夜中、ふと目が覚めた。
時計を見るほどでもない時間だと、セイは感覚で分かる。
(……あれ、少し寝てたみたいだ)
いつもなら、横になっても意識だけが冴えたままなのに、ログアウトできない不安が頭の奥に居座って、眠ろうとしても眠れない夜が続いていたはずなのに、今日はほんのわずかとはいえ、ちゃんと眠れていた。
それに気づいた瞬間、胸の奥が少しだけ緩む。
布団の中で静かに息を整えると、すぐ近くに小さな気配を感じた。
ルカだ。
規則正しい、小さな寝息。
そこにいるだけで分かる存在感。
それから、もう1つ。
部屋の奥――扉の向こうに、彼女がいる。
音がするわけじゃない。
ただ、「いる」と分かる。
同じ家の中、同じ時間に、同じ空間を共有しているという感覚。
セイはそっと視線を向け、暗がりの中でセツナの部屋の方向を見つめた。
(……あそこに、セツナさんがいる)
そう思っただけで、胸のあたりが温かくなる。
安心する感覚と同時に、なぜか少しだけ鼓動が速くなるのも分かる。
彼女の気配を、はっきりと意識してしまう自分がいる。
でも、不快じゃない。
それどころか――
(同じ空間に、人の気配があるというのは……こんなに、あったかいんだな)
孤独だった時間には、知らなかった感覚だった。
誰かが「いる」こと。
それを当たり前のように感じられること。
セイはもう1度、静かに息を吸って、布団の中で身を落ち着ける。
ルカの寝息と、セツナの気配に包まれながら、そっと目を閉じた。
(……もう少し、休めそうだ)
そう思えたこと自体が、今のセイにとっては小さな奇跡だった。
(第154話に続く)