192.彼の身勝手 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

192.彼の身勝手

1時間も経っていないだろうか、少しして彼はしまったというような顔をして起き上がった。
「ごめん、寝るつもりはなかってん」
「大丈夫だよ、疲れてんやろ」
そのあと彼は何度も何度も謝っていたけれど、まだまだ寝たりなさそうで眠そうだった。
彼はテレビをベッドの方に向けると、テレビを見ながらベッドに横になった。
「せのりもこっちおいで」
そう言われ私は彼に寄りそう。
すると彼は私の胸を触り始め、「エッチしよっか」っと感じる私を確かめながら言う。
こくっと頷くと、彼は激しく愛撫する。
彼の指がいつもより激しく私の膣を刺激する。
・・・ぁっ・・・ぅっ・・・ぁん・・・
私が絶頂に達しようかという時、ピタリと彼の動きが止まった。
息を荒立てながら覆いかぶさる彼の顔を見ると、彼は私の膣に指を入れたまま眠ってしまって居るようだった。
その姿を見て一気に冷める。
体が冷めるのも早かった。
彼の指を自分で抜こうかと思ったら、膣は締まりきっていて妙な違和感を感じる。
一人エッチってこんな感覚なのだろうかなんて考えた。
虚しく思えた。
何がいつも同じ方向じゃないと眠れないだ!と彼を見て思った。
どんな状況だって寝れるんじゃん。
私は、彼にそっと布団を掛けて彼に背を向け眠った。


眠りについてどれくらいたったか判らないが、揺り動かされる感覚に目を覚ます。
そっと目を開けると、目の前には彼ののどがあった。
どうやら背を向けて眠っている私に気付き、引き寄せたらしい。
私は彼に抱きしめられていた。
そして、彼はまた私のおでこにキスをしたまま眠ってしまったようだ。
私はそんな彼の腕をはらいのけ、また彼に背を向けて眠った。
その後私は何度も彼に起こされた。
私が起きると、いずれも彼は眠っていたのだけれど。


何度目かの目覚めは最低なものだった。
息苦しい目覚めだった。
「うぅ~ん」
と目を開けると、私の足元に彼の顔がみる。
激しく揺れる体に刺激が走る。
既に私の息は荒い。
「ちょっ!何やってんのよ」
「ほんと、せのりって朝弱いよな。こんなに感じながらも寝てるんやもん。寝ながらすごい感じてたで」
「ぅっ・・・馬鹿じゃないの、人が寝る間に・・・ぅんっ」
彼は寝ている私を相手にセックスを始めていた。
「なぁ、怒ってる?」
「・・・ぅっ、何が?」
「昨日せのり、一人で寝てたから」
「・・・怒って・・・ない」
「ごめんな」
「・・・はぁっん・・・っ疲れてたんでしょ・・・ぅんっ」
「俺、いつ寝た?」
「指突っ込みながら・・・」
「そか・・・ごめん、ホントごめん」
「・・・ぁあん・・・あっう・・・」
「せのり、イク」
彼は謝りながらイッた。
本当に、本当に、虚しかった、彼を感じている自分。


彼がシャワーを浴びてる間に帰り支度を済ませる。
ソファーに座りボーっと昨日の夜から今朝の事を考える。
「せのり?」
シャワーから出てきた彼が私の頬にそっと手をあて不安げに名を呼ぶ。
「何?」
「・・・泣いてる?」
「泣いてない」
確かに私は泣いていなかった。
正確には「俺、傷つけた?」と彼は言いたいのだろ。
私が傷ついていたかなんてことは良く判らない。
ただ、泣いていないのでそう答えた。
泣いていたのかもしれないけれど。



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