竜王戦第4局はこのシリーズの中でも激戦になったが、森内名人が制し、3勝目。竜王復帰が濃厚。

 タイトル戦実況の際、私は普段は解説を読まない。自分で考えてから反芻するほうが楽しいので。しかし2日目はなんと羽生三冠がニコニコ解説者であるという。実況欄にも彼の見解が適宜表示される。こうなると話は別で初日の田中九段の解説は一文字も読まなかったが、この日は丁寧にトレースしながらの観戦である。(※田中九段の解説がおかしい、という意味ではありませんので、念のため。再読すると実にポイントをついた解説でした。)

 将棋は相矢倉4六銀戦法から竜王の作戦で▲6五歩省略の▲2五桂跳ねの旧型へ。これ、先手が指し良いとは思えないけれど? 定跡通りに局面は進んだところで森内名人が少数派の対応を採用。

 先手有利の雰囲気が濃かった控え室の空気も読まずに、「後手が指しやすい。馬の力が強いから」と言い切る羽生三冠。いいわぁ。強ければ何でも通る。健気にも山崎八段が「私はそう思いません」と逆らうが、局面は羽生三冠の見解に沿う形で進んでいく。B1とタイトル複数冠の超実力者の差は大きい。

せんすぶろぐ

 後手指しよしか、羽生さんもそう言っているし、というところであったが、自玉が堅い時の竜王はさすがに強みをみせる。まず▲5五銀の強硬手段で後手の馬に働きいまいちだった自分の角をぶつけ、難局を打開。もう盤面の左側を攻めている余裕などない。さらに1一の香車にも目もくれず、3筋を連続攻撃。すっかり食いついてしまった。

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 谷川九段も入っている控え室は先手盛り返した、というニュアンスで評価していて、私も自分が指しているなら「よくここまで持ってきた」と強気になるところなのだが、改めてみてみると4八飛車が活性化する目処がないし、持ち駒が潤沢とはいえないし、でこのレベルの対戦だと、やはり後手持ちが普通なのではないか?と思い直していた。

 ここからの森内名人の応接が、観戦時点では妥当とは私には思えなかったのだが。。。▲3五歩は△同金しかなかったのではないか。△4四金で拠点を残させ、角金交換から▲3四金と張り付かれてはもう指し切りにはもっていけない。△5三馬と逆王手含みに頑張る方がいいと思うのだが(羽生さんも同意見)、手番を取れるわけでも自玉が堅くなるわけでもない△5三金の発想は何なのか? 理解を超えた応酬であった。しかし、多分△5三金は絶妙手だったのだろう。4四に金がきたため、後手玉の上部脱出時の安定度が格段に上昇したからである。私の能力だとこの手の含意を理解しきれないので、観戦記や将棋世界の解説を待ちたい。

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 この後、飛車金交換から▲6一飛が痛打にみえたが、▲1一飛成まで実際にいってみると、盤面左側には先手の戦力が皆無で、いわゆる一方追いになってしまっている。私の目にも後手の言い分が通ったことがわかってきた。

 矢倉4局やって3-1というのは、もう総合力で差があると解釈されても仕方がないだろう。角換わりや横歩取りのような新手一発で持っていったという展開でもなかった。次局はさすがに矢倉にしないのではないか(後手番となる竜王の2手目は△3四歩ではないか)と思う。