五味には陽の味と陰の味があります。
陽の味は気を陽化して外に伸びていかせます。
陰の味は気を修練させて内へ内へと導きます。
辛・塩辛・甘い味は陽の気を持つ味であり、酸と苦は、陰の性質を持つ味です。
陽化の性質が最も際立っているのは辛味です。
とても辛い唐辛子を一口齧ると、人間は自ずと口が開き、舌を出して、はーは─と息を外に吐き出します。
このとき同時に、一瞬にして血圧が上がり、心臓の拍動数は早まり、顔は赤くなって額に汗が吹き出しますね。
これらの現象は、辛味が人体の気をいっきに陽化させるためです。
その利点として、代謝が高まり気血の循環が促進され、滞っていた気運をすっきりと貫通させることがあります。
曇りの日には湿度が人体の中へと入り込みますので、ご年輩の方々などは関節炎や神経痛が誘発されますし、お若い方でもからだが重く、気分も低下します。
こんなとき、汗をかきながら辛いものを食べると、気が通じ湿気が去っていき、気分まで高揚してきます。
一方、細胞はエネルギー源として脂肪とブドウ糖を必要とします。
特に脳細胞は、唯一ブドウ糖を供給されたときだけ働きます。
甘いものはこのブドウ糖をたくさん保有していますね。
それでチョコレートやキャンディーを食べると、瞬間的に脳細胞がブドウ糖を吸収し、頭脳が冴えて、回転も早くなるように感じるのです。
塩辛い味に入っているナトリウム成分も、細胞の活性度を高めてくれますので、摂取するとやはり体全体の爽快感を感じる結果につながります。
これら三つの反応は、すべて気の陽化に該当するものです。
メリットだけに注目してきましたが、気は発散(陽化)されるばかりでは困ります。
適切な収斂(陰化)が共存しなければなりません。
加速ペダルだけあって、ブレーキがない車を想像してみてください。
加速ペダルの性質を持つ辛味、塩辛味、甘味に対して、ブレーキの役割を果たすのが酸味と苦みです。
レモンを齧ってみてください。
その前に、レモン汁を舌の先に少し落として見たところを想像してみてください。
口のなかには唾が沸きだし、口も体もすぼまり、目はギュッと閉じられ、表情がゆがみます。
先ほど例に上げた、辛いものを食べたときの反応─口が開き、舌を出し、目が見開かれた表情とは正反対です。
にが~い煎じ薬を口に含んだ子供の表情も、すっぱいレモンのときの表情と大差がありません。
このように酸味と苦みは、気を収斂(陰化)する働きをします。
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人間の肉体は、この世界のすべての現象と同じく、本質的に陽化の過程を踏みます。
歳をとるごとに人体の水分、骨髄、筋肉などの陰気は少しずつ減少します。
霊魂が肉身と分離することを死と考えたとき、私たちが死を迎えるのは、老いて萎縮するだけ萎縮した肉体が、霊魂という陽気をこれ以上引き留めておけないときだと考えることができます。
私が学生時代に興味深く観賞した映画に『パピヨン』があります。
映画の中で主人公のパピヨンは、老人になるまで脱獄を繰り返します。
霊魂は本質的に時空間を超越して、限りない自由を追い求める陽の気を持っています。
肉体はその反対で、物理的時空間に縛られた、陰気の性質を持ちます。
霊魂が脱獄者であるとしたら、肉体は監獄でしょう。
この世で生き続けるためには、肉体は絶体的自由を追い求める霊魂を引き留めておかなくてはなりません。
霊魂の脱獄意志を抑制するために、肉体はオトリを見せ付けます。
その餌とは、「欲」です。
食欲、財欲、名誉欲、睡眠欲求、性欲などは、肉体を離れようとする霊魂の勢いを止めるための、格好のオトリです。
もし陰陽が均衡を保っていたら、欲というオトリは必ずしも必要ないでしょう。
肉体(陰の気運)が弱まって、霊魂(陽の気運)が手に終えなくなったときに、力関係の不足分を補おうとして動員させるのが、「欲」というわけです。
欲という手段以外で、陰陽の不調和状態を少しでも緩和させるためには、食べ物を取り入れるときに、陽の気運ばかりを好むのではなく、陰の気運をそれと同等以上に摂取することが重要です。
陰陽の不均衡が老化によって避けられない、原初的なものであることはしかたのないことですが、有害電磁波、大気汚染、化学添加物など、人体を陽化する"陽的気運"が一層パワ─を強めている現代において、陰の気運に該当する酸味と苦みを積極的に摂取することは、いってみれば生存の条件にも匹敵するのではないでしょうか?
椿漢方はソウルにある韓方クリニックです。
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