬品漬けの標本を手袋越しで触る人には、

激怒した、という逸話があった場所

私もホルマリンで常に手が真っ白にささくれ立っていた、

荒っぽい時代の話です

(今は絶対にない、はずです)

 

その標本室に、

当時からも半世紀前に採集された、

田沢湖のクニマスの標本がありました

経緯は忘れましたが、

何かのマスコミの依頼のため、

標本の写真を撮った時に、

手伝った記憶があります 

 

化石や剥製は別として、

本当の絶滅種の残された標本を初めて見る機会で、

厳粛な思いになったことを覚えています

それが、生きていたのです

 

おそらくベニザケ(サケ目サケ科サケ属,陸封型はヒメマス)の亜種として、

秋田県田沢湖という、

日本でも最も深い湖で生残り、

独自の進化を遂げた魚で、

琵琶湖のビワマスと並ぶ、

淡水湖を降海先と同じように利用する、

珍しいサケ科魚類なのです

 

それが1940年の行政の強引な強酸性温泉水導入で、

絶滅、

したのです

 

ただその前クニマスは、

有望な経済価値のある魚種として、

幾つかの湖(これは未確認情報)に、

種苗が放流されていたのです

その1つが、富士5湖の西湖でした

 

放流記録は残っていたのですが、

長年、変なヒメマスorヤマメがいるとの話はあれど、

水産試験場等のプロの人含め、

誰も分りませんでした

 

しかし、あのさかなクンは、

2010年に、

イラストを依頼した魚類学者も気づかないほどの、

微妙かつ決定的な差異を見つけ、

クニマスの西湖での生存を指摘し、

ほぼ日本産脊椎動物固有種では初めて、

絶滅種の生存(学問的には復活)を発見したのです

 

残念ながらまだ今は、                             

西湖のクニマスは細々と命を繋いでいる状況で、

養殖等、私たちの日常に関わるまでの話はありません

しかし、生残っている以上、

その遺伝的特性は、

私たちと共にある、

豊かな未来につながるはずです

 

さかなクンは、

それほどの業績を残した、

私の尊敬してやまない人です(2023.4)