この金曜日(昨日)、私は台北にいて、A級順位戦最終日を観戦するにはよろしいとは言い難い環境であった。それでもWIFIを頼りに時々はアクセスをしていて、その時に感じたこと等を述べてみたい。

 

 この日については、最大6人のプレイオフ、さらに8期連続A級在籍、複数永世称号保持者の渡辺に陥落の可能性が単純計算で25%生じていることはファンなら誰でも分かっていた。一番つまらない結果としては、久保か豊島の単独挑戦、陥落は行方、三浦が追加というものであるが、豊島の最近の調子のブレを見ると豊島単独挑戦はなさそう。久保-深浦は五分五分だろうが、久保が勝つと、前述のように最もつまらない。(その瞬間渡辺も助かるわけである) そして、将棋の神は、一昨年のスマホ冤罪への救済を藤井ブーム、羽生国民栄誉賞授与に加えて考えておられた。よもやの6者プレイオフ、三浦の快勝である。

 

 実況フォローは5局等しくしていたつもりだが、進行速度の差から注目度合いは時々刻々と異なっていた。

 

 案の定というべきか豊島の劣勢が真っ先に探知された。歩切れで歩のない8筋の歩を広瀬に伸ばされると、グズグズできなくなり、無理やりの仕掛けから大きな駒損→いいところなく押し切られる。午後2時くらいには相当に形勢が悪くなっていたように感じた記憶がある。6-2からの連敗、その内の1敗は即詰み逃しで、パラマスの最下位から5連勝が必要になった豊島。これはトーナメント戦では2次予選決勝から戦え、というのと同じであり、流れが悪すぎる。まぁ普通にいえばホープレスでしょう。

 

 続いて久保-深浦であるが、深浦が相当に地力の出そうな形で、その時点の控室がいう程後手が悪いとは私には思えず(期待込みかもしれないが)、まだまだと思っていた。この将棋のことは後日触れます。

 

 佐藤-屋敷は佐藤の銀桂交換を甘受する手順が素晴らしく(その前の屋敷の1筋突き捨てがどうであったのだろう?)、すっかり佐藤ペース。連盟会長の重圧の中、よくこの一年戦っていただけたものと思う。決め方もド派手で相変わらずの強さであった。

 

 稲葉―行方は行方が大模様を張っていたが、このクラスの将棋でこういう指し方がいい結果をもたらすことは少ない。というか見た記憶がない。稲葉快勝を予感したが、案の定であった。2-4から名人戦挑戦をすれば将棋の歴史に残るが、パラマスプレイオフでは絶対の優位、かつ対羽生戦でも特に臆することのない稲葉は今や挑戦の最有力候補であろう。

 

 さて、肝心の三浦―渡辺だが、最初にアクセスした時は1図だった。

 

 

 「機会があれば穴熊、が常道だったのは3-4年前のことだろう・・今ではソフトのおかげでバランスの悪さを突く指し方も十分浸透しているのに、変わらんな・・・渡辺は」というのが僭越ながら私の第一印象。この辺の発想転換の遅さがこの一年の不調の背景にあるのではないか? 数時間後アクセスすると2図になっていた。先手の全面的な攻勢を予感させる。そして飛車を7筋に移動させられた後手には反撃手段が全くない。

 

 

 三浦は角で金を奪う。この局面では当然とはいえ、ソフトの好きな指し方でもある。十分にソフトの指し方、発想を取り入れているように思える・・・ゆえに3か月近い出場停止を故なく強いられても復帰後一定以上の成績を上げられているのではないか・・・専門家によるインタビューをお願いしたいところだ。そして、玉頭から斬り込んでいく。

 

 角の睨みが邪魔だとの判断の下=妥当=金で角を奪ってからの▲4四角を見舞い、優勢を不動のものとした。

 

 昨日の結果を見て感激した知人がメールをくれたものである。「良く、勝ってくれて、本当に嬉しかったよ! まさに宿敵に敵討ちをしたようなものだよね!」

 

 当ブログはスマホ冤罪の経緯について、ガバナンス、意思決定過程のいずれの点からも瑕疵が多すぎたことから厳しいスタンスをとってきた。将棋界がeuphoriaに湧く昨今、いつまでもこの件に拘るもの空気を読まない振る舞いかもしれないが、そこはご容赦いただきたい。そもそも盤上の結果とあの件の行方は別物であるべきではあるが、ここでも将棋の神様がファンのストレス、何よりも三浦が受けた傷を回復させる機会をこの一戦にもたらしたのではないか、という感覚を持ってしまうのは変だろうか。その機会を見事にものにしてA級維持を果たした三浦も大した棋士であった。手数、時間はかかったものの、全く隙のない攻勢、余裕を持った受けは模範となるべきものであった。来期の一層の健闘を期待しているファンは多いはずである。

 

 早くも明日にはプレイオフが始まる。棋王戦が吹っ飛んでしまうような気がするが、仕方がない。関心の赴くままエントリーを書いていきたい。