7.シンポジウム開催

 

 そうした信頼関係の中で準備を進めることができ、無事にシンポジウムを開催することができました。双方の規制当局からのプレゼンはもちろんのこと、インドでのビジネスを必死に広げようとしている日系企業の方にも登壇していただきPRしていただきました。

 

 シンポジウムの最後に、あいさつする機会をいただきました。このシンポジウムは、帰国を控えた自分のインドでの卒業制作みたいなものでもありました。あいさつでは、自分の3年間の経験も交えながら以下のようなことを話しました。

 

 日本とインドは、お互いに強みが違うので協力の可能性が大いにある。一見コミュニケーションや仕事の仕方、文化の違いがあり、一緒に仕事をするのが難しいように思えるかもしれない。しかし、信頼関係ができれば、協力してこれだけのことを一緒にできる。表現は少し違うがインド人も日本人も相手を慮る優しい気持ちを持っている。自信を持って言えるが、少なくとも友達になるための障壁は何もない。それが、ここでの自分が3年間で学んだ一番大きなこと。ぜひ、日本の関係者にはもっとインドに足を運んでほしいし、インドの人にはもっと頻繁に日本に行ってほしい。

 

 私のあいさつの後、予定外にCDSCOのトップの方が檀上に向かい、マイクをとりました。「センショーがいなかったら、このように協力は進んでいなかったし、今日のシンポジウムも開催できなかった。皆さん、彼に大きな拍手を!」

 

 人生で初めて、スタンディングオベーションというものを経験しました。自分のあいさつの最中は我慢していたのですが、多くの方に参加していただき、多少なりとも喜んでもらえたのかなと感じ、感極まるものがありました。

 

 

(シンポジウム閉会式でのあいさつ)

(人生初のスタンディングオベーション)

 

 

8.現地日系企業とインド当局の関係強化

 

 シンポジウムの後、インドでは新しい医療機器の規制の案がそろそろ発表されるという動きがある一方で、日系企業の中に本社を含めて、「インドの新しい規制の情報がとれずに困っている。」との声があることを聞きました。新しい規制ができれば、それまでのビジネスのプロセスを変えなければいけないので企業にとっては大きな問題です。

 

インドの当局にお願いして、現地日系企業のための説明会を開いていただきました。情報を直接受け取れる機会でもありますし、インド当局との関係づくりにも活用していただきました。また、インドの当局も意見があればどんどん寄せてほしいと言ってくれました。

 

実は、インドでは、このようにルールを作る前に広く意見を聴いて様々な可能性を考えるということは、あまりありません。全くないわけではありませんが日本に比べると大分思い切ったことをします。医療関係に限りませんが、「とりあえずルールを変えてみよう、問題が出たらまた直せばよい」みたいな感じで、いきなりルールが変わることがよくあります。当然、日系企業もこういうことに直面します。昨日まで輸入販売できていた製品が急に基準を満たさなくなってしまい、(製品に問題がないと思われても)輸入販売できなくなることがあります。

 

こうした声を、企業も一生懸命当局に届けようとしますが、中々権限のあるトップに会えなかったり、そもそも企業からだとアポが入りにくかったりします。そういう時に、私に相談をしてくれる企業の方もいらっしゃいました。

 

そういう時は、別件もある時などに私から先方のトップにアポを入れて、企業の方も同席していただき、一緒に解決策を考えたりします。実際に、私が帰国してから「あの時の問題は、おかげさまで解決しました。」と連絡をいただくこともあり、大変うれしい瞬間です。